
主債務者が返済を止めた、という連絡が債権者から届く。連帯保証人であることを何年も忘れていた人ほど、その一本の電話や一通の封書で状況が一変します。
連帯保証人に、支払い義務そのものを消してくれる抜け道はありません。普通保証人が持っている催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益が、連帯保証人には認められていないからです(民法454条、民法456条)。
ただし、支払い義務がないと主張できる場面、請求額を減らせる場面、契約から外れられる場面は実際に存在します。2020年4月の民法改正で保証人保護の規定が増えたことにより、10年前より争える範囲は広がっています。
この記事では、連帯保証人として請求を受けたときに確認すべき法律上の要件を条文ベースで整理し、支払いを拒否できるケース、契約を解除できるケース、払えないときに取れる手続きまでを順に解説します。
債務整理相談ナビが、請求書が手元にある状態からすぐに対応できるようにまとめました。
連帯保証人に抜け道はあるのか|法律上の答えと、実際に使える6つの選択肢
支払いから逃げるための抜け道はありません。ただし、状況によっては支払い義務そのものを争えたり、請求額を減らせたり、保証人の立場から抜けられたりします。
まず自分がどれに当てはまるかを確認してください。
| こんな状況なら | 確認すること |
|---|---|
| 契約書に自分で署名した覚えがない | 契約が成立していない可能性があります |
| 会社や事業の借入の保証人で、公証役場に行った記憶がない | 契約が無効の可能性があります(2020年4月以降の契約) |
| 賃貸や継続取引の保証で、契約書に上限額の記載がない | 契約が無効の可能性があります(2020年4月以降の契約) |
| 5年以上、誰も返済していない | 時効を主張できる可能性があります |
| 主債務者の滞納を、最近になって初めて知らされた | 知らされずにいた期間の延滞金を、支払わずに済む可能性があります |
| 主債務者に返済能力が残っている | 債務者が完済するか借り換えができれば、保証は終わります(債務整理では終わりません) |
| どれにも当てはまらない | 分割交渉か、自分自身の債務整理を検討します |
いずれも隠れた裏技ではなく、条文と交渉で成り立っている手段です。自分がどれに当てはまるかを見極めるところから始まります。
なぜ連帯保証人は支払いを断れないのか|普通保証人との違い
連帯保証人が不利と言われる理由は、普通保証人に認められている3つの権利が民法454条で外されている点にあります。
| 権利 | 普通保証人 | 連帯保証人 |
|---|---|---|
| 催告の抗弁権(民法452条)まず主債務者に請求するよう求められる | ○ | × |
| 検索の抗弁権(民法453条)主債務者の財産から先に取り立てるよう求められる | ○ | × |
| 分別の利益(民法456条)保証人が複数いれば人数で割った額のみ負担する | ○ | × |
普通保証人であれば、債権者から請求されても主債務者への取り立てを先に求められます。主債務者に資力があれば、保証人まで請求が来ないまま完済されることもあります。
連帯保証人にはその段階がありません。主債務者が支払える状態でも、債権者は連帯保証人に直接、全額を請求できます。保証人が3人いても、そのうちの1人に全額を請求することが可能です。
制度上の違いは保証人と連帯保証人の違いをわかりやすく|責任範囲を比較表で整理で詳しく扱っています。
連帯保証人が支払いを拒否できるケース・できないケース
原則として拒否できない3つの条件
次の3つがそろっている場合、請求された全額を支払う義務があります。
- 有効に連帯保証契約を結んでいる
- 主債務の時効が完成していない
- 主債務者が返済を怠っている
この状態で「主債務者にまだ財産があるはずだ」「保証人になったつもりはなかった」と主張しても、法律上の支払い拒否理由にはなりません。
一方、以下のいずれかに当てはまる場合は、支払い義務そのものを争える余地があります。
署名・押印が本人のものでない場合
契約書の署名が偽造されていた、印鑑を無断で使われていた場合、連帯保証契約は成立していません。この場合に問われるのは、筆跡や押印の経緯、契約時に本人が同席していたかどうかです。
家族が勝手に名前を書いていたケースは相談として珍しくありません。詳しい判断基準は保証人に勝手にされたら?支払いを求められた時の対処と「無効」になる条件で整理しています。
事業の借入なら、公正証書がなければ無効になる(民法465条の6)
見落とされやすいのがこの規定です。2020年4月1日以降に締結された契約で、事業のために負担した貸金等債務を個人が保証する場合、契約締結日の前1か月以内に公証役場で保証意思宣明公正証書を作成していなければ、保証契約は効力を生じません(民法465条の6)。
日本公証人連合会は、公証人が保証予定者と直接面談し、主債務の内容と保証人になることのリスクを理解しているかを確認したうえで公正証書を作成する手続きだと説明しています(日本公証人連合会「保証意思宣明公正証書」)。作成手数料は保証契約1件につき原則1万1000円です。
友人や親戚の会社の借入に名前を貸しただけで、公証役場に行った記憶がないなら、契約が無効である可能性があります。
ただし次の場合はこの手続きが不要とされているため、無効主張はできません。
- 保証人が個人ではなく会社(法人)である場合
- 借入をしたのが会社で、その会社の取締役や、議決権の過半数を持つ株主が保証人になる場合
- 借入をしたのが個人事業主で、その共同事業者、または実際にその事業で働いている配偶者が保証人になる場合
いずれも、事業の内情を把握できる立場にある人です。何も知らされないまま名前を貸してしまう人を守るための規定なので、こうした立場の人は対象から外されています。
主債務者が財産状況を偽っていた場合(民法465条の10)
事業のために負担する債務の保証を個人に委託する場合、主債務者は保証を頼む相手に対して、財産と収支の状況、他の債務の額と履行状況、他に提供している担保の内容を伝える義務を負います。
主債務者がこれらを提供しなかったか虚偽を伝えたために保証人が事実を誤認し、そのことを債権者が知っていたか知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せます(民法465条の10)。
「借金は他にない」と言われて名前を貸したが、実際には多額の債務が先にあった。こうした場合に検討する余地があります。債権者側の認識まで問われるため、契約時のやり取りの記録が残っているかが分かれ目になります。
個人根保証で極度額の定めがない場合(民法465条の2)
個人が根保証契約を結ぶ場合、書面に極度額(上限額)が定められていなければ契約は無効です(民法465条の2)。2020年4月1日以降に結んだ契約に適用されます。
対象になりやすいのは、賃貸借契約の連帯保証、継続的な取引の保証、身元保証、介護施設の入居契約の保証です。契約書に上限額の記載がないか確認してください。
なお2020年3月31日以前に結んだ契約には適用されないため、古い契約では使えません。
主債務の時効が完成している場合
消費者金融やカードローンであれば最終返済日の翌日から5年、個人間の貸金なら5年または10年で時効期間に達します。主債務の時効が完成すれば、保証債務もあわせて消滅します。
期間が過ぎているだけでは債務は消えず、時効の援用という意思表示が必要です。
手順は時効の援用とは?意味・期間(5年/10年)と費用、信用情報を解説と時効援用のやり方|自分で送る手順と通知書テンプレ(内容証明+配達証明)で解説しています。
請求額そのものを減らせる可能性がある2つのルール
支払い義務が残る場合でも、請求額を精査すると減る余地があります。2020年4月施行の改正民法で新設された2つの規定です。
期限の利益喪失の通知が2か月以内になかった場合(民法458条の3)
主債務者が期限の利益を失ったとき、債権者は保証人に対し、その事実を知った時から2か月以内に通知しなければなりません(民法458条の3)。
この通知を怠った場合、債権者は期限の利益喪失時から実際に通知するまでに発生した遅延損害金について、保証人に支払いを請求できません。保証人が法人の場合は適用されません。
主債務者が半年前に延滞を始めていたのに、連帯保証人には昨日はじめて連絡が来た。このような場合、その間の遅延損害金が請求額から外れる可能性があります。
請求書に記載された内訳のうち、元本・利息・遅延損害金の内訳と、債権者が延滞を把握した時期を確認する価値があります。
債権者に残額と履行状況を開示させる(民法458条の2)
主債務者から委託を受けて保証人になった場合、保証人が請求すれば、債権者は主債務の元本・利息・違約金・損害賠償の残額と、履行遅滞の有無を遅滞なく回答しなければなりません(民法458条の2)。
請求額の根拠がわからないまま支払いに応じる必要はありません。この規定を使って内訳を出させたうえで、金額の妥当性を判断できます。
連帯保証人から外れる・契約を解除する方法
連帯保証契約は債権者と連帯保証人の間の契約です。保証人の一方的な意思では解除できず、債権者に「やめます」と伝えても契約は続きます。外れるには債権者の同意が要ります。
| 方法 | 誰の協力が必要か | 実現しやすさ |
|---|---|---|
| 代わりの連帯保証人を立てる | 主債務者・債権者・新しい保証人 | 資力次第 |
| 不動産などの物的担保を差し入れる | 主債務者・債権者 | 担保があれば可能性あり |
| 主債務者が他の金融機関で借り換える | 主債務者・新しい金融機関 | 主債務者の信用次第 |
| 主債務者が完済する | 主債務者 | 完済すれば自動的に消滅 |
| 契約の無効・取消を主張する | 不要(法的主張) | 要件に当てはまるかによる |
| 主債務の時効を援用する | 不要(法的主張) | 承認行為がなければ可能 |
代わりの保証人か担保を用意して債権者と交渉する
債権者は担保として保証人を取っています。同等かそれ以上の担保が用意できれば、外してもらえる可能性があります。代わりの連帯保証人を立てるか、不動産などを担保として差し入れるのが典型的なパターンです。
金融機関では新しい保証人の収入・資産・年齢が審査されます。収入があっても年齢が高いと認められないことがあります。
この交渉には主債務者の協力が欠かせません。主債務者が動かなければ、いくら代替案を用意しても契約は変わりません。
主債務者に借り換えをしてもらう
主債務者が別の金融機関でローンを組み直せば、元の借入は完済され、元の保証契約も消滅します。新しい契約に連帯保証人として名前を入れなければ、そこで責任は終わります。
離婚時に配偶者を連帯保証人から外す方法として使われることの多い手段です。ただし主債務者の信用情報に問題があれば借り換え自体が通りません。
主債務者が完済する
主債務が消滅すれば保証債務も消滅します。連帯保証人から外れる方法として最も確実なのはこれです。
注意したいのは、主債務者が債務整理をしても保証人の負担は軽くならない点です。主債務者が自己破産して免責を受けても、保証債務は消えません。
それどころか期限の利益が失われ、残債の全額を一括で請求されるのが通常です。個人再生で主債務者の返済額が圧縮された場合も、連帯保証人が請求されるのは圧縮前の全額です。
主債務者が債務整理を検討しているという話が出た時点で、連帯保証人には一括請求が近づいていると考えて動いたほうが安全です。
離婚しても住宅ローンの連帯保証は自動では外れない
離婚協議書に「住宅ローンは夫が支払う」と書いても、金融機関との関係では意味を持ちません。連帯保証契約の当事者は金融機関と保証人であり、夫婦間の取り決めは金融機関を拘束しないためです。
外れるには、金融機関の同意を得て代わりの担保を入れるか、元配偶者に単独名義で借り換えてもらうしかありません。離婚から何年経っても、元配偶者が滞納すれば請求は届きます。
賃貸物件の連帯保証人を辞めたい場合
賃貸借契約の連帯保証も、貸主の同意なしには解除できません。実務上は、別の連帯保証人を立てるか、保証会社の利用に切り替えてもらうかたちで交渉することになります。
2020年4月1日以降に結んだ契約であれば、極度額の記載があるかを確認してください。個人根保証契約にあたるため、極度額の定めがなければ契約自体が無効です。契約更新のタイミングで保証会社に切り替える例も増えています。
「◯年経てば自動的に外れる」制度はない
契約から一定期間が経過すれば連帯保証人でなくなる、という規定は民法にありません。主債務が続く限り、保証債務も続きます。
なお連帯保証人が亡くなった場合、保証債務は相続の対象になり、相続人が法定相続分に応じて引き継ぎます。引き継ぎたくない場合は、相続の開始を知った時から3か月以内に相続放棄を検討することになります。
支払いを拒否して放置するとどうなるか
払えないからと請求を放置すると、段階的に状況が悪化します。
段階1:督促状・催告書が届く
電話と郵便で支払いを求められる段階です。この時点では法的な強制力はありません。ここで内訳の開示を求め、時効や無効を主張できないか確認する時間が取れます。
書面の見分け方は督促状を無視するとやばい?差し押さえ・裁判に進む前に知っておきたいことと催告書とは?読み方・届いたときの対処法と督促状との違いをわかりやすく解説にまとめています。
段階2:信用情報に事故情報が登録される
保証人として支払いを求められ、それに応じない状態が続くと、信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に事故情報が登録されます。クレジットカードの新規発行、ローン契約、賃貸保証会社の審査に影響します。
登録期間の目安は債務整理のブラックリストはいつからいつまで?解除される(消える)タイミングと確認方法も解説で確認できます。
段階3:訴訟・支払督促・差押え
放置が続けば、債権者は裁判所を通じて支払督促または訴訟を起こします。裁判所からの書類を受け取った時点で、異議申立てや答弁書の提出期限は2週間です。
これを逃すと判決や仮執行宣言が確定し、給与・預貯金・不動産が差押えの対象になります。
最高裁判所が公表する令和6年司法統計年報によれば、地方裁判所での「債権及びその他の財産権に対する強制執行」既済件数は153,272件にのぼり、そのうち判決を債務名義とするものが84,692件、支払督促を債務名義とするものが49,975件を占めています(最高裁判所 令和6年司法統計年報 民事・行政編 第103表)。差押えは例外的な事態ではありません。
支払督促が届いた場合の書き方は督促異議申立書の書き方・記入例|支払督促が届いたら2週間でやることを参照してください。
払えないときに取れる4つの対処法
支払い義務があり、一括では払えない。この場合に現実的な選択肢は4つです。
債権者との分割交渉
一括では無理でも、分割払いに応じてもらえることがあります。債権者にとっても、訴訟費用をかけて差押えをするより、確実に回収できる分割のほうが合理的な場合があるためです。
ただし交渉次第で不利な条件を受け入れてしまうこともあります。回数・毎月の額・遅延損害金の扱いを書面で確認したうえで合意してください。
任意整理
主債務者がすでに任意整理や破産をしている場合でも、連帯保証人が自分の名義で任意整理を行えます。将来利息をカットし、分割返済の条件を債権者と直接交渉する手続きです。
仕組みと費用は任意整理とは?メリット・デメリットと流れ・期間・費用の目安で解説しています。
個人再生
住宅ローンを支払い中の自宅を残したい場合や、保証債務の額が大きく任意整理では返しきれない場合の選択肢です。裁判所を通じて負債を大幅に圧縮し、原則3年で分割返済します。
対応事務所の比較は個人再生に対応している弁護士事務所を確認するからご覧いただけます。
自己破産
保証債務を含めた負債総額が大きく、返済の見込みが立たない場合の手続きです。連帯保証債務は非免責債権にあたらないため、免責の対象になります。
手続きの流れと費用は自己破産に対応している弁護士事務所を確認するで整理しています。
自分が主債務者として債務整理をする側で、自分の連帯保証人への影響を心配している場合は自己破産をすると連帯保証人にどんな影響が出る?迷惑をかけない対処法は?をご確認ください。
請求が届いたときにやってはいけない5つのこと
対応を誤ると、使えたはずの選択肢が消えます。次の5つは避けてください。
- 少額でも返済してしまう:一部でも支払うと債務を承認したことになり、時効期間がリセットされます
- 電話で「分割で払います」と口約束する:口頭でも債務の承認にあたる場合があります
- 内容を確認せず債務承認書にサインする:時効の主張ができなくなります
- 裁判所からの書類を放置する:2週間の異議申立期限を過ぎると、内容を争えないまま判決が確定します
- 請求額の内訳を確認せずに支払う:民法458条の3により減額できる遅延損害金が含まれている可能性があります
時効に関する具体的な失敗パターンは時効の援用の失敗例3つ|自分でやる前の注意点と対処法にまとめています。
また、2010年以前の借入が含まれる場合、主債務に過払い金が発生していて残債が減るか消えていることもあります。仕組みは過払い金請求のからくり・仕組みは?デメリットと対象時期(2010年以前)も解説で解説しています。
連帯保証人の支払いに関するよくある質問
まとめ|抜け道はないが、確認すべき条文は複数ある
| 論点 | 確認すること |
|---|---|
| 支払い義務を消す抜け道 | 存在しない(催告・検索の抗弁権なし、分別の利益なし) |
| 契約の無効 | 署名の偽造、事業融資での公正証書の欠如(民法465条の6)、個人根保証での極度額の欠如(民法465条の2) |
| 契約の取消 | 詐欺・強迫・錯誤、主債務者の情報提供義務違反(民法465条の10) |
| 時効の援用 | 主債務の時効が完成していれば保証債務も消滅 |
| 請求額の減額 | 期限の利益喪失の通知が2か月以内になかった場合の遅延損害金(民法458条の3) |
| 契約から外れる | 一方的には不可。代替担保・借り換え・完済のいずれかで債権者の同意を得る |
| 払えない場合 | 分割交渉、任意整理、個人再生、自己破産 |
請求が届いた段階で無視する、口頭で分割を約束する、内訳を見ずに一部を支払う。この3つは、使えたはずの主張を自分から消してしまいます。
まず契約書・請求書・最終返済日を手元に集め、どの論点に当てはまるかを整理してください。そのうえで専門家に相談すれば、判断は早く進みます。
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