債務整理の種類は4つ|違い・期間を比較して選ぶ

債務整理の種類は4つ
執筆:大泉 聡(弁護士・司法書士に取材)

監修:弁護士 岩壁 美莉|監修日2026/3/12

債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4つの手続きがあります。

4つは「借金の負担を減らす」という目的こそ同じですが、減額の仕組み、裁判所を使うかどうか、財産や住宅への影響、費用と期間がそれぞれ違います。どれが良い悪いではなく、収入の有無・借入総額・残したい財産によって、選べる手続きが変わります。

このページでは、4つの違いを比較表で整理したうえで、混同されやすい組み合わせ(債務整理と任意整理、任意整理と自己破産など)を個別に説明します。減額の基準は民事再生法や破産法の条文、特定調停の費用と期間は東京簡易裁判所の案内、実際の利用件数は司法統計年報を参照しています。

制度全体の位置づけから確認したい場合は、債務整理とは?仕組み・メリット・デメリットを弁護士が解説をあわせてご覧ください。

目次

債務整理の4つの種類

任意整理

裁判所を使わず、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉して、将来利息のカットや返済期間の見直しを目指す手続きです。

元本そのものは原則として減りません。減るのは主に利息負担で、返済期間は3〜5年程度(36〜60回)で交渉されることが多くなっています。対象にする債権者を選べるため、保証人がついている借入や住宅ローンを外して進められます。

詳しくは任意整理とは?メリット・デメリットと流れ・期間・費用の目安で解説しています。

個人再生

裁判所に申し立て、借金を法律の基準まで減らしたうえで、原則3年(事情により5年まで)で分割返済する手続きです。

住宅ローンを支払い続けながら他の借金だけを減らす「住宅資金特別条項」を使える点が、他の3つにはない特徴です。安定した収入の見込みがあることが前提になります。

詳しくは個人再生とは?仕組み・条件・流れをわかりやすく解説で解説しています。

自己破産

裁判所に申し立て、支払不能と認められた場合に、免責許可決定によって返済義務を免除してもらう手続きです。

一定額を超える財産は処分の対象になりますが、99万円以下の現金など生活に必要な範囲の財産は手元に残せます(破産法34条)。残せる範囲は自己破産しても残せる財産とは?自由財産の範囲をわかりやすく解説で整理しています。

手続きの流れは自己破産とは?条件・流れ・デメリット・費用までわかりやすく解説をご覧ください。

特定調停

簡易裁判所に申し立て、調停委員が間に入って債権者と返済条件を話し合う手続きです。

東京簡易裁判所「特定調停」の案内によれば、申立手数料は相手方1社につき500円分の収入印紙、手続費用として相手方1社につき500円分の郵便切手が必要です。

申立てから終了まではおおよそ2か月程度で、申立人は2回程度裁判所に出向きます。当事者本人が出頭するのが原則で、代理人を立てずに自分で進められます。

合意が成立して調書に記載されると、その記載は確定判決と同じ効力を持ちます。逆に、双方の折り合いがつかなければ、合意ができないまま手続きが終わります。この「合意できなければ何も決まらない」という点が、裁判所が減額を決める個人再生・自己破産との決定的な違いです。

詳しくは特定調停とは?簡単にわかる流れ・費用・管轄・デメリットで解説しています。

債務整理の4つの手続き(任意整理・個人再生・自己破産・特定調停)は何が違う?

任意整理と特定調停は将来の利息をカットして元本を返していく手続き、個人再生は元本を法律の基準まで減額する手続き、自己破産は免責によって返済義務をなくす手続きです。

裁判所を使わないのは任意整理だけで、期間は特定調停が約2か月、任意整理が2〜4か月程度と短く、個人再生と自己破産の管財事件は半年〜1年程度かかります。

比較項目任意整理個人再生自己破産特定調停
何が減るか将来利息だけ(元本は原則そのまま)元本が法律の基準まで減る免責されれば返済義務がなくなる将来利息だけ(元本は原則そのまま)
裁判所使わない地方裁判所地方裁判所簡易裁判所
減額を決める人債権者との交渉裁判所裁判所当事者の合意
対象債権者を選べるか選べる選べない選べない選べる
収入の要否返済原資が必要継続的な収入の見込みが必要不要返済原資が必要
住宅ローン付きの家対象から外せば維持可住宅資金特別条項で維持可原則手放す対象から外せば維持可
財産の処分なしなし(清算価値が返済額に反映)一定額を超える財産は処分なし
官報掲載なしありありなし
本人の出頭不要事案により裁判所へ出頭事案により裁判所へ出頭原則必要(2回程度)
手続きの期間相談から和解まで2〜4か月程度申立てから最短で約6か月、相談からは1年程度同時廃止2か月〜半年程度/管財事件 半年〜1年程度申立てからおおよそ2か月程度

期間の出典は、任意整理・個人再生(相談から)・自己破産(同時廃止)が金融庁・消費者庁「多重債務者相談の手引き」(2011年8月)、個人再生(申立てから)が鹿児島地方裁判所「個人再生手続説明書」、自己破産(管財事件)が最高裁判所「令和7年司法統計年報 民事・行政編」第107表、特定調停が東京簡易裁判所「特定調停」です。

4つの手続きに共通する点

比較表に入れていない、どの手続きでも共通して起きることです。

信用情報に事故情報が登録される 4つのいずれを選んでも、信用情報機関に登録されます。登録される期間は、機関と手続きの内容によって異なります。債務整理のブラックリストはいつから何年?載らないケースと確認方法で機関ごとの扱いを整理しています。

受任通知で督促が止まる 弁護士・司法書士に依頼すると、受任通知が債権者に届いた時点で本人への直接の取立てが止まります。特定調停を自分で申し立てる場合も、裁判所から債権者に申立受理通知が送られます。

手続き後に返済が残るかは手続きによる 任意整理・個人再生・特定調停は、減額後の残額を分割で返していきます。返済が完全になくなるのは自己破産で免責が認められた場合だけです。

個人再生でどこまで減るのか

個人再生の減額幅は交渉ではなく、法律の基準で決まります。民事再生法231条の最低弁済基準では、住宅ローンを除いた債務総額に応じて、返済しなければならない最低額が次のように定められています。

債務総額(住宅ローンを除く)最低弁済額
100万円未満全額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1,500万円以下総額の5分の1
1,500万円超3,000万円以下300万円
3,000万円超5,000万円以下総額の10分の1

ただし、この表の金額は下限です。財産を持っている人は、実際の返済額がこれより増えます。

個人再生には、「自己破産していたら債権者が受け取れたはずの金額」を下回る返済にはできない、という決まりがあります(民事再生法174条)。この金額を清算価値と呼びます。

たとえば借金が600万円の場合、表の基準では返済額は120万円(600万円の5分の1)です。ただし解約返戻金200万円の生命保険を持っていれば、自己破産していれば債権者はその200万円を受け取れたはずなので、返済額は200万円になります。

持ち家、解約返戻金の大きい保険、価値のある車を持っている人ほど、表の金額どおりには減りません。

出典:民事再生法231条・174条(e-Gov法令検索)

混同されやすい組み合わせの違い

債務整理と任意整理の違い

「債務整理」は4つの手続き全体をまとめた呼び方で、「任意整理」はそのうちの1つです。同じ意味ではありません。

「債務整理と自己破産の違い」「債務整理と個人再生の違い」という言い方も同じ関係で、いずれも総称と個別の手続きを比べています。

任意整理と個人再生の違い

減るものが違います。任意整理は将来利息、個人再生は元本を含む債務そのものです。

任意整理は裁判所を使わないため手続きの負担が軽い一方、元本が残るため、借入額が大きく毎月の返済に耐えられない場合は減額が足りません。個人再生は元本を減らせますが、裁判所への申立てと書類準備が必要で、期間も長くなります。

住宅ローンを払いながら他の借金を減らしたい場合、住宅資金特別条項を使えるのは個人再生だけです。債務整理をしたら住宅ローンはどうなる?で手続きごとの扱いを比較しています。

任意整理と自己破産の違い

返済が続くかどうかが違います。任意整理は減額後の元本を3〜5年程度で返し続けます。自己破産は免責が認められれば返済義務そのものがなくなります。

ただし自己破産は、一定額を超える財産が処分の対象になり、官報に掲載されます。任意整理にはどちらもありません。返済を続けられる収入があるかどうかが、最初の分かれ目になります。

個人再生と自己破産の違い

財産を残せるかどうかが違います。個人再生は財産を手放さずに済みますが、その財産の評価額は返済額に反映されます。自己破産は一定額を超える財産を処分する代わりに、返済義務がなくなります。

また、個人再生には継続的な収入の見込みが必要ですが、自己破産にはこの要件がありません。

特定調停と任意整理の違い

交渉する主体が違います。特定調停は本人が簡易裁判所に申し立て、調停委員を介して話し合います。任意整理は弁護士・司法書士が代理人として直接交渉します。

費用は特定調停のほうが安く抑えられますが、本人が2回程度裁判所に出向く必要があり、合意に至らなければ手続きは何も決まらないまま終わります。

実際に使われているのはどの手続きか

令和6年(2024年)の司法統計年報によると、全国の地方裁判所が受け付けた件数は次のとおりです。

手続き新受件数(全地方裁判所)
破産85,115件
小規模個人再生9,898件
給与所得者等再生626件

個人再生は小規模個人再生が大半を占め、給与所得者等再生はごく少数です。任意整理は裁判所を使わないため統計に表れず、特定調停は簡易裁判所の管轄のためこの表には含まれません。

出典:最高裁判所「令和6年 司法統計年報 民事・行政編」第4表 民事・行政事件数―事件の種類及び新受、既済、未済―全地方裁判所及び地方裁判所別(司法統計 検索ページ)

自己破産の件数は地域差もあります。自己破産件数の推移と都道府県別の状況で年次推移と人口比を確認できます。

自分に合う手続きの見分け方

次の条件に当てはまるものが、検討の出発点になります。

状況検討する手続き
収入があり、利息が止まれば3〜5年で返せる任意整理
収入はあるが、元本を減らさないと返せない個人再生
住宅ローンを払いながら他の借金を減らしたい個人再生
収入がなく、返済の見込みが立たない自己破産
借入先が少なく、費用を抑えて自分で進めたい特定調停
保証人つきの借入を手続きから外したい任意整理・特定調停

借入額・収入・返済状況を入力すると目安を確認できる債務整理自己診断ツールも用意しています。

手続きを選ぶ前に確認しておくこと

同じ状況でも選べる手続きは1つとは限らない 借入額が同じでも、収入・財産・住宅の有無で結論は変わります。逆に、複数の手続きが選択肢になることもあります。その場合はどちらが有利かの判断が必要になります。

申立て前の財産処分は避ける 自己破産や個人再生を検討している段階で、車や保険を自己判断で処分したり、特定の債権者にだけ返済したりすると、手続きに影響が出ることがあります。処分を考えている場合は、動く前に相談してください。

弁護士と司法書士では扱える範囲が違う 司法書士が代理人として扱えるのは1社あたり140万円以下の案件に限られます。個人再生・自己破産の申立代理は弁護士のみです。債務整理は司法書士に相談できる?140万円の壁と弁護士との違いで整理しています。

家族に知られるかは手続きで変わる 官報に載るのは個人再生と自己破産ですが、実際に知られる経路は郵便物や保証人であることが多くなっています。債務整理は家族にバレる?内緒にできる手続きとバレる原因・対策で経路ごとに解説しています。

よくある質問

債務整理にはどんな種類がありますか

任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4つです。裁判所を使わない任意整理、簡易裁判所で話し合う特定調停、地方裁判所に申し立てる個人再生と自己破産に分かれます。

債務整理と任意整理は同じ意味ですか

違います。債務整理は4つの手続き全体の総称で、任意整理はそのうちの1つです。

債務整理と自己破産の違いは何ですか

債務整理は総称、自己破産はその中の1つの手続きです。自己破産は裁判所の免責許可決定によって返済義務が免除される点で、他の3つと性質が異なります。

任意整理と個人再生ではどちらを選ぶべきですか

利息が止まれば3〜5年で返せる見込みがあれば任意整理、元本を減らさないと返済が続かない場合は個人再生が検討対象になります。住宅ローンを残したい場合は個人再生です。

自己破産をするとすべての財産を失いますか

失いません。99万円以下の現金など、生活に必要な範囲の財産は手元に残せます(破産法34条)。処分の対象になるのは一定額を超える財産です。

債務整理をすると全部の借金が対象になりますか

任意整理と特定調停は対象にする債権者を選べます。個人再生と自己破産は、原則としてすべての債権者が対象になり、一部だけ外すことはできません。

特定調停は自分で申し立てられますか

できます。東京簡易裁判所の案内では、申立手数料は相手方1社につき500円分の収入印紙、手続費用として相手方1社につき500円分の郵便切手が必要で、申立人は2回程度裁判所に出向きます。ただし合意に至らなければ何も決まらないまま終了します。

どの手続きでも信用情報に登録されますか

登録されます。登録される期間は信用情報機関と手続きの内容によって異なります。

まとめ

手続き向いている状況主な制約
任意整理利息が止まれば返せる元本は原則減らない
個人再生元本を減らしたい・家を残したい継続的な収入の見込みが必要
自己破産返済の見込みが立たない一定額を超える財産は処分
特定調停費用を抑えて自分で進めたい本人の出頭が必要・合意が前提

4つのうちどれを選ぶかは、収入・財産・住宅・借入額の組み合わせで決まります。条件を整理したうえで、複数の手続きを扱える相談先に確認するのが確実です。

債務整理相談ナビが債務整理の経験者1,024人に行った調査では、相談先を決めたときに最も重視した点は「解決能力」が35.8%、次いで「トータル費用」が32.0%でした。詳しくは債務整理相談ナビ白書2026にまとめています。

談先の選び方は債務整理・任意整理の弁護士の選び方|6つの観点と確認手順で解説しています。手続き別の対応範囲・費用・実績から相談先の事務所を比較することもできます。

監修者

この記事の監修者
弁護士 岩壁 美莉 弁護士法人 東京新宿法律事務所所属。

弁護士 岩壁 美莉
弁護士法人 東京新宿法律事務所所属。

2012年早稲田大学法学部卒業。2014年慶應義塾大学法科大学院修了。第二東京弁護士会所属(2015年弁護士登録)。

弁護士法人 東京新宿法律事務所にて、相続、離婚、労働問題、交通事故、企業法務など幅広い分野に注力。

「依頼者ファースト」の姿勢で一人ひとりの悩みに寄り添った法律サービスを提供。

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