
自己破産は、原則として本人(主債務者)の借金を対象とする手続きです。しかし、連帯保証人がついている借金があると話は別で、主債務者が支払わなくなった分は、そのまま連帯保証人へ請求されます。
先に結論をお伝えすると、主債務者が自己破産をしても連帯保証人の返済義務はなくならず、債権者は連帯保証人へ残債の一括請求をしてきます。これは自己破産に限らず個人再生でも同じで、手続きの選び方によって連帯保証人への影響は大きく変わります。
この記事では、任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれで連帯保証人にどう影響するか、請求されたときの対処法、そして人間関係を壊さずに進めるための方法までを整理します。連帯保証人つきの借金を抱えていて、迷惑を最小限にとどめたい方はご確認ください。
なお、連帯保証人と保証人では影響や対処法はほとんど同じため、以下の解説は基本的に両者に共通するものとお読みください。両者の違いは保証人と連帯保証人の違いは?で整理しています。
債務整理の種類ごとに連帯保証人への影響は変わる
連帯保証人への影響は、どの債務整理手続きを選ぶかで大きく異なります。まず全体像を確認してください。
| 手続き | 連帯保証人への影響 | 対象の借入先を選べるか |
|---|---|---|
| 任意整理 | 影響を及ぼさずに済むケースが多い | 選べる(保証人つきの借金を外せる) |
| 個人再生 | 返済義務が移り、残債を一括請求される可能性 | 選べない(すべての借入先が対象) |
| 自己破産 | 返済義務が移り、残債全額を請求される | 選べない(すべての借入先が対象) |
ポイントは「対象にする借入先を選べるかどうか」です。任意整理だけは対象を選べるため、連帯保証人つきの借金を外して手続きすれば、連帯保証人に影響が及ばないようにできます。
一方、個人再生と自己破産は原則としてすべての借入先が対象になるため、連帯保証人つきの借金も外せず、連帯保証人に請求が及びます。
それぞれの手続きの内容は債務整理とは?種類ごとのメリット・デメリット、4種類の比較と選び分けで確認できます。
自己破産をすると連帯保証人はどうなる?
自己破産は、裁判所に申し立てをして、ほとんどすべての借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。連帯保証人への影響という点では、3つの手続きの中で最も重くなります。仕組みの詳細は自己破産とは?をご覧ください。
連帯保証人に残債の一括請求が及ぶ
自己破産は個人再生と同様、対象にする借入先を選べません。主債務者が自己破産をすると、連帯保証人つきの借金も免除の対象にせざるを得ないため、連帯保証人の支払い義務が現実のものになります。
債権者は、連帯保証人や保証人に対して残債務の一括請求をしてきます。多くの場合は遅延損害金も加算されるため、請求額は当初の借入額より大きくなることがあります。
連帯保証人の借金は免除されない
主債務者が自己破産で免責を受けても、連帯保証人の責任までは免除されません。破産法253条2項は、免責許可の決定は「破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利……に影響を及ぼさない」と定めています(出典:破産法253条(e-Gov法令検索))。
むしろ主債務者の責任がすべて免除される分、連帯保証人や保証人は残った借金の全額を返済しなければならない状態になります。主債務者が個人再生をするとき以上に、連帯保証人の負担が重くなると考えてください。
連帯保証人も「債権者」になる(求償権)
自己破産の場合も、連帯保証人や保証人は主債務者に対する「債権者」の立場になります。連帯保証人が主債務者の代わりに支払いをすれば、その分を主債務者へ請求(求償)できるからです。
そのため、連帯保証人のもとには主債務者の申立代理人(弁護士)や裁判所から「債権調査票」が届きます。保証債務の明細を記入して返送しておきましょう。届け出をしておかないと、将来支払いをしたときに求償できなくなる可能性があります。
ただし、主債務者が自己破産で免責を受けると、この求償権も完全に免除されます。つまり連帯保証人が支払っても主債務者から取り戻すことはできず、支払った分は戻ってこない点に注意が必要です。
個人再生をすると連帯保証人はどうなる?
個人再生は、裁判所に申し立てをして借金を大幅に減額してもらう手続きです。借金が5分の1〜10分の1程度まで減額されることもあります。仕組みは個人再生とは?で解説しています。
減額されるのは主債務者だけ
個人再生では「債権者平等の原則」が適用されるため、任意整理と違って対象にする借入先を選べません。すべての借入先を平等に扱う必要があるため、連帯保証人つきの借金だけを外すことは認められず、連帯保証人つきの借金も減額の対象になります。
その結果、個人再生をすると借金の返済義務は連帯保証人へ移ります。このとき、主債務者の借金は減額されますが、連帯保証人の借金は減額されません。それどころか、主債務者が支払わなくなったことで、債権者が連帯保証人へ「残債の一括請求」をしてくる可能性があります。
たとえば主債務者の借入額が300万円で、個人再生によって100万円に減額されたとしても、債権者は連帯保証人に対して300万円(および契約上の遅延損害金)を一括請求できます。減額の効果が及ぶのはあくまで主債務者だけ、という点を押さえておいてください。
民事再生法177条2項は、再生計画は「再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利……に影響を及ぼさない」と定めており、再生計画による減額の効果は連帯保証人には及びません(出典:民事再生法177条(e-Gov法令検索))。
求償権も制限される
個人再生の場合も連帯保証人は主債務者に対する債権者になりますが、主債務者の負担額が減額される分、全額の求償はできなくなります。
たとえば当初の借金が500万円で、個人再生によって100万円に減額された場合、連帯保証人が500万円全額を支払っても、主債務者へ求償できるのは減額後の100万円が限度です。
個人再生後に連帯保証人が支払うときは、求償権も制限されることを理解しておきましょう。
任意整理なら連帯保証人に影響を及ぼさずに済む
任意整理は、借入先と個別に交渉して返済方法を決め直す手続きです。将来の利息をカットしてもらい、支払い可能な範囲に負担を減らします。詳しくは任意整理とは?をご覧ください。
任意整理では、連帯保証人に影響が及ばないケースが多数を占めます。その理由は、任意整理だけは「対象にする借入先を選べる」からです。
連帯保証人つきの借金を外して手続きする
連帯保証人がついている借金を対象から外して任意整理すれば、返済義務が連帯保証人に及ぶことはありません。
たとえば奨学金を借りていて親などの親族が保証人になっている場合、奨学金を外して、カードローンや消費者金融など保証人のいない借金だけを任意整理すれば、親に迷惑をかけずに済みます(自己破産をすると奨学金はどうなる?保証人への影響)。
反対に、間違えて連帯保証人つきの借金を対象に含めてしまうと、連帯保証人へ請求が及んでしまいます。どの借入先を対象にするかは、必ず弁護士や司法書士と確認しながら進めてください。
連帯保証人が一括請求されたときの対処法
主債務者の個人再生・自己破産によって、連帯保証人が債権者から一括請求を受けたとき、取れる対処法は主に2つあります。
対処法1:分割払いを交渉する
一定の支払い能力がある方なら、まず債権者と分割払いの交渉をしましょう。債務整理前の支払い額と同等かそれ以上の額を払えるのであれば、多くの場合、債権者は分割払いに応じてくれます。
相手が住宅ローンの保証協会や貸金業者の場合、応じてもらえるケースは少なくありません。特に連帯保証人が高齢・低所得などの事情があると、払える範囲での分割に応じてもらいやすい傾向があります。
分割払いを続けられている間は、一括請求をされずに済みます。主債務者の支払額と連帯保証人の支払額の合計で借金を完済できれば、その時点で支払いは終了します。
対処法2:連帯保証人自身も債務整理する
連帯保証人にも支払い能力がない場合は、連帯保証人自身が債務整理を検討することになります。手続きは任意整理・個人再生・自己破産の3種類があり、主債務者と同じ手続きでも、異なる手続きでもかまいません。自分にもっとも適した方法を選べます。
- 任意整理・個人再生:今ある財産は原則として残せます。借金が300万円程度までで一定の支払い能力がある方は任意整理、借金額が大きい方や住宅ローン返済中の方は個人再生が向いています。
- 自己破産:一定以上の財産は失いますが、支払い義務はなくなります。財産がほとんどない方や、高齢・低所得で支払い能力のない方に向いています。
なお、連帯保証人の債務整理は主債務者と同時に行う必要はありません。しばらく分割払いを続けてみて、どうしても難しい場合に手続きを検討する、という進め方もできます。手続きの選択やタイミングに迷ったときは、弁護士や司法書士に相談してください。
連帯保証人への迷惑を最小限にする進め方
主債務者が個人再生や自己破産をすると、連帯保証人に請求が及ぶのは避けられません。それでも、伝え方と進め方しだいで人間関係への影響は小さくできます。
事前に事情を伝えておく
連帯保証人がいる状態で個人再生や自己破産をするなら、必ず事前に連帯保証人へ連絡を入れましょう。何も知らされないまま、いきなり債権者から督促を受ければ、連帯保証人は驚き、主債務者へ強い不信感を抱きます。
人間関係が壊れてトラブルになるケースは少なくありません。
まずは連絡をして、なぜ債務整理が必要なのか、それによって連帯保証人にどのような影響が及ぶのか、どう解決できるのか(分割払いや債務整理など)を伝えてください。
なお、家族に知られずに進められるかどうかは手続きの種類や状況によって異なります。詳しくは債務整理は家族にバレる?で整理しています。
希望があれば一緒に相談する
連帯保証人が希望するなら、一緒に債務整理を進めましょう。人間関係を壊したくないなら、弁護士・司法書士を紹介し、一緒に相談へ行くのも一つの方法です。連
帯保証人が安心して手続きを進められるよう配慮すれば、悪影響を最小限にとどめやすくなります。
支払ってもらった分を任意で返す
連帯保証人が主債務者の代わりに支払った場合、それを返す義務があるかはケースバイケースです。主債務者が自己破産をした場合は返す義務はなく、個人再生の場合も支払額によっては一部返す義務が生じますが、全額を返す必要はありません。
ただし、どちらの場合でも、主債務者が「任意に」連帯保証人へ返すのは自由です。自己破産後に連帯保証人が支払ってくれたお金を、何年かかけて返しても違法ではありません。
できる範囲でお返しすれば誠意も伝わり、迷惑を最小限にとどめられます。「債務整理をしたら終わり」ではなく、迷惑をかけたら挽回する方法も考えてみてください。
よくある質問(連帯保証人と債務整理)
保証人と連帯保証人では、どちらが責任が重いですか?
連帯保証人のほうが責任は重くなります。単なる保証人には「まず主債務者に請求してほしい」と主張できる権利(催告の抗弁権・検索の抗弁権)がありますが、連帯保証人にはこれがありません。
そのため、主債務者に支払い能力があるかどうかに関わらず、債権者は連帯保証人へ直接請求できます。詳しくは保証人と連帯保証人の違いをご覧ください。
配偶者(妻・夫)が連帯保証人の場合はどうなりますか?
配偶者だからといって扱いが変わることはありません。
配偶者が連帯保証人になっている借金を主債務者が自己破産・個人再生で整理すれば、配偶者へ残債の請求が及びます。
反対に、配偶者が連帯保証人になっていない借金であれば、原則として配偶者に返済義務は生じません。まず、どの借金に誰が連帯保証人としてついているかを確認することが出発点になります。
連帯保証人になっている自分が支払えない場合はどうすればいいですか?
分割払いの交渉を試み、それでも難しい場合は、連帯保証人自身が債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)を検討することになります。
連帯保証人である以上、支払いを拒否したり抜け道を探したりすることはできないため、払えないなら早めに法律家へ相談するのが現実的です。詳しくは連帯保証人は支払いを拒否できる?で解説しています。
主債務者が自己破産すれば、連帯保証人の分も免除されますか?
免除されません。
自己破産の免責は、あくまで主債務者本人の支払い義務を対象とするものです。連帯保証人の返済義務は残るため、連帯保証人が自身の借金を整理したい場合は、連帯保証人本人が別途債務整理をする必要があります。
身に覚えがないのに連帯保証人にされていた場合は?
書類が届いても、実際には署名・押印していないなど、本当に連帯保証人になっていないのであれば、「連帯保証人にはなっていない」旨を債権者へはっきり伝えましょう。
詳しくは連帯保証人に勝手にされたら?をご確認ください。
まとめ
主債務者の債務整理が連帯保証人に与える影響は、手続きの種類によって次のように変わります。
| 手続き | 連帯保証人への影響 | 迷惑をかけない主な方法 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 影響を及ぼさずに済むことが多い | 連帯保証人つきの借金を対象から外す |
| 個人再生 | 返済義務が移り、減額されない残債を請求される | 事前に伝える/一緒に手続きを検討する |
| 自己破産 | 返済義務が移り、残債全額を請求される | 事前に伝える/一緒に手続きを検討する |
連帯保証人つきの借金がある場合、どの手続きを選ぶか、どの借入先を対象にするかで結果が大きく変わります。判断を誤ると連帯保証人に思わぬ請求が及ぶため、自己判断で動く前に、まずは弁護士・司法書士に相談して状況を整理することをおすすめします。
自己破産を検討していて、費用や実績をもとに相談先を比較したい方は自己破産に強い弁護士・司法書士を費用相場と選び方で比較する、債務整理全般の相談先を探したい方は債務整理の相談先を探すもあわせてご覧ください。
