
監修者:弁護士 大沼 洋一
「自己破産者検索サイトで名前を調べたい」「破産者マップはまだ閲覧できるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
官報で自己破産者の名前を入力して検索することはできません。官報発行サイトでも、有料の官報情報検索サービスでも同じです。破産に関する記事は画像として掲載され、テキスト検索が効かない形になっているためです。
この記事では、官報のどこまでが閲覧できるのか、かつて話題になった破産者マップの現状、そして自分の名前が載っているかもしれないと思ったときにどうすればいいかを整理します。
官報で自己破産者の名前検索はできる?
2025年4月1日、「官報の発行に関する法律」(令和5年法律第85号)が施行され、官報が電子化されました。
明治16年の創刊以来、官報は紙の印刷物として発行されてきましたが、現在は内閣府の官報発行サイトに掲載されることをもって発行され、同サイトに掲載される電子データが正本となっています。
そのうえで、内閣府はプライバシーへの配慮として次の措置を講じていると説明しています。
官報には法令の規定等に基づき様々な公示事項が掲載されますが、その中には、特定の個人を対象とした処分等、プライバシーの確保に配慮が必要な記事が含まれる場合があります。
そのような記事は、公開期間を90日に限定することや、記事を画像化してテキスト抽出やテキスト検索を困難にすることなどにより、プライバシーへの配慮のための対策を講じます。
破産や再生の公告は、この「プライバシーの確保に配慮が必要な記事」にあたります。そのため、次の2つの制限がかかっています。
- 記事が画像化されているため、氏名を入力してのキーワード検索が効かない
- 発行から90日を過ぎると、その記事自体が閲覧できなくなる
90日以内であれば、官報発行サイトでPDFを開いて自分の目で該当ページを探すことは可能です。ただしGoogleやYahoo!などの検索エンジンで名前を検索しても、官報の記事が出てくることはありません。
「官報で自己破産の名前を検索できるか」という問いへの答えは、氏名を入力して該当者を探すことはできず、閲覧も発行から90日以内に限られる、となります。
官報が見られる場所と閲覧方法|誰でも見ることはできる?
官報は誰でも閲覧できますが、方法によって見える範囲と期間が異なります。
官報発行サイト(パソコン・スマートフォン)
内閣府の官報発行サイトで、行政機関の休日を除き毎日午前8時30分に発行されます。会員登録は不要で、誰でも無料で閲覧・ダウンロードできます。
発行から原則90日間は官報全体を閲覧できます。90日経過後は、プライバシーへの配慮が必要な一部の記事は閲覧できなくなりますが、それ以外の記事は引き続き閲覧できます。
なお、2025年3月31日まで国立印刷局が「インターネット版官報」として提供していた過去の記事は、官報発行サイトで引き続き提供されています。
出典:官報発行サイト|内閣府
図書館・官報サービスセンターの端末
インターネットを利用できる環境にない方のために、都道府県が設置する図書館と、官報サービスセンター(旧・官報販売所)に端末が設置されており、官報発行サイトを閲覧できます。
設置場所は内閣府が一覧を公開しています(官報を閲覧できる都道府県の設置する図書館(PDF)/官報サービスセンター一覧(PDF))。
官報サービスセンターでの書面交付(有料)
発行から90日間は、官報サービスセンターを通じて、官報に掲載された情報を記載した書面(官報掲載事項記載書面)の交付を受けることができます。手数料と配送料がかかります。
一部の官報サービスセンターでは、DVD交付またはメール送付による電子媒体の提供にも対応しています。
国立印刷局本局での掲示
東京都にある国立印刷局本局の敷地内には掲示場が設置され、官報に掲載された情報を記載した書面が掲示されています。誰でも無料で閲覧できますが、直近に発行されたもののみが対象で、過去の情報は見られません。
同じ敷地内にはデジタルサイネージ(大型の電子表示装置)も設置されており、官報発行サイトの内容が表示されます。
官報情報検索サービス(会員制・有料)
国立印刷局が提供する官報情報検索サービスは、2025年4月1日から、官報法第16条にもとづき内閣総理大臣の承認を得て提供される会員制の有料サービスとなりました。
1947年5月3日(日本国憲法施行日)分から直近までの官報を、日付やキーワードで検索・閲覧できます。ただしプライバシー配慮記事は画像化されているため、このサービスでも氏名でのキーワード検索はできません。
出典:官報について|国立印刷局
自己破産者検索サイト(いわゆる「破産者マップ」)とは?閲覧できる?
破産者マップとは
「破産者マップ」「自己破産者検索サイト」は、官報に載る破産関連の公告を第三者が集めて検索できる形にした非公式サイトの呼び名です。公式に「破産者マップ」というサービスは存在しません。
当サイトでは、プライバシーへの配慮から、これらのサイトのURLの紹介や閲覧方法の案内はしません。
どんな仕組み?
自己破産などの手続では、裁判所の公告として官報に掲載される情報があります。
破産者マップと呼ばれるものは、その官報掲載情報を収集・加工してデータベース化し、氏名や住所などで検索できるようにしたものを指します。官報そのものが提供する機能とは別のものです。
行政の対応の経緯
この種のサイトに対しては、個人情報保護委員会が繰り返し行政処分を行ってきました。公表資料で確認できる主な経緯は次のとおりです。
| 時期 | 対応 | 根拠 |
|---|---|---|
| 令和4年2月18日 | 事業者に対する勧告 | 個人情報保護法第23条第1項(第三者提供の制限) |
| 令和4年3月23日 | 勧告に従わなかったため停止命令 | 同上 |
| 令和4年7月20日 | 別の事業者に対する勧告 | 個人情報保護法第19条(不適正な利用の禁止)ほか |
| 令和4年11月2日 | 勧告に従わなかったため停止命令 | 同上 |
| 令和5年1月11日 | 命令違反を理由に関係捜査機関へ告発 | 個人情報保護法第173条 |
個人情報保護委員会は、これらのサイトについて「不特定多数人に容易に検索できる方法で、多数の破産者等の個人データが継続的に提供されており、これらの者が人格的・財産的な差別的取扱いを受けるおそれがある」と判断しています。
出典:破産者等の個人情報を違法に取り扱っている事業者に対する行政上の対応について(令和4年7月20日)|個人情報保護委員会/同(令和5年1月11日・PDF)/同(令和4年3月23日・PDF)
なぜ注意が必要?
この種のサイトは、掲載情報の扱いそのものが違法と判断されてきた経緯があります。
加えて、掲載された情報の削除を名目に金銭を求めるケースが確認されています。命令・告発の対象となった事案でも、削除の手数料として暗号資産による支払いが求められていました。応じても削除される保証はなく、支払った事実が次の要求につながるおそれもあります。
なお、処分を受けたあとに海外サーバーで運営を再開し、日本の法律は適用されないと主張する類似サイトが現れることがあります。当サイトでは、プライバシー権や名誉権の侵害にあたると考えるため、こうしたサイトの名称やURLは掲載しません。
「自分の名前が載っているかも」と思ったときの対応
自己破産や個人再生の手続をした方が、自分の情報が掲載されていないか不安になることがあります。次の順番で対応してください。
1. 証拠を残す
画面のスクリーンショット、URL、表示日時を記録します。日を変えて複数回記録しておくと、掲載が継続していることの証拠になります。
2. 拡散しない
SNSへの投稿や共有は避けてください。二次被害につながります。掲載されているサイトのURLを他人に伝えることも同じです。
3. 金銭を支払わない
削除の手数料を求められても、支払わないでください。行政処分の対象となった事案では、削除を名目とした暗号資産の支払いが求められていました。支払いに応じたからといって削除される保証はありません。
4. 削除申請と相談
検索結果からの削除は、GoogleやYahoo!に対してURL単位で申請できます。サイト自体の削除や、掲載による被害への対応は、弁護士に相談するのが確実です。
手続を依頼した弁護士・司法書士がいる場合は、まずそこに連絡してください。手続中であれば、そのまま対応してもらえることがあります。
依頼先がない場合や、これから手続を検討している場合は、債務整理の相談先を比較するで、費用と対応範囲を確認したうえで相談先を選べます。
「破産者」と「自己破産した人」は同じではない
法律でいう「破産者」は、破産手続開始決定を受けて、まだ復権していない人を指します。過去に自己破産したかどうかではなく、いまその状態にあるかどうかを表す言葉です。
自己破産の手続中は、弁護士や警備員など一部の職業に就けない制限がかかります。免責許可が確定するとこの制限が外れ、法律上も破産者ではなくなります。これを復権といいます(破産法第255条)。
免責が得られなかった場合でも、破産手続開始決定から10年が経てば復権します。
日常会話では、過去に自己破産した人のことも「破産者」と呼びます。しかし法律上は、免責を受けた時点で破産者ではなくなります。この違いが、次の3つの誤解の原因になっています。
- 破産者名簿に一生載ると思われている
- 身分証明書が取れなくなると思われている
- 資格の制限がずっと続くと思われている
いずれも、免責を受けて復権した人には当てはまりません。
破産者名簿とは?閲覧できる?
「破産者名簿」は、官報に載る破産者の一覧のことではありません。市区町村が事務として作成・管理する記録で、誰でも自由に閲覧できるものではありません。
破産者名簿とは
破産者名簿は、自己破産した人が全員載る名簿ではありません。
自己破産の手続中は、弁護士や警備員など一部の職業に就けない制限がかかります。免責許可が確定するとこの制限が外れ、法律上も破産者ではなくなります(復権といいます)。破産者名簿に載るのは、この復権をしていない人だけです。
大半の人は免責許可を受けて復権するため、名簿に載らないまま手続を終えます。
破産者名簿は、市区町村の役所で管理される記録で、主に身分証明書(破産者でないことの証明等)の発行事務などで参照されます。
そのため、一般の第三者が「名簿を見て破産を知る」という性質のものではありません。
記載されるのはどんな場合か
市区町村への通知は、裁判所の通達(平成16年11月30日民三第113号 民事局長通達「戸籍事務司掌者に対する破産手続開始決定確定等の通知について」)によって、次の場合に限られています。
- 破産手続開始の決定が確定した日から1か月経過した時点で、免責手続が行われていないとき
- 同じく1か月経過後に、免責許可の申立てがすべて取り下げられたとき
- 同じく1か月経過後に、免責許可の申立てのすべてを却下または棄却する裁判が確定したとき
- 免責不許可の決定が確定したとき
- 免責取消しの決定が確定したとき
免責許可を受けた通常のケースでは、そもそも市区町村への通知が行われません。名簿に記載されるのは、免責が認められなかった場合などに限られます。
また、いったん通知されたあとでも、免責許可が確定したときや、破産手続開始決定から10年が経って復権したときは、その旨があらためて市区町村に通知されます。
出典:戸籍事務司掌者に対する破産手続開始決定確定等の通知について(PDF)|裁判所
閲覧の実態(誤解が多い点)
役所内でも取り扱いは限定され、第三者が気軽に見られる資料ではありません。
自己破産すると、実際に誰に知られるのか
官報も破産者名簿も、日常的に他人が見るものではありません。実際に自己破産が知られるきっかけは、別のところにあります。
主なものは、同居している家族への郵便物、保証人になっている人への請求、給与の差押えや退職金見込額の証明が必要になる場面です。手続の種類や事情によって、避けられるものと避けられないものがあります。
会社に知られるかどうかは、退職金見込額の証明を勤務先に依頼する必要があるかどうかで変わります。該当する4つのケースと、それぞれの対処法は自己破産すると会社にバレる?バレる4つのケースと対処法で確認できます。
家族の場合は、郵便物と同居の有無が分かれ目になります。内緒で進められる手続と、バレる原因への対策は債務整理は家族にバレる?内緒にできる手続きとバレる原因・対策にまとめています。
手続そのものの条件や流れについては自己破産とは?条件・流れ・費用の目安をご覧ください。
自己破産以外の手続なら官報に載らないケースもあります。任意整理は裁判所を使わない手続のため、官報に掲載されません。4つの手続の全体像は債務整理とは?4つの方法と選び方に、手続ごとの違いは債務整理の種類と違いにまとめています。
どの手続が自分に当てはまるかは、債務整理シミュレーターで7問・約1分で確認できます。
よくある質問
官報に載らない手続を選びたい、家族に知られずに進めたいという理由で手続を選ぶ場合は、債務整理は家族にバレる?内緒にできる手続きとバレる原因・対策もあわせて確認してください。
費用と対応範囲から相談先を選ぶ場合は債務整理の相談先を比較するにまとめています。

