自己破産したら車はどうなる?ローン中の扱いと残せるケースを解説

自己破産したら車はどうなる?
執筆:大泉 聡(弁護士・司法書士30人超取材)

自己破産を検討している人のなかには、「ローン中の車はすぐ持っていかれるのか」「通勤や通院に必要でも残せないのか」と不安に感じる人も多いでしょう。

実際には、自己破産をしても、すべての車が必ず処分されるわけではありません。重要になるのは、「ローンが残っているかどうか」「車の査定額がいくらか」です。

自己破産を経験した101人への調査でも、車を「何らかの形で手放した」人が74.3%、「自由財産の範囲内で維持できた」人が25.7%と、結果が分かれていました。実態データの詳細は自己破産で車を「手放した」が74.3%—経験者101人の実態調査で紹介しています。

この記事では、自己破産で車がどう扱われるのか、処分対象になる基準、車を残す方法、注意点などをわかりやすく解説します。

なお、自己破産そのものの条件や流れを先に確認したい場合は、自己破産とは?条件・流れ・デメリット・費用までわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

目次

自己破産すると車はどうなる?

自己破産をすると、車が必ず処分されるわけではありません。実際には、「ローンが残っているか」「車の査定額がいくらか」「名義が誰か」によって扱いが変わります。

状況車はどうなる?ポイント
ローンあり手放すことになる可能性が高いローン会社が優先的に回収できる
ローンなし・査定額が低い維持できるケースあり20万円が目安
ローンなし・査定額が高い処分対象になりやすい年式・車種による
家族名義原則残せる実態で判断される
通院・介護で必要残せるケースあり自由財産拡張の可能性

自己破産を経験した101人への調査でも、何らかの形で車を手放した方が74.3%(75人)にのぼった一方、25.7%(26人)は自由財産の範囲内で維持できています。

自己破産の手続きで車はどうなりましたか?

調査の詳細は自己破産で車を「手放した」が74.3%—経験者101人の実態調査で紹介しています。

ローン返済中の車は手放すことになる

ローン返済中の車は、自己破産をすると手放すことになるケースが一般的です。

ローン会社が車を回収できる仕組み

自動車ローンの多くは、完済するまでの間、ローン会社が車の所有権を持つ「所有権留保」という契約形態をとっています(出典:一般社団法人日本自動車購入協会)。そのため、ローン返済中は利用者の名義で登録されていても、実質的な権利はローン会社側にあります。

自己破産をしても、ローン会社はこの権利をもとに、手続きとは別に車を回収することができます。

受任通知の送付後に手続きが進む

ローン返済中の車は、弁護士・司法書士が受任通知を送付した後、手放す手続きが進むことがあります。

実際には、受任通知の送付後、数日〜数週間程度で車の返却を求められるケースもあります。

ローン会社や契約内容によって時期は異なりますが、突然車を使えなくなる可能性もあるため、手続き前に通勤・通院などの代替手段を準備しておくことが重要です。

ローンなしの車は査定額による

自己破産では、一定以上の価値がある財産は換価対象となるため、ローンを完済している車も査定額によって判断されます。

査定額20万円が一つの目安

実務上は、査定額20万円がひとつの基準になりやすく、20万円を超える場合は処分対象となるケースがあります。

ただし、この20万円は法律で定められた基準ではなく、東京地裁など一部の裁判所の運用上の目安です。裁判所によって運用は異なるため、自己判断せず弁護士・司法書士へ確認することが重要です。

自由財産の範囲については、自己破産しても残せる財産とは?自由財産の範囲をわかりやすく解説で詳しく整理しています。

年式が古い車は残せる可能性がある

年式が古い車は査定額が低くなりやすく、10年落ちの車や、5〜6年落ちでも走行距離が多い車などは、残せる可能性があります。

一方で、外車・人気車種・ハイブリッド車などは、中古市場で価値が付きやすく、年式が古くても処分対象になりやすいため注意が必要です。

家族名義・通院・介護の車はどうなる?

家族名義の車は原則として処分対象にならない

家族名義の車は、原則として本人の財産ではないため、自己破産でも処分対象にならないケースが一般的です。

ただし、名義は家族でも、実際には本人が保険料・維持費・ローンなどを負担している場合は注意が必要です。実質的に本人の財産と判断されると、処分対象として扱われる可能性があります。

また、自己破産の直前に本人名義の車を家族名義へ変更する行為も避けるべきです。財産隠しを疑われる可能性があり、手続きに悪影響を及ぼすことがあります。

通院・介護など生活上の必要性がある場合は残せるケースがある

通院や介護など、日常生活に車が必要な事情がある場合は、「自由財産の拡張」として考慮されることがあります。

ただし、必ず認められるわけではなく、車の査定額や代替手段の有無なども含めて判断されます。詳しくは弁護士・司法書士へ確認することが重要です。

自己破産で車が処分対象になる基準

自己破産では、すべての車が一律に処分されるわけではありません。「ローンの有無」「査定額がいくらか」「名義が誰か」などによって、処分対象になるかどうかが判断されます。

仕事で使っている車も処分対象になることがある

仕事で使用している車でも、自己破産では処分対象となるケースが一般的です。「仕事で使っているから残せる」とは限らず、ローンの有無や査定額などを含めて判断されます。

車を隠しても調査される可能性がある

自己破産では、車の有無や状態について裁判所や破産管財人から確認されます。車検証や自動車保険の支払い記録などから確認される場合があります。

車を故意に隠した場合、財産隠しと判断され、免責不許可事由として問題になります。不利な扱いを避けるためにも、所有している車は正確に申告することが重要です。

車を手放した場合の生活への影響

自己破産を経験した101人への調査では、車を手放した75人に生活への影響を尋ねたところ(複数回答)、以下の結果となりました。

影響割合
通勤・通学に支障が出た58.7%
活動範囲が狭まり、移動の負担が増えた53.3%
送迎できず、家族の生活にも支障が出た24.0%
外出する機会が減った・外出しなくなった17.3%
生活への影響はほぼなかった6.7%
車を手放したことで生活にどんな影響がありましたか?

「通勤・通学に支障が出た(58.7%)」が最多で、「活動範囲が狭まり移動の負担が増えた(53.3%)」も半数以上に達しています。車は生活インフラとしての側面が強く、手放すことによる影響は広範囲に及ぶ実態がうかがえます。

特に地方では車が移動手段の中心になっているケースも多く、手続き前に代替手段を確認しておくことが重要です。

調査の詳細は自己破産で車を「手放した」が74.3%—経験者101人の実態調査で紹介しています。

車に限らず、自己破産後の生活・仕事・家族への影響全体は自己破産したらどうなる?生活・仕事・家族・財産への影響をわかりやすく解説で整理しています。

車を残したい場合に検討できる方法

自己破産では、車の価値やローン状況によって処分対象になることがあります。一方で、状況によっては、車を維持できる方法を検討できる場合もあります。

任意整理なら車のローンを対象外にできる場合がある

任意整理は、裁判所を通さず、債権者ごとに返済条件を見直す方法です。

車のローンを任意整理の対象から外し、返済を継続できる場合があり、ローンをこれまで通り支払えれば、車を維持できる可能性があります。返済負担そのものは残るため、無理なく返済を続けられるか慎重な判断が必要です。

任意整理の仕組みは任意整理とは?メリット・デメリットと流れ・期間・費用の目安で確認できます。

個人再生でも車を残せるケースがある

個人再生は、借金を大幅に減額しながら、原則3〜5年で返済していく方法です。自己破産とは異なり、一定の財産を残したまま再建を目指せるため、車を維持できる場合があります。

ただし、個人再生は継続的な返済が前提となるため、安定収入が必要です。詳しくは個人再生とは?仕組み・条件・流れをわかりやすく解説をご覧ください。

自由財産の拡張が認められれば車を維持できる場合がある

自己破産では、本来は処分対象となる財産でも、「自由財産の拡張」が認められることで、例外的に手元に残せる場合があります。

通勤・通院・介護などで車が不可欠な事情がある場合、生活維持のために考慮されることがあります。認められるかどうかは個別判断となるため、弁護士・司法書士への相談が重要です。

家族など第三者がローンを完済して残せる場合がある

民法第474条では、第三者が債務者に代わって弁済できると定めています(出典:民法第474条|e-Gov法令検索)。家族など第三者が車のローンを一括返済できれば、所有権留保が外れて車の回収を回避できる場合があります。

ただし、完済した時点で車は本人名義の財産となるため、査定額が20万円を超える場合は破産管財人の処分対象になります。

第三者弁済を検討する場合は、事前に車の査定額を確認した上で弁護士・司法書士に相談することが重要です。

自己破産前に車でやってはいけないこと

自己破産前の車の扱いによっては、手続きに悪影響を及ぼすことがあります。特に、財産隠しや一部の債権者だけを優先する行為は問題視される可能性があるため注意が必要です。

車を勝手に売却する

自己破産前に、車を勝手に売却する行為には注意が必要です。相場より極端に安く売却した場合や、売却代金の使い道が不自然な場合は、財産隠しを疑われる可能性があります。

家族や知人へ名義変更する

自己破産直前に、車を家族や知人名義へ変更する行為も注意が必要です。実質的には本人の財産であるにもかかわらず、処分を避ける目的で名義変更したと判断されると、問題視される可能性があります。

車のローンだけを優先して返済する

車を残したいからといって、車のローンを優先的に返済することには注意が必要です。特定の債権者だけを優先して返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、免責不許可事由として問題になる可能性があります。

車やローンの存在を隠す

車やローンの存在を隠したまま自己破産を進めることも避けるべきです。財産や借入を故意に隠していたと判断されると、免責不許可事由に該当する可能性があります。

車について事前に相談・確認しておくことが重要

車について弁護士司法書士から事前に説明アドバイスはありましたか

今回の調査では、「事前にしっかり説明してもらえた(71.3%)」と回答した方が7割を超えました。一方で、「説明はあったが不十分だった(17.8%)」「ほとんど説明がなく手続きが進んだ(10.9%)」という方も合計28.7%おり、十分な説明を受けられていなかった方も一定数います。

車は通勤・通院・介護など、生活に直結することも多い財産です。手続き前に車がいつ・どのように扱われるかを確認しておくことで、代替手段の準備や手続きの見通しが立てやすくなります。

車を残せる可能性があるか、いつ手放すことになるか、任意整理・個人再生の方が適していないかなど、状況によって大きく変わるため、自己判断せず、事前に弁護士・司法書士へ相談することが重要です。

自己破産と車に関するよくある質問

10年落ちの車でも処分される?

10年落ちの車でも、査定額によっては処分対象になる場合があります。年式が古い車は査定額が下がりやすく、自由財産として残せるケースもあります。

一方で、人気車種・外車・ハイブリッド車などは、中古市場で価値が付きやすく、年式が古くても注意が必要です。

ローン中の車はいつ手放すことになる?

ローン返済中の車は、弁護士・司法書士が受任通知を送付した後、手続きが進むケースがあります。

実際には、数日〜数週間程度で返却を求められることもありますが、時期はローン会社や契約内容によって異なります。

自己破産前に車でやってはいけないこと

自己破産前の車の扱いによっては、手続きに悪影響を及ぼすことがあります。特に、財産隠しや一部の債権者だけを優先する行為は問題視される可能性があるため注意が必要です。

車を勝手に売却する

自己破産前に、車を勝手に売却する行為には注意が必要です。相場より極端に安く売却した場合や、売却代金の使い道が不自然な場合は、財産隠しを疑われる可能性があります。

家族や知人へ名義変更する

自己破産直前に、車を家族や知人名義へ変更する行為も注意が必要です。実質的には本人の財産であるにもかかわらず、処分を避ける目的で名義変更したと判断されると、問題視される可能性があります。

車のローンだけを優先して返済する

車を残したいからといって、車のローンを優先的に返済することには注意が必要です。

特定の債権者だけを優先して返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、免責不許可事由として問題になる可能性があります。

車やローンの存在を隠す

車やローンの存在を隠したまま自己破産を進めることも避けるべきです。財産や借入を故意に隠していたと判断されると、免責不許可事由に該当する可能性があります。

通勤に必要でも車は残せない?

通勤で車が必要な場合でも、必ず残せるとは限りません。査定額やローン状況などを含めて判断されます。

まとめ|自己破産では「ローンの有無」と「査定額」が重要

自己破産では、車そのものではなく「ローンが残っているか」「査定額がいくらか」が重要になります。

ローン返済中の車は手放すことになる可能性が高い一方、ローンなし・査定額が低い場合は維持できるケースもあります。

ただし、車を手放した場合の通勤・通院への影響は大きく、手続き前に代替手段を確認しておくことが重要です。名義変更や財産隠しは不利な扱いにつながる可能性があるため注意が必要です。

どの手続きが自分に合うか整理したい場合は、債務整理の種類と違いをわかりやすく解説もあわせてご確認ください。

自己破産の相談先を費用や実績から比較して検討したい場合は、自己破産の相談先を比較するもご活用ください。

車の扱いは、契約内容や裁判所の運用によっても異なるため、自己判断せず、弁護士や司法書士へ相談しながら進めることが重要です。

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