
自己破産を考えるとき、「年金が差し押さえられてしまうのか」「将来もらえる年金が減るのではないか」と不安に感じる人は少なくありません。
結論から言えば、自己破産をしても、国民年金や厚生年金などの公的年金を受け取る権利は法律で守られており、原則として差し押さえられることはありません。受給額が減ることもなく、すでに年金を受け取っている人が自己破産をしても、年金の支給は止まりません。
ただし、税金や社会保険料を滞納している場合や、年金が振り込まれた預金口座については扱いが異なるため、注意が必要です。
自己破産を経験した50歳以上の100人への調査でも、「年金受給額に影響はなかった」が48.0%を占め、年金そのものへの影響を実感した人は少数でした。実態データの詳細は自己破産でも年金は原則影響なし—50歳以上経験者100人調査で紹介しています。
この記事では、自己破産で年金がどうなるのか、差し押さえの可否と例外、iDeCoや個人年金の扱い、年金受給者の自己破産までをわかりやすく解説します。
なお、自己破産そのものの条件や流れを先に確認したい場合は、自己破産とは?条件・流れ・デメリット・費用までわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
自己破産しても公的年金は差し押さえられない
自己破産をしても、国民年金や厚生年金などの公的年金を受け取る権利は守られます。これは、年金を受け取る権利が法律で保護されているためです。
国民年金法第24条は、年金を含む給付を受ける権利について「譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない」と定めています。厚生年金保険法第41条にも、保険給付を受ける権利について同じ趣旨の規定があります。
つまり、借金を返せずに自己破産をしても、債権者が年金の受給権を差し押さえて回収に充てることはできません。年金は、老後や障害、死亡といったリスクに備えて生活を支えるためのものであり、法律によって手厚く保護されています。
出典:国民年金法 第24条(e-Gov法令検索)/厚生年金保険法 第41条(e-Gov法令検索)
自己破産で年金の受給額は減らない・将来の年金にも影響しない
自己破産をしても、年金の受給額が減ることはありません。また、将来受け取れる年金の金額や受給資格にも影響しません。
差し押さえが禁止されているのは「年金を受け取る権利」そのものです。そのため、すでに年金を受給している人はこれまでどおりの額を受け取り続けられますし、まだ受給していない人も、将来の受給額が自己破産によって減らされることはありません。
自己破産は、あくまで「借金の返済義務」を免除する手続きであり、年金制度への加入記録や納付実績を消すものではありません。これまで納めてきた保険料に応じた年金は、自己破産後もそのまま受け取れます。
年金を受給中でも自己破産はできる
すでに年金を受け取っている人でも、自己破産はできます。年金受給者であることが、自己破産の妨げになることはありません。
前述のとおり、年金の受給権は差し押さえの対象外であり、自己破産をしても支給は止まりません。年金収入があること自体が、自己破産の手続きを不利にすることもありません。
実際、自己破産を経験した50歳以上への調査では、「年金受給額に影響はなかった(48.0%)」「手続き当時はまだ受給前だった(33.0%)」を合わせて8割以上が、年金の受給そのものに影響を感じていませんでした。

自己破産で年金が差し押さえられる例外
公的年金は原則として差し押さえられませんが、例外もあります。次の2つのケースでは、年金が差し押さえの対象になることがあります。
税金・社会保険料を滞納している場合
国民年金法第24条や厚生年金保険法第41条には、「国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない」というただし書きがあります。
つまり、税金や社会保険料を滞納している場合、その滞納処分として年金が差し押さえられる可能性があります。さらに、税金や社会保険料は自己破産をしても支払い義務が残る「非免責債権」にあたるため、自己破産で借金が整理されても、滞納分の支払い義務はなくなりません。
税金や社会保険料の滞納がある場合は、放置せず、早めに役所の窓口で分割納付や猶予の相談をすることが大切です。
年金が振り込まれた預金口座
差し押さえが禁止されているのは「年金を受け取る権利」です。年金が指定の口座に振り込まれた後は、法律上は「預金」として扱われるため、理論上は差し押さえの対象になり得ます。
ただし、自己破産では、当面の生活に必要な現金や預貯金は「自由財産」として手元に残せる仕組みがあります。自由財産とは、自己破産後の生活維持のために手元に残せる財産のことです。
年金が振り込まれた預金についても、自由財産の範囲であれば手元に残せるケースが多くあります。自由財産の範囲は、自己破産しても残せる財産とは?自由財産の範囲をわかりやすく解説で詳しく整理しています。
なお、年金の受取口座が借入のある銀行の場合、手続きに伴い口座が凍結され、引き出しができなくなる可能性があります。受取口座の変更を含めた対処は自己破産したら銀行口座はどうなる?凍結の仕組みと対処法をご覧ください。
iDeCo・企業年金・個人年金は自己破産でどうなる?
「年金」と呼ばれるものには、公的年金のほかにもいくつか種類があり、自己破産での扱いが異なります。
iDeCo・確定拠出年金は差し押さえられない
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型の確定拠出年金は、自己破産をしても原則として差し押さえられません。
確定拠出年金法第32条は、「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない」と定めています。そのため、積み立てた資産は差押禁止財産として守られ、破産管財人による処分の対象にもなりません。
ただし、税金の滞納処分による差押えは例外です。また、年金や一時金として受け取って口座に振り込まれた後は、通常の財産として扱われる点に注意が必要です。出典:確定拠出年金法 第32条(e-Gov法令検索)
確定給付企業年金・国民年金基金も守られる
確定給付企業年金(確定給付企業年金法第34条)や国民年金基金についても、受給権は差し押さえが禁止されています。これらも自己破産によって受給権が失われることはありません。
個人年金保険は処分対象になることがある
注意したいのが、保険会社と契約する「個人年金保険」です。これは公的年金やiDeCoとは異なり、自己破産では財産として扱われる場合があります。
個人年金保険は、生命保険などと同じく「解約返戻金」が発生する商品が多く、返戻金額によっては換金できる財産として処分対象になることがあります。
扱いの考え方は生命保険と共通するため、詳しくは自己破産したら生命保険はどうなる?解約返戻金と免責・残し方を解説もあわせてご確認ください。
年金から返済していた場合は自己破産で負担が止まる
年金収入を生活費だけでなく借金の返済にあてていた人にとっては、自己破産が生活の立て直しにつながります。
年金そのものが差し押さえられて返済に充てられるわけではありませんが、年金を原資に毎月の返済を続けていた場合、その返済の負担が手元の年金を圧迫します。自己破産で借金の返済義務がなくなれば、年金を返済に回す必要がなくなり、生活費として使えるようになります。
前述の調査でも、「年金から強制返済が引かれていたが止まった」と回答した人が2.0%いました。年金を返済にあてていた状態から解放され、自己破産がむしろ暮らしの安定につながったケースといえます。

自己破産後の老後の生活設計は相談先選びが重要
ここまで見てきたとおり、自己破産は年金の受給そのものに大きな影響を与えません。一方で、自己破産を経験した50歳以上への調査では、別の不安が浮かび上がっています。
老後の不安として最も多かったのは「年金だけで生活できるか(41.0%)」でした。年金が受け取れるかどうかより、年金を含めた老後の家計が成り立つかという、将来の生活設計に不安が集まっています。
年金収入だけで生活費をまかなうのが難しい場合は、生活保護という選択肢もあります。詳しくは生活保護を受けていても自己破産できる?費用やデメリット、手続きの流れも解説をご確認ください。

さらに、相談時に年金や老後の生活設計について「まったく説明を受けなかった」と回答した人が35.0%にのぼりました。手続き自体は年金に影響しなくても、その先の老後の暮らしまで見据えて相談できるかどうかは、相談先によって差があります。
自己破産は手続きを終えることがゴールではなく、その後の生活を立て直すための手段です。老後の生活設計まで相談できる相談先を選ぶことが、安心につながります。
相談先を費用や対応で比べたい場合は、自己破産の相談先を比較するをご覧ください。
まとめ:自己破産と年金の扱い
| 年金の種類・状況 | 自己破産での扱い |
|---|---|
| 国民年金・厚生年金(公的年金) | 受給権は守られ、差し押さえ不可。受給額も減らない |
| iDeCo・確定拠出年金・確定給付企業年金・国民年金基金 | 差押禁止財産として守られる |
| 個人年金保険(保険会社と契約) | 解約返戻金が財産として処分対象になることがある |
| 年金が振り込まれた預金口座 | 預金として扱われ、自由財産の範囲を超えると対象になり得る |
| 税金・社会保険料の滞納がある場合 | 滞納処分により例外的に差し押さえられることがある |
自己破産をしても、公的年金やiDeCoの受給権は法律で守られ、原則として差し押さえられることはありません。受給額が減ることもなく、年金受給者でも自己破産はできます。
注意が必要なのは、税金・社会保険料を滞納している場合、年金が振り込まれた後の預金、そして公的年金とは扱いの異なる個人年金保険です。
年金そのものより、自己破産後の老後の生活設計をどう立て直すかが本当の課題です。その点まで相談できる相談先を選ぶことが、自己破産後の安心した暮らしにつながります。
よくある質問
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