
自己破産をしても、生活に必要な財産まで取り上げられるわけではありません。法律は、手元に残してよい財産(自由財産)の範囲を定めています。
残せるかどうかを分けるのは、財産の種類と金額(時価)です。現金は99万円まで残せますが、価値の高い車や解約返戻金の大きい保険、持ち家は、原則として手放すことになります。
財産の種類ごとに、何が残って何が処分の対象になるのかを見ていきます。
自己破産で残せる4つの財産
自己破産で手元に残せる財産(自由財産)は、次の4つに分かれます。
- 破産手続開始決定後に得た財産(新得財産)
- 99万円以下の現金(法定自由財産)
- 生活に必要な家財などの差押禁止財産
- 裁判所が認めた自由財産の拡張(個別判断)
逆に、不動産・高額な預貯金・価値のある車・貯蓄性の高い保険は、原則として処分の対象です。破産法34条が自由財産とその拡張を、民事執行法131条が差押禁止動産を定めています。
自由財産とは
自由財産とは、破産財団に含まれない財産です。破産管財人が売却して債権者への配当に回す対象から外れ、本人が手元に置けます。
残せる財産の中身
破産手続開始決定後に得た財産(新得財産)
破産手続開始決定のあとに受け取った給与は、原則として破産財団に入りません。いつの時点の財産かで線引きが変わるため、手続きの種類によっては個別の確認が要ります。
現金は99万円まで残せる
手続開始の時点で持っている現金は、99万円までなら手元に残せます。
注意したいのは、現金と預貯金が別物として扱われる点です。預貯金は金額や裁判所の運用しだいで処分の対象に入ります。
また、手続き直前に預金をおろして現金に換えるような動きは、財産隠しを疑われかねません。お金の動かし方は、自己判断せず先に専門家へ相談してください。
生活に必要な家財は残せる(差押禁止財産)
衣服・寝具・家具・台所用品など、生活に欠かせない家財は差押禁止財産として守られます。冷蔵庫や洗濯機、電子レンジ、一般的なテレビ、机、布団といった日用品は、まず処分の対象になりません。
例外は、ブランド品や美術品のように換価価値の高い品です。同じ「家財」でも、これらは別に扱われます。
差押えが禁止される主なもの
- 衣服・寝具・家具・台所用品
- 1か月間の生活に必要な食料・燃料
- 礼拝・祭祀に関する物(位牌など)
- 仕事に使う器具・用具(生活の基盤に関わる範囲)
裁判所が認める「自由財産の範囲の拡張」
法律で決まった自由財産に加えて、裁判所が生活状況をみて残せる範囲を広げることがあります(拡張自由財産)。ここは全国一律ではなく、地域の運用や事情で結論が変わります。
預貯金や生命保険の解約返戻金、車は、残高や時価が小さければ処分されずに残るケースが多くみられます。
ただし「いくらまでなら残る」という線は裁判所によって違うため、残したい財産があるなら申立て前に専門家へ相談しておきたいところです。
処分の対象になりやすい財産
手続開始の時点で持っている財産は、原則として清算に回ります。手放すことになりやすいのは、次のような財産です。
- 不動産(持ち家・土地)
- 高額な預貯金
- 換価価値のある車(時価が一定以上)
- 有価証券(株式・投資信託など)、暗号資産
- 解約返戻金の大きい生命保険
- 高額な貴金属、ブランド品、美術品
- 退職金(すでに受領済みは資産として扱われやすい。将来見込みでも一定割合を財産として扱う運用が紹介されることがあります)
判断の基準は、買ったときの値段ではなく、いま売ったらいくらかという時価です。
よくある疑問
自由財産で失敗しないための注意点
押さえておきたいのは3点です。
- 通帳・保険・車・投資を含め、財産はもれなく正確に申告する
- 残したい財産があるなら、運用の差が大きいので申立て前に専門家と進め方を決める
- 手続き直前の現金化や名義変更は、財産隠しとみなされ免責に響くおそれがあるのでしない
まとめ
自己破産でも、現金99万円や生活に必要な家財など、暮らしの土台になる財産は残せます。
預貯金・車・保険・退職金は金額と裁判所の運用で結論が変わるため、残したい財産がある人ほど、早めに専門家へ相談して資料をそろえておくと違ってきます。
財産ごとの扱いを一覧にすると、次のとおりです。
| 財産 | 扱いの目安 |
|---|---|
| 現金 | 99万円まで残せる |
| 生活に必要な家財 | 残せる(差押禁止財産) |
| 預貯金 | 金額・運用次第(少額なら残ることも) |
| 車 | 時価が低ければ残ることも |
| 生命保険 | 解約返戻金が少額なら残ることも |
| 持ち家・不動産 | 原則として処分対象 |
| 退職金 | 一定割合が財産とみなされる |
| iDeCo | 受給権は原則として守られる |
| NISA | 原則として換価対象 |
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根拠(出典・条文)
本記事の「自由財産」「差押禁止財産」に関する説明は、主に次の法令に基づきます。
出典:e-Gov法令検索
参照日:2026年3月4日
