個人再生で家を残せる?住宅ローンを払いながら借金を減額する7つのメリット

個人再生で家を残せるか?
執筆:大泉 聡(弁護士・司法書士に取材)

個人再生の最大のメリットは、住宅ローンを払い続けて自宅を残したまま、住宅ローン以外の借金を法律の基準で大きく減額できることです。自己破産と違って資格や職業の制限がなく、ギャンブルや浪費が原因の借金でも手続きを使えます。

日本弁護士連合会が2022年6〜11月に申し立てられた個人再生の記録773件を調べた調査では、41.05%が住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を使っていました(日本弁護士連合会|2023年破産事件及び個人再生事件記録調査)。

債務整理相談ナビが自己破産の経験者100人に行った調査(2026年5月)では、25.0%が「不動産(持ち家)を手放した」と答えています(自己破産で「失ったもの」の実態調査)。

個人再生の仕組み・条件・流れは個人再生とは?仕組み・条件・流れをわかりやすく解説にまとめています。

目次

個人再生のメリットは何?7つを一覧で確認

個人再生のメリットは、家を残せること、借金の元本が減額されること、資格制限がないことなど7つです。自己破産・任意整理と比べたときの違いは次のとおりです。

メリット内容根拠
①家を残せる住宅ローン特則で、住宅ローンを払い続けながら自宅を手元に置ける民事再生法196条・198条
②借金の元本が減額される住宅ローン以外の借金を、法律の最低弁済額まで減額できる民事再生法231条2項
③資格制限がない自己破産のような職業・資格の欠格事由がない警備業法などの欠格事由は「破産者」が対象
④仕事を続けながら手続きできる働いて得る収入から返済を続ける手続きで、手続き中も同じ仕事を続けられる民事再生法221条1項
⑤借金の原因を問われない自己破産の「免責不許可事由」にあたる仕組みがない破産法252条1項4号との比較
⑥督促・差し押さえが止まる受任通知で直接の督促が止まり、開始決定で強制執行が中止される貸金業法21条1項9号、民事再生法39条1項
⑦返済中の事情変更に救済がある計画の延長(最長2年)やハードシップ免責の制度がある民事再生法234条・235条

民事再生法の条文はe-Gov法令検索|民事再生法で確認できます。

自分の借金額と収入で個人再生が候補になるかは、7つの質問に答える債務整理の診断ツールで目安を確認できます。

個人再生で家は残せる?住宅ローン特則の仕組み

個人再生で家は残せます。再生計画に住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を入れると、住宅ローンは減額の対象から外れて従来どおり支払いを続け、住宅ローン以外の借金だけが減額されます。

個人再生の利用者のうち住宅ローン特則を使った人の割合は、日本弁護士連合会の調査(2022年6〜11月申立ての記録773件)で41.05%でした。前回の2020年調査の37.99%から増えています(日本弁護士連合会|2023年破産事件及び個人再生事件記録調査)。

個人再生の利用件数そのものも増えており、2025年(令和7年)に全国の地方裁判所が受け付けた個人再生は1万1,415件(小規模個人再生1万753件、給与所得者等再生662件)で、2024年の1万524件を上回りました(最高裁判所|令和7年司法統計年報 民事・行政編 第4表・第1-2表)。

住宅ローンを抱えたまま個人再生をした方の実例は、家を手放さずに再スタートできた40代会社員の体験談と借金2000万円から家を守った50代男性の体験談で紹介しています。

住宅ローン特則を使える条件は?

住宅ローン特則を使えるのは、自分が所有して住んでいる家の購入・建築などのためのローンで、その家に住宅ローンの抵当権がついている場合です。民事再生法が定める主な条件は次のとおりです。

消費者金融などの借入のために自宅に抵当権を設定している場合は特則を使えないため、申立て前に登記の内容を弁護士に確認してもらってください。

自己破産を選ぶと家はどうなる?

自己破産では、持ち家は原則として処分の対象になり、住宅ローンが残っていれば抵当権によって売却されます。債務整理相談ナビの調査(2026年5月20〜22日、自己破産の経験者100人)では、手続きで手放した財産として「不動産(持ち家)」を挙げた人が25.0%でした(自己破産で「失ったもの」の実態調査)。

自己破産で手元に残せる財産の範囲は自己破産で残せる財産・取られる財産、手続きごとの住宅ローンの扱いは債務整理をしたら住宅ローンはどうなる?で解説しています。

個人再生で借金はいくらまで減額される?

個人再生では、住宅ローンなどを除いた借金の総額に応じて、法律が定める最低弁済額まで返済額が減額されます。小規模個人再生の基準は次のとおりです(e-Gov法令検索|民事再生法231条2項3号・4号)。

借金の総額(住宅ローン等を除く)返済額の最低基準
100万円未満全額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1,500万円以下総額の5分の1
1,500万円超3,000万円以下300万円
3,000万円超5,000万円以下総額の10分の1

借金の総額が5,000万円(住宅ローンなどを除く)を超えると小規模個人再生は使えません(e-Gov法令検索|民事再生法221条1項)。

たとえば住宅ローン以外の借金が500万円なら、最低弁済額は100万円です。返済期間は原則3年、特別な事情があれば最長5年で(e-Gov法令検索|民事再生法229条2項)、100万円を3年で返すと月あたり約2万8,000円になります。住宅ローンの支払いは、この金額とは別に続きます。

ただし、持っている財産を処分したと仮定した金額(清算価値)が最低弁済額より大きい場合は、清算価値以上を返す計画にする必要があります。債権者が自己破産の場合より不利になる計画は、「再生債権者の一般の利益に反する」として認可されないためです(e-Gov法令検索|民事再生法174条2項4号、231条1項)。

自分の借金額でどの程度減額されるかの目安は、債務整理の診断ツールで確認できます。

任意整理ではなく個人再生を選ぶメリットは?

任意整理と比べた個人再生のメリットは、借金の元本そのものが減額されることと、裁判所の手続きなので一部の債権者が反対しても計画が認められる場合があることです。

任意整理は、将来の利息をカットして分割回数を調整する交渉で、元本は原則として全額を返します。借金が大きいと、元本を全額返す任意整理では毎月の返済額が収入に見合わない場合があります。任意整理の仕組みは任意整理とは?メリット・デメリットと流れ・期間・費用の目安で解説しています。

小規模個人再生では、再生計画案に反対した債権者が、人数で全体の半数に満たず、かつ債権額で2分の1を超えなければ、計画案は可決されたものとみなされます(e-Gov法令検索|民事再生法230条6項)。債権者1社ずつの同意を集める必要はありません。小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは小規模個人再生と給与所得者再生の違いとは?にまとめています。

個人再生なら仕事や資格は続けられる?

個人再生には、自己破産のような資格・職業の制限がありません。手続き中も手続き後も、同じ仕事を続けられます。

自己破産では、破産手続開始の決定を受けて復権を得るまでの間、法律で就けない職業があります。たとえば警備業法は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を警備員になれない者としています(e-Gov法令検索|警備業法3条1号・14条1項)。警備業法の欠格事由は破産手続開始の決定を受けた人が対象で、個人再生をした人は含まれていません。

自己破産の資格制限や生活への影響は自己破産とは?借金がゼロになる仕組み・デメリット・流れにまとめています。

ギャンブルや浪費の借金でも個人再生はできる?

ギャンブルや浪費が原因の借金でも、個人再生は利用できます。個人再生には、自己破産の「免責不許可事由」にあたる仕組みがないためです。

自己破産では、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」が免責不許可事由とされています(e-Gov法令検索|破産法252条1項4号)。裁判所の裁量で免責が認められることもありますが(同条2項)、原因が問われる点は個人再生との大きな違いです。

個人再生で必要なのは、借金の原因ではなく、将来にわたって継続的または反復して収入を得る見込みがあることです(e-Gov法令検索|民事再生法221条1項)。収入が安定していない場合の注意点は個人再生ができないケースとは?で解説しています。

個人再生をすると督促や差し押さえは止まる?

個人再生を弁護士・司法書士に依頼すると、消費者金融やクレジット会社などの貸金業者からの直接の督促は止まり、裁判所が再生手続開始を決定すると給与差し押さえなどの強制執行も中止されます。

貸金業者は、弁護士などから受任の通知を受けた後、正当な理由なく電話・訪問などで本人に直接返済を求めることが禁止されています(e-Gov法令検索|貸金業法21条1項9号)。銀行のカードローンなど貸金業者以外の債権者については、受任通知後の対応を依頼先の弁護士に確認してください。

再生手続開始の決定があると、再生債権にもとづく強制執行は新たに申し立てられなくなり、すでに行われている強制執行は中止されます(e-Gov法令検索|民事再生法39条1項)。

返済中に収入が減ったら個人再生はどうなる?

再生計画の認可後にやむを得ない事情で返済が難しくなった場合は、裁判所に申し立てて返済期限を最長2年延ばせる制度があります(e-Gov法令検索|民事再生法234条1項)。

延長しても返済が極めて困難な場合は、次の条件をすべて満たせば、残りの返済が免除される「ハードシップ免責」の制度もあります(e-Gov法令検索|民事再生法235条1項)。

  • 本人の責任ではない事情で、計画どおりの返済が極めて困難になった
  • 計画で決めた返済額の4分の3以上をすでに返している
  • 免責が債権者の一般の利益に反しない
  • 返済期限の延長(計画の変更)も極めて困難である

どちらも認められない場合は自己破産への切り替えも選択肢になるため、返済が苦しくなった時点で依頼した弁護士に相談してください。

個人再生は自己破産・任意整理と何が違う?

個人再生は、家を残しながら借金の元本を減額できる点で任意整理と自己破産の中間にあたる手続きです。3つの手続きの違いは次のとおりです。

項目個人再生自己破産任意整理
借金の減額元本を法律の最低弁済額まで減額免責されれば支払い義務がなくなる将来利息のカットが中心で、元本は原則全額
家・住宅ローン住宅ローン特則で家を残せる持ち家は原則として処分される住宅ローンを対象から外せる
資格制限なし復権を得るまでありなし
借金の原因問われない浪費・ギャンブルは免責不許可事由問われない
裁判所使う使う使わない
弁護士費用の目安27.5万〜55万円程度(住宅ローン特則ありは33万〜55万円程度)同時廃止22万〜33万円程度、少額管財33万〜44万円程度1社あたり4〜10万円程度

弁護士費用は債務整理の費用はいくら?手続き別の相場と内訳の目安で、個人再生・自己破産では別に裁判所費用がかかります。4つの手続きの違いは債務整理の種類は4つ|違い・期間を比較して選ぶで比較しています。

個人再生が向いている人・向いていない人は?

個人再生が向いているのは、家を残したい人、借金が大きく任意整理では返せない人、資格制限のある仕事をしている人で、いずれも安定した収入があることが前提です。

向いている人

  • 住宅ローンが残っていて、家を手放したくない
  • 借金の総額が大きく、元本を全額返す任意整理では毎月の返済額が収入に見合わない
  • 警備員など、自己破産すると一時的に就けなくなる仕事をしている
  • ギャンブルや浪費が原因の借金で、自己破産の免責に不安がある
  • 毎月の収入から、減額後の返済と住宅ローンを払い続けられる

別の手続きが合う人

  • 借金の総額が少なく、任意整理で月々の返済が収まる人は任意整理
  • 収入がなく、減額後の返済も続けられない人は自己破産
  • 自宅に住宅ローン以外の抵当権がついている人は、住宅ローン特則が使えないため弁護士に確認

どの手続きが合うか迷う場合は、債務整理の診断ツールで7つの質問に答えると方向性の目安がわかります。

個人再生にデメリットはある?

個人再生にもデメリットがあります。信用情報に事故情報が登録されること、官報に掲載されること、3〜5年の返済を続ける必要があること、手続きに必要な書類が多いことです。

デメリットの詳細と対策は個人再生のデメリット5選、申立て前後に避けるべき行動は個人再生でやってはいけないこと7選にまとめています。

信用情報の登録期間は債務整理のブラックリストはいつから何年?、官報の見られ方は官報で自己破産者の名前検索はできない|破産者マップの見方と注意点で説明しています。

個人再生の相談先はどう選ぶ?

個人再生の相談先は、個人再生の解決実績と、裁判所費用を含めた総額の2つで比べて選んでください。

債務整理相談ナビが債務整理の経験者1,024人に行った調査(2023年7月14〜17日)では、相談先を選ぶときに最も大切だと思うポイントは「解決能力・経験値」が35.8%、「トータル費用」が32.0%でした(債務整理経験者1,024人に聞いた「相談先の決め手」)。

債務整理の経験者100人への調査(2026年6月11〜12日、うち個人再生の経験者22%)では、69.0%が「もっと早く相談すればよかった」と答えています(債務整理「もっと早く相談すればよかった」が69%)。住宅ローンを滞納して保証会社が代位弁済すると、6か月以内に申し立てなければ住宅ローン特則を使えなくなるため、滞納が始まった段階で相談してください。

個人再生に対応する弁護士事務所の費用と実績は、個人再生に強い弁護士おすすめ5選|費用相場・選び方・司法書士との違いで比較しています。

個人再生のメリットに関するよくある質問

住宅ローンを滞納していても個人再生で家を残せますか?

保証会社が住宅ローンを代位弁済した日から6か月以内に申し立てれば、住宅ローン特則を使える場合があります(e-Gov法令検索|民事再生法198条2項)。

6か月を過ぎると特則は使えないため、滞納が続いている場合は早めに弁護士へ相談してください。

個人再生をすると官報に載りますか?

個人再生をすると官報に掲載されます。小規模個人再生では再生手続開始の決定の主文などが公告され(e-Gov法令検索|民事再生法222条2項)、公告は官報に掲載して行われます(e-Gov法令検索|民事再生法10条1項)。

官報の内容や見られ方は官報で自己破産者の名前検索はできない|破産者マップの見方と注意点で解説しています。

個人再生は司法書士にも頼めますか?

司法書士が裁判所の手続きで代理人になれるのは簡易裁判所の一定の手続きに限られ、地方裁判所で行う個人再生では代理人になれません(e-Gov法令検索|司法書士法3条1項)。

司法書士への依頼は裁判所に出す書類の作成の支援が中心で、裁判所とのやり取りは原則として本人が行います。手続き全体を任せたい場合は弁護士に依頼してください。

費用の違いは債務整理の費用はいくら?手続き別の相場と内訳にまとめています。

個人再生と自己破産はどちらを選べばいいですか?

家を残したい人や、資格制限のある仕事をしている人は個人再生、収入がなく返済を続けられない人は自己破産が候補です。

どちらも弁護士費用の目安は債務整理の費用はいくら?手続き別の相場と内訳で確認でき、個人再生に強い事務所は個人再生に強い弁護士おすすめ5選、自己破産に強い事務所は自己破産に強い弁護士おすすめ5選で比較しています。

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