個人再生ができないケースとは?認められない理由・成功率・失敗後の対処法

個人再生ができないケースとは?
執筆:大泉 聡(弁護士・司法書士に取材)

個人再生ができないのは、借金が5,000万円を超える、継続的な収入の見込みがない、再生計画どおりに返せる見込みがない、財産隠しなど手続きに不誠実な行為がある、小規模個人再生で債権者の反対が多い、といった場合です。

申立て後に書類の誤りや期限切れで手続きが打ち切られることもあります。

ただし、個人再生が裁判所に認められないケースは多くありません。2025年に手続きが終わった個人再生のうち、再生計画が不認可になったのは0.2%で、92.5%は手続きが終結しています(最高裁判所「令和7年司法統計年報」)。

目次

個人再生ができないのはどんなとき?主な12のケース

個人再生ができない主なケースは、次の12のケースです。条件は民事再生法(e-Gov法令検索)と東京地方裁判所の案内で確認しています。

  • ①返済できない状態とはいえない
  • ②借金が5,000万円を超える
  • ③継続的な収入の見込みがない
  • ④給与所得者等再生を7年以内に使った
  • ⑤書類の不備・債権者一覧表の誤り
  • ⑥再生計画案を期限までに出さない
  • ⑦毎月の積立て(履行テスト)ができない
  • ⑧申立て費用を用意できない
  • ⑨再生計画どおりに返せる見込みがない
  • ⑩財産を隠した・財産目録に偽りを書いた
  • ⑪一部の債権者だけに返済した・不誠実な申立てをした
  • ⑫小規模個人再生で債権者の反対が多い

①返済できない状態とはいえない

個人再生は、借金を返せなくなるおそれがある人のための手続きです。民事再生法21条は、破産の原因となる事実が生じるおそれがあることを申立ての条件にしています。収入と支出から見て今のまま返していけると判断されると、個人再生は利用できません。

個人再生で最低限返す金額は、借金が100万円以上なら100万円を下回りません(民事再生法231条2項4号)。借金が100万円前後なら、利息のカットと分割払いを交渉する任意整理のほうが返済額が少なくなる場合があります。

②借金が5,000万円を超える

住宅ローンを除いた借金の総額が5,000万円を超えると、個人再生は利用できません(民事再生法221条1項)。住宅ローンは、住宅ローン特則を使うかどうかに関係なく、5,000万円に含みません。担保で回収できる見込みの部分も除きます。税金や社会保険料は個人再生で減額されず、5,000万円にも含みません。

他人の借金の保証人になっている場合、その保証債務は総額に入ります。会社の借入れの連帯保証人になっている経営者は、保証債務を足すと5,000万円を超えることがあります。

③継続的な収入の見込みがない

個人再生は、将来の収入から原則3年(特別な事情があれば最長5年)かけて返していく手続きです(民事再生法229条2項)。そのため、これから先も継続的に、または繰り返し収入を得る見込みが必要です(221条1項)。

  • 会社員・公務員・パート・アルバイト・年金受給者:継続して収入があれば利用できます
  • 個人事業主・歩合給の人:収入の変動が大きいと給与所得者等再生は使えませんが、小規模個人再生は利用できます
  • 自分の収入がない専業主婦(主夫):配偶者に収入があっても、本人は利用できません

④給与所得者等再生を7年以内に使った

給与所得者等再生は、次の場合から7年以内は利用できず、小規模個人再生で進めます。前回の給与所得者等再生で再生計画をやり遂げた場合(前回の認可の確定日から数えます)、ハードシップ免責を受けた場合、自己破産で免責を受けた場合です(民事再生法239条5項)。

ハードシップ免責は、再生計画の残りの返済を免除してもらう制度で、条件は「認可された後に返せなくなったら?」で説明しています。小規模個人再生にはこの制限がありません。

⑤書類の不備・債権者一覧表の誤り

個人再生では、給与明細、源泉徴収票、通帳のコピー、家計表など多くの書類を裁判所に出します。書類の不備を直さないままだと、手続きが進みません。

特に注意が必要なのは、借入先と金額をまとめた債権者一覧表です。東京地方裁判所は、再生手続が始まった後は一覧表を訂正できず、金額などに誤りがあると再生計画案が作れずに手続きが廃止されることもあると案内しています(東京地方裁判所 「よくある質問の6」)。

一覧表から抜けていた借金も消えるわけではありません。ほかの借金と同じ割合で減額されたうえで、再生計画の返済期間が終わった後に払う必要があります(民事再生法232条3項)。

⑥再生計画案を期限までに出さない

裁判所が決めた期限までに再生計画案を出さないと、手続きは廃止されます(民事再生法191条2号・243条2号)。東京地方裁判所では、期限は裁判所に必着です。通帳のコピーや家計表は毎月そろえておかないと、期限の直前に間に合わなくなります。

⑦毎月の積立て(履行テスト)ができない

東京地方裁判所では全件で個人再生委員が選ばれ、申立て後、再生計画で返す予定の金額を毎月、個人再生委員の口座に振り込みます。これを履行テストといいます。東京地方裁判所は、振込み漏れのないように案内しています。

⑧申立て費用を用意できない

申立てのときに裁判所が定める費用を納めないと、申立ては棄却されます(民事再生法24条・25条1号)。金額は「個人再生の費用はいくら?」で確認してください。

⑨再生計画どおりに返せる見込みがない

再生計画が実行される見込みがないと、再生計画は認められません(民事再生法174条2項2号)。毎月の返済額が手取りから生活費を引いた額を上回っているなど、明らかに続けられない計画は認められません。

最低限返す金額(最低弁済額)は、借金の額に応じて次のとおりです。

借金の総額(住宅ローンを除く)最低弁済額
100万円未満全額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1,500万円以下借金の5分の1
1,500万円超3,000万円以下300万円
3,000万円超5,000万円以下借金の10分の1

出典:民事再生法(e-Gov法令検索)231条2項3号・4号

再生計画で返す総額は、自己破産した場合に債権者が受け取れる額を下回ってはいけません(民事再生法174条2項4号・236条)。そのため、預貯金・保険の解約返戻金・車・相続した不動産などの財産の合計(清算価値)が最低弁済額より多い場合は、清算価値以上を返す必要があり、計画を立てられないこともあります。

⑩財産を隠した・財産目録に偽りを書いた

財産目録に財産を書かなかったり、事実と違うことを書いたりすると、手続きが廃止されることがあります(民事再生法237条2項)。債権者を害する目的で財産を隠すと、詐欺再生罪に問われることもあります(255条)。

⑪一部の債権者だけに返済した・不誠実な申立てをした

返済期限が来ていない借金を一部の債権者にだけ先に返すなど、他の債権者を害する目的で返済すると、罪に問われることがあります(民事再生法256条)。申立てが誠実にされたものでないと判断されると、申立ては棄却されます(25条4号)。

家族や友人への返済や、申立て前後の新たな借入れは、弁護士に相談してから判断してください。

⑫小規模個人再生で債権者の反対が多い

小規模個人再生では、再生計画案に書面で反対した債権者が半数以上になるか、反対した債権者の債権額が総額の2分の1を超えると、手続きは廃止されます(民事再生法230条6項・237条1項)。借入れが1社に集中していて、その会社が反対すると否決されます。

給与所得者等再生は、債権者の同意がなくても再生計画を認めてもらえます。債権者には意見を聞くだけです(民事再生法240条)。

個人再生の成功率は?2025年は不認可0.2%・終結92.5%

2025年に手続きが終わった個人再生10,963件のうち、再生手続が終結したのは10,142件(92.5%)で、再生計画不認可は25件(0.2%)でした。手続きが途中で打ち切られた再生手続廃止は264件(2.4%)です。

手続きの終わり方件数割合
再生手続終結(再生計画の認可が確定)10,142件92.5%
取下げ446件4.1%
再生手続廃止(途中で打ち切り)264件2.4%
再生計画不認可25件0.2%
棄却・却下25件0.2%
その他61件0.6%
合計10,963件100%

出典:最高裁判所「令和7年司法統計年報 1 民事・行政編」(PDF)第109表。小規模個人再生と給与所得者等再生の合計。割合は債務整理相談ナビが算出

不認可よりも、書類や期限の問題、債権者の反対で手続きが打ち切られる廃止のほうが10倍以上多くなっています。個人再生を最後まで進めるには、申立て前の準備と、手続き中の期限・振込みの管理が必要です。

全国と都道府県別の個人再生の件数は、自己破産件数の推移と都道府県ランキングでまとめています。

小規模個人再生と給与所得者等再生で、できない条件は違う?

小規模個人再生と給与所得者等再生では、収入の条件と債権者の同意の要否が違います。

条件小規模個人再生給与所得者等再生
収入継続的に、または繰り返し収入を得る見込みがあればよい給与などの定期的な収入があり、変動の幅が小さい
債権者の同意反対が半数以上か、債権額の2分の1を超えると廃止不要(意見を聞くだけ)
利用の制限なし前回の利用などから7年以内は不可
返済額最低弁済額と清算価値の多い方最低弁済額・清算価値・可処分所得の2年分のうち最も多い額

出典:民事再生法(e-Gov法令検索)221条・230条・231条・239条・240条・241条

債権者の反対が心配な場合は給与所得者等再生を、収入が不安定な場合は小規模個人再生を検討します。違いは小規模個人再生と給与所得者再生の違いで詳しく解説しています。

個人再生の費用はいくら?用意できないとどうなる?

個人再生は、弁護士費用と裁判所費用の両方がかかります。弁護士費用は27.5万〜55万円程度、住宅ローン特則を使う場合は33万〜55万円程度です。

東京地方裁判所に申し立てる場合の裁判所費用は次のとおりです。

  • 申立手数料(収入印紙):1万円
  • 官報公告費用:1万5,120円(中目黒庁舎の窓口で現金納付する場合は1万6,000円)
  • 予納郵便切手:1,990円分に加え、110円切手3枚と、再生債権者数に応じた140円切手2枚
  • 分割予納金:個人再生委員から通知された口座に、指定の期限までに振込み

出典:東京地方裁判所「個人再生手続の申立てに当たって」(PDF)、東京地方裁判所 民事第20部「よくある質問」

裁判所費用は申立て先の裁判所によって違います。弁護士に依頼すると、受任通知で返済が止まっている間に費用を積み立てる分割払いに対応する事務所が多く、依頼した時点で全額を用意できなくても始められます。

費用の内訳と支払う時期は債務整理の費用はいくら?手続き別の相場と内訳・いつ払うか、お金がないときの頼み方はお金がなくても債務整理を頼める?で解説しています。

個人再生を失敗しないためにできることは?

個人再生を失敗しないためには、申立て前に12のケースに当てはまらないかを確かめ、早めに個人再生の経験が多い弁護士に相談することです。

債務整理の経験者100人への調査では、69%が「もっと早く相談すればよかった」と答えました。決断のきっかけで最も多かったのは「毎月の返済が給料や収入を超えていた(45%)」です(債務整理の経験者100人調査)。返済が収入を超える前に相談すると、個人再生の条件である継続的な収入と返済の見込みを保ったまま手続きに入れます。

申立て前に確かめること

  • 住宅ローンを除く借金の総額と、保証人になっている借金
  • 毎月の手取り収入と生活費、返済に回せる金額
  • 預貯金・保険の解約返戻金・車・不動産などの財産
  • 家族や友人など、一部の相手にだけ返していないか

申立て前後にやってはいけない行動は個人再生でやってはいけないこと7選にまとめています。自分に個人再生が合うかどうかは、債務整理シミュレーターで借金額と収入を入れて確かめられます。

個人再生に強い弁護士に依頼する

司法書士は個人再生の代理人になれないため、裁判所とのやり取りまで任せるなら弁護士に依頼します。個人再生の経験が多い弁護士は、債権者一覧表と再生計画案の作成、債権者の反対が予想される場合の事前の調整、履行テストの管理まで対応します。

事務所を選ぶときは、債務整理の経験者1,024人への調査で相談先の決め手の上位2つだった「解決能力・経験値(35.8%)」と「トータル費用(32.0%)」を比べてください(相談先の決め手の調査結果)。

個人再生に失敗したらどうなる?

個人再生が廃止や不認可で終わると、借金は減額されず、元の金額のまま残ります。返済が止まっていた間の遅延損害金も加わり、債権者から一括での返済を求められます。

再生計画不認可が確定すると、確定した債権は債権者表の記載をもとに強制執行でき、給与や預金を差し押さえられることがあります(民事再生法185条)。裁判所が職権で破産手続を始めることもあります(250条)。

失敗した後に取れる方法は次の2つです。

  • もう一度個人再生を申し立てる:民事再生法に回数の制限はありません。ただし、給与所得者等再生は7年以内の利用制限があり、失敗した原因(収入・財産・債権者の反対)が残っていれば同じ結果になります
  • 自己破産を申し立てる:収入が足りずに返済の見込みが立たない場合は、借金の支払い義務をなくす自己破産を検討します

認可された後に返せなくなったら?

再生計画が認可された後に返済が苦しくなったときは、再生計画の変更、ハードシップ免責、自己破産の3つの方法があります。

  • 再生計画の変更:やむを得ない事情で返済が著しく難しくなった場合、裁判所に申し立てて、返済期間を最長2年延ばせます。返済期間が延びる分、毎月の返済額が下がります。

    申し立てた後は、最初の再生計画と同じく、小規模個人再生では債権者の決議、給与所得者等再生では債権者への意見聴取を経て決まります(民事再生法234条)
  • ハードシップ免責:自分の責任ではない事情で返済が極めて難しくなり、再生計画で返す予定の額の4分の3以上をすでに返している場合、残りの返済が免除されることがあります。計画の変更も極めて難しいことが条件です(235条)
  • 自己破産:計画の変更やハードシップ免責が使えず、返済を続けられない場合の方法です

個人再生ができないときは、どの手続きを選ぶ?

個人再生ができない場合は、返せる金額が残っているなら任意整理、返済の見込みが立たないなら自己破産を検討します。

  • 任意整理:借金が比較的少なく、利息をカットすれば3〜5年で返せる場合。裁判所を使わず、収入の条件もありません
  • 自己破産:収入が少なく返済の見込みが立たない場合。借金の支払い義務がなくなる代わりに、一定以上の財産は手放します

4つの手続きの違いは債務整理の種類の比較で一覧にしています。個人再生の仕組みと流れは個人再生とは?仕組み・条件・流れで解説しています。

手続きを決めきれない場合は、弁護士に相談すると、収入と財産から合う手続きを選べます。

個人再生ができないケースに関するよくある質問

ギャンブルや浪費の借金でも個人再生はできる?

できます。自己破産にはギャンブルや浪費を理由に免責が認められないことがある免責不許可事由がありますが、民事再生法にはこれに当たる規定がありません。ただし、財産隠しなど手続きに不誠実な行為があれば認められません。

無職や専業主婦でも個人再生はできる?

自分の収入がなければできません。配偶者に収入があっても、本人に継続的な収入の見込みが必要です。パートやアルバイトで継続して働いていれば、利用できます。

個人再生に失敗したら、もう一度申し立てられる?

申し立てられます。民事再生法に回数の制限はありません。給与所得者等再生だけは、前回の利用などから7年以内は利用できないため、小規模個人再生で申し立てます。

個人再生は司法書士に頼める?

書類の作成は依頼できますが、司法書士は個人再生の代理人になれません。裁判所とのやり取りは本人が行います。手続き全体を任せたい場合は弁護士に依頼してください。

個人再生で家や車は残せる?

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を使えば、住宅ローンを払い続けて家を残せます。ただし、住宅ローンを滞納して保証会社が代わりに返済(代位弁済)した場合、その日から6か月以内に申し立てないと、住宅ローン特則は使えません(民事再生法198条2項)。

ローンを払い終えた車は残せますが、清算価値に入るため返済額が上がることがあります。ローン中の車は、ローン会社に引き揚げられることがあります。

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