
自己破産を検討している人のなかには、「銀行口座は凍結されるのか」「給与や年金は受け取れるのか」「新しい口座は作れるのか」と不安に感じる人も多いでしょう。
実際には、自己破産をしても、すべての銀行口座が使えなくなるわけではありません。凍結される可能性があるのは、原則として借入のある銀行の口座に限られます。
自己破産を経験した100人への調査でも、「借入のある銀行の口座が凍結された」人は54.0%で、34.0%は「凍結されなかった」と回答しており、対応が分かれていました。実態データの詳細は自己破産で銀行口座「凍結された」は54%—経験者100人の実態調査で紹介しています。
この記事では、自己破産で銀行口座がどう扱われるのか、凍結の理由と期間、事前に準備しておきたい対策、新規口座開設の可否までをわかりやすく解説します。
なお、自己破産そのものの条件や流れを先に確認したい場合は、自己破産とは?借金がゼロになる仕組み・デメリット・流れをわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
自己破産経験者100人に聞いた|銀行口座への影響
自己破産をすると、銀行口座には実際にどのような影響があるのでしょうか。
債務整理相談ナビでは、自己破産経験者100人を対象に、銀行口座への影響・凍結期間・給与振込口座の変更時期についてアンケート調査を実施しました。まずは調査結果から、実態を見ていきましょう。
半数強が「口座凍結」を経験、3割は「影響なし」

自己破産経験者100人に、手続きによる銀行口座への影響を聞いたところ(複数回答可)、「借入のある銀行の口座が凍結された」が54.0%で最も多い結果となりました。
次いで「特に影響はなかった、または影響についてよくわからなかった(31.0%)」「給与振込口座を変更する必要があった(29.0%)」「公共料金などの引落口座を変更した(24.0%)」と続きます。
半数以上が口座凍結を経験している一方で、3割は影響を感じていませんでした。凍結の対象になるのは借入のある銀行の口座に限られるため、消費者金融やクレジットカードの借金だけで銀行からの借入がなかった場合には、口座への影響がほとんどないケースもあることが分かります。
凍結期間は「2〜3か月」が最多

口座が凍結された場合の期間を聞いたところ、凍結を経験し期間を回答した人(61人)では「2〜3か月(20.0%)」が最多で、「1か月以内(16.0%)」と合わせると約6割が3か月以内に解除されていました。
一方で「4〜6か月(16.0%)」「6か月以上(9.0%)」と長引いたケースもあり、凍結期間には幅があることも分かります。
また、全体の34.0%は「凍結されなかった」と回答しており、自己破産をした人すべてが口座凍結を経験するわけではないことも読み取れます。
給与口座の変更は「弁護士に依頼してすぐ」が最多

給与振込口座をいつ変更したかを聞いたところ、「変更の必要がなかった(36.0%)」に次いで「弁護士に依頼してすぐ変更した(35.0%)」が多く、「裁判所への申立前に変更した(18.0%)」と合わせると、変更した人の大半が手続きの早い段階で対応していました。
「変更が遅れてトラブルになった」はわずか2.0%にとどまっており、事前に口座を切り替えておくことで、給与の受け取りへの深刻な影響はほぼ回避できていた実態がうかがえます。
調査結果の詳細は自己破産で銀行口座「凍結された」は54%—経験者100人の実態調査で紹介しています。
自己破産したら銀行口座はどうなる?状況別の早見表
自己破産による銀行口座への影響は、借入の有無や口座の使い方によって異なります。まずは全体像を表で確認しましょう。
| 状況 | どうなる? | 根拠 |
|---|---|---|
| 借入のある銀行の口座 | 一時的に凍結される可能性がある | 銀行の相殺権(破産法67条1項)と各行のカードローン規定 |
| 給与・年金の受取口座 | 凍結対象なら振込口座の変更が必要になる場合がある | 凍結中は預金の払い戻しができなくなるため |
| 公共料金などの引落口座 | 凍結対象なら支払方法の変更が必要になる場合がある | 凍結中は口座振替が止まるため |
| 借入のない銀行の口座 | 原則そのまま利用できる | 相殺の対象となる借金が存在しないため |
| 新規の口座開設 | 原則可能 | 口座開設を制限する法律の規定はないため |
| 家族名義の口座 | 原則影響しない | 破産の対象は本人名義の財産のみ(破産法34条1項) |
条文は破産法(e-Gov法令検索)で全文を確認できます(2026年7月時点)。それぞれ詳しく解説します。
借入のある銀行の口座は凍結される可能性がある
自己破産の対象にその銀行からの借入(カードローンなど)が含まれる場合、口座が一時的に凍結される可能性があります。
口座が凍結されると、預金の引き出し・振込・口座振替などが利用できなくなります。同じ銀行グループのカードローンを利用している場合も、凍結の対象になることがあります。
ただし、自己破産をしたからといって、すべての銀行口座が一律に凍結されるわけではありません。
給与や年金の受け取りに影響する場合がある
給与や年金の受取口座が凍結対象になった場合、振り込まれたお金を引き出せなくなるおそれがあります。
実際に今回の調査でも、29.0%が「給与振込口座を変更する必要があった」と回答しています。借入のある銀行を給与や年金の受取口座にしている場合は、受取先の変更が必要になります。
公共料金などの引き落としが止まる場合がある
公共料金や家賃などの引落口座が凍結されると、自動引き落としができなくなり、滞納扱いになるおそれがあります。
調査でも24.0%が「公共料金などの引落口座を変更した」と回答しており、口座凍結の影響は預金の引き出しだけでなく、日常の支払いにも及ぶことが分かります。
借入のない銀行の口座は引き続き利用できる
借入のない銀行の口座は、原則としてこれまでどおり利用できます。
口座凍結は、銀行が預金と借金を相殺(破産法67条1項)するための措置です。借入のない銀行には相殺の対象となる借金がそもそも存在しないため、口座を凍結する法的な理由がないのです。
新しい銀行口座は原則開設できる
自己破産後でも、新しい銀行口座の開設は原則として可能です。詳しくは後述の「自己破産後に新しい銀行口座は作れる?」で解説します。
家族名義の口座は原則影響しない
自己破産の対象となるのは本人名義の財産であるため、家族名義の銀行口座が凍結されることは原則ありません。
ただし、自己破産の直前に本人のお金を家族名義の口座へ移すなど、不自然な資金移動がある場合は、財産隠しを疑われ、裁判所や破産管財人から確認を求められることがあります。
自己破産で銀行口座が凍結される理由と期間
銀行口座が凍結される主な理由は、銀行が預金と借金を相殺するためです。
破産手続きでは、銀行が預金(利用者に返すお金)と貸付金(回収するお金)を相殺できることが法律で定められています(破産法67条1項)。
また、各銀行のカードローン規定にも、破産手続開始の申立てなどがあった場合には期限の利益を失う(残りの借金を一括で返す義務が生じる)こと、銀行が預金と相殺できることが定められています(例:三井住友銀行カードローン規定第12条・第16条/PDF・2026年7月時点)。
つまり口座凍結は、法律と契約の両方に基づく銀行側の債権回収の手続きなのです。
凍結は「受任通知が届いたタイミング」で始まる
口座凍結は、裁判所が自己破産を認めた後ではなく、弁護士や司法書士からの受任通知が銀行に届いたタイミングで行われるのが一般的です。
つまり、専門家に依頼した直後から凍結が始まる可能性があるため、口座の準備は「依頼前」に済ませておく必要があります。
凍結はいつまで続く?解除までの目安
口座凍結は、銀行の借金を保証会社が代わりに支払う処理(代位弁済)が終わると解除されるのが一般的です。「凍結=口座が永久に使えなくなる」わけではありません。
実際の調査でも、凍結期間は「2〜3か月」が最多で、期間を回答した人の約6割が3か月以内に解除されていました。一方で「6か月以上」続いたケースも9.0%あり、期間には幅があります。
なお、凍結が解除された後も、銀行側の判断でその口座の取引が制限される場合があるため、凍結対象になった口座は生活のメイン口座として使い続けない前提で考えておくと安心です。
債務整理全般(任意整理・個人再生を含む)での口座凍結の仕組みは、債務整理で銀行の口座凍結は起きる?理由と対処法、いつまで続くかを解説で詳しく整理しています。
自己破産前に準備しておきたい銀行口座の対策
自己破産を検討している場合は、口座凍結によって生活に支障が出ないよう、専門家への依頼前に準備しておくことが大切です。
給与振込口座を借入のない銀行に変更する
給与振込口座が借入先の銀行になっている場合は、借入のない別の銀行口座への変更を検討しましょう。
口座が凍結されると、給与が振り込まれても引き出せなくなるおそれがあります。勤務先によっては口座変更の反映まで1〜2か月かかることもあるため、早めの手続きが重要です。
実際の調査でも、給与口座を変更した人の大半は「弁護士に依頼してすぐ」または「申立前」に対応しており、変更が遅れてトラブルになった人は2.0%にとどまっていました。
公共料金などの引落口座・支払方法を変更する
公共料金や家賃、スマートフォンの通信費などの引落口座が凍結対象の場合は、支払方法の変更を検討しましょう。
口座振替が止まると、料金の未払い・滞納につながるおそれがあります。借入のない銀行の口座へ引落先を変更するか、振込・コンビニ払いなどへ切り替えることで、支払いの遅延を防げます。
当面の生活費を確保しておく
口座凍結に備えて、当面の生活費を確保しておくことも重要です。
調査では凍結期間は「2〜3か月」が最多でしたが、「4〜6か月」「6か月以上」と長引いたケースもありました。凍結期間中の生活に必要な資金を把握し、無理のない範囲で準備しておくと安心です。
なお、自己破産では現金99万円までが自由財産として手元に残せます。手元に残せる財産の範囲は自己破産で残せる財産・取られる財産|現金99万円・車・預貯金の扱いで詳しく解説しています。
自己破産後に新しい銀行口座は作れる?
自己破産後でも、新しい銀行口座を開設することは原則として可能です。
銀行口座の開設は、ローンやクレジットカードのような信用情報の審査とは異なるためです。自己破産の情報が信用情報機関に登録されていても、口座開設自体が断られる理由には原則なりません。
実際、口座凍結に備えて借入のない銀行やネット銀行で新しい口座を開設し、給与の受取先や生活費の管理用として使う人も少なくありません。
ただし、自己破産の対象にした銀行(凍結された銀行)では、その後の新規取引を断られる場合があります。新しい口座は、借入のなかった銀行で開設するのが確実です。
自己破産と銀行口座に関するよくある質問(FAQ)
自己破産と銀行口座については、「口座は調査される?」「通帳の提出は必要?」といった手続き面の疑問も多く寄せられます。よくある質問をまとめました。
まとめ|自己破産の口座凍結は「借入のある銀行」だけ。事前準備で影響は抑えられる
自己破産をしても、すべての銀行口座が使えなくなるわけではありません。凍結される可能性があるのは借入のある銀行の口座に限られ、借入のない銀行の口座はこれまでどおり使えます。
実際の調査でも、口座凍結を経験した人は54.0%で、34.0%は「凍結されなかった」と回答していました。凍結された場合も、期間は「2〜3か月」が最多で、多くは一時的なものにとどまっています。
重要なのは、専門家への依頼前に給与振込口座・引落口座を借入のない銀行へ切り替え、当面の生活費を確保しておくことです。調査でも、変更が遅れてトラブルになった人は2.0%にとどまっており、事前準備によって生活への影響は大きく抑えられます。
自己破産が生活全体に与える影響は自己破産したらどうなる?生活・仕事・家族・財産(失うもの)への影響をわかりやすく解説で整理しています。
自己破産の相談先を費用や実績から比較して検討したい場合は、自己破産の相談先を比較するもご活用ください。
口座凍結のタイミングや対策は、借入先の構成や口座の使い方によって変わります。自己判断で進めず、弁護士や司法書士へ相談しながら準備することが重要です。
