
郵便受けに「督促状」と書かれた封筒が入っていたとき、多くの方が気になるのは「これは放置するとまずいものなのか」という点だと思います。
先に結論をお伝えすると、督促状そのものに財産を差し押さえる効力はありません。督促状が届いた段階は、滞納の比較的早い時期です。
ただし、無視を続ければ催告書・一括請求・訴訟・差し押さえへと段階的に進みます。差出人が市区町村や税務署の場合は、督促状は法律で「差し押さえの前提」と位置づけられた文書であり、民間の督促状より重い意味を持ちます。
この記事では、督促状の読み方と意味、届くタイミング、確認すべきポイント、催告書との違い、無視した場合に差し押さえまで進む流れ、そして差し押さえ前にできる対応を、貸金業法や地方税法の規定にもとづいて解説します。
督促状とは?読み方は「とくそくじょう」

督促状とは、支払期日を過ぎても支払われていないお金について、債権者(お金を貸した側・請求する側)が支払いを求めるために送る書面です。読み方は「とくそくじょう」です。
請求書が「期日どおりの支払いを依頼する書面」であるのに対し、督促状は「期日を過ぎた支払いを求める書面」という違いがあります。
クレジットカードの引き落としができなかった、消費者金融の返済日を忘れていた、といった場合に、電話連絡のあとで郵送されてくるのが一般的な流れです。
民間の督促状に法的な強制力はない
カード会社や消費者金融から届く督促状は、あくまで「支払ってください」という通知であり、督促状だけを根拠に給与や預金を差し押さえることはできません。
差し押さえに進むには、その前に裁判所の手続き(支払督促や訴訟)を経る必要があります。
ただし「強制力がない=放置してよい」ではありません。滞納が続くと段階的に厳しい手続きへ進みます。この流れは後述します。
税金の督促状は法律上の位置づけが違う
市区町村から届く住民税・固定資産税などの督促状は、単なるお願いの文書ではありません。
地方税法では、納期限までに納付がない場合、原則として納期限後20日以内に督促状を発しなければならないと定められています(地方税法第329条ほか。特別の事情がある自治体は、条例で異なる期間を定めることができます)。
さらに、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納されないときは、市町村の徴税吏員は滞納者の財産を差し押さえなければならないと規定されています(市町村民税は地方税法第331条、固定資産税は第373条、軽自動車税(種別割)は第463条の27、国民健康保険税は第728条(条文上は「水利地益税等」に国民健康保険税が含まれます)と、税目ごとに同趣旨の規定があります)。
実際に10日で差し押さえられるケースばかりではありませんが、税金の督促状は裁判所の手続きを経ずに差し押さえへ進める文書だという点で、民間の督促状とは重みが違います。
税金を滞納している場合は、督促状の段階で必ず役所の納税担当窓口に連絡してください。分割納付の相談に応じてもらえるのが通常です。
督促状はいつ届く?滞納からの日数
民間の借金:滞納後1週間〜1か月が目安
カードローンやキャッシングの返済を滞納すると、まず電話やSMSで連絡が来ます。この時点で支払うか連絡すれば、督促状が届かないまま終わることも多いです。
電話に応じない、または連絡しても支払われない状態が続くと、早ければ滞納から1週間程度、遅くとも1か月以内には督促状が郵送されてくるのが一般的です。
税金:納期限後20日以内が原則
前述のとおり、地方税は納期限後20日以内の発送が地方税法上の原則です。
自治体によっては条例で期間を変えている場合もあり、たとえば横浜市では市税条例により、市長が特に必要と認める場合に納期限後30日以内とする定めがあります。
封筒の特徴
督促状の封筒には「重要」「親展」「至急開封してください」といった文言が印字されていることが多く、社名を伏せた封筒で届く場合もあります。
普通郵便で届くため、郵便物を確認しない習慣があると見落とすことがあります。心当たりのある郵便物は必ず開封して中身を確認してください。
届いた督促状で確認すべき5つのポイント
督促状が届いたら、次の5点を順に確認します。
- 差出人:契約しているカード会社・消費者金融か、市区町村か、聞き覚えのない業者か
- 請求内容:いつの利用分・どの契約についての請求か、元金・利息・遅延損害金の内訳
- 支払期限:いつまでの支払いを求められているか
- 支払方法と連絡先:振込先口座、問い合わせ窓口の電話番号
- 「簡易裁判所」「特別送達」の文字の有無:これらの記載がある書類は通常の督促状ではなく、裁判所の手続き(支払督促など)が始まっている可能性があります
5つ目に該当する場合は対応の緊急度がまったく異なります。支払督促は受け取りから2週間以内に異議を出さないと差し押さえ可能な状態まで進んでしまうため、督促異議申立書の書き方を確認のうえ、すぐに対応してください。
また、身に覚えのない差出人・契約についての督促状は、架空請求の可能性があります。記載された連絡先に自分から電話をかけたり、支払ったりせず、契約の有無を自分の記録で確認してください。
督促状の文例(民間の借金の場合)

実際の督促状は、おおむね次のような書式です。届いた書面と見比べる参考にしてください。
20XX年○月○日
○○○○殿 契約番号 〇〇〇〇―〇〇〇〇―〇〇〇〇
株式会社○○○○ 担当:○○○
督促状
拝啓 平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。 さて、貴殿の当社におけるキャッシングご利用にかかるご返済につき、20XX年○月以降のお支払いを確認できない状態が続いております。先般お電話にてご連絡いたしましたが通じませんので、書面にてご連絡いたしました。 つきましては、遅延している元本および利息○○○円、遅延損害金を含む合計○万○○○○円を、下記の当社指定口座宛にお支払いいただきますようお願いいたします。 なお、本状と行き違いでお支払いいただいておりました場合は、何とぞご容赦ください。
敬具
お支払い内容 20XX年○月〜○月利用分 計○万○円 利息 ○○○円 遅延損害金 ○○○○円 合計 ○万○○○○円
入金先口座 ○○銀行○○支店 普通 ○○○○○○○ カ)○○○○
このように、督促状の段階では文面が丁寧なことが多いです。ただし、滞納が続いて再送されるたびに文面は厳しくなっていきます。
督促状と催告書の違い
督促状を放置していると、次の段階として「催告書(さいこくしょ)」が届きます。両者の違いは次のとおりです。
| 項目 | 督促状 | 催告書 |
|---|---|---|
| 届く時期 | 滞納から1週間〜1か月程度 | 滞納から2〜3か月程度 |
| 郵送方法 | 普通郵便が中心 | 内容証明郵便で届くことがある |
| 請求内容 | 滞納分+利息・遅延損害金 | 残債全額の一括請求となることが多い |
| 緊急度 | 比較的低い(初期段階) | 高い(法的手続きの予告段階) |
催告書が内容証明郵便で届くのは、債権者が「請求した事実」を証拠として残し、裁判の準備に入っているサインです。催告書が届いた段階の対処法は、催告書とは?届いたときの対処法で詳しく解説しています。
督促状を無視するとどうなる?差し押さえまでの流れ
督促状の段階では選択肢が多く残っていますが、放置を続けると次の順で進みます。
1. 電話・督促状による督促が繰り返される
支払いがないかぎり、2週間〜1か月程度の間隔で督促状や電話が繰り返されます。回数を重ねるごとに文面は厳しくなっていきます。この段階はまだ任意の支払いを促すもので、法的手続きには入っていません。
2. 連帯保証人・保証人に連絡がいく
本人が支払いに応じない状態が続くと、契約上の連帯保証人にも請求が及びます。連帯保証人は本人と同等の返済義務を負うため、本人が滞納を続けるほど保証人への請求は現実味を増します。
3. 催告書で残債の一括請求を受ける
滞納が2〜3か月続くと、内容証明郵便で催告書が届きます。この時点で「期限の利益」(分割で支払える権利)を失い、残債・利息・遅延損害金の一括払いを求められます。
この金額を一度に支払えないケースが多く、次の訴訟につながります。またこのころには、信用情報機関に延滞の事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されているのが通常です。
4. 債権回収会社に債権が譲渡されることがある
催告書の前後で、債権者が債権回収会社(サービサー)に債権を譲渡することがあります。
この場合、請求元と連絡窓口が債権回収会社に変わり、督促がやや厳しくなることがあります。譲渡自体は違法ではなく、支払義務がなくなるわけでもありません。
5. 裁判を起こされる(訴状・支払督促が届く)
放置を続けると、債権者や債権回収会社が訴訟や支払督促を申し立てます。裁判所から「特別送達」で訴状や支払督促申立書が届き、これを放置すると、借金残額・利息・遅延損害金の一括払いを命じる判決や仮執行宣言が出てしまいます。
6. 財産・給料が差し押さえられる
判決などが出ても支払わない場合、強制執行により財産が差し押さえられます。預貯金口座や給料が対象です。給料については、手取り額の4分の3にあたる部分は差し押さえてはならないと定められており、差し押さえられるのは原則として4分の1までです(民事執行法第152条第1項)。
ただし、その4分の3が33万円を超える場合、つまり手取りが月44万円を超える場合は、差し押さえが禁止されるのは33万円までで、それを超える部分は全額が差し押さえの対象になります(民事執行法施行令第2条第1項第1号)。
給料や預金の差し押さえまで進むと、生活の維持そのものが難しくなります。そうなる前に、任意整理や自己破産などの債務整理で解決を図るのが現実的です。
弁護士・司法書士に依頼すれば、受任通知によって督促自体を止めることができます。制度の全体像は債務整理とはで解説しています。
税金の場合はこの流れが大きく短縮され、前述のとおり督促状の後は裁判所を経ずに差し押さえが可能です。
督促状・催告書が届いたときのパターン別対処法
差出人と郵送方法によって、取るべき対応が変わります。
| 届いた書面 | まず取るべき対応 |
|---|---|
| 普通郵便の督促状(民間) | 早めに債権者へ連絡し、支払い方法を相談する |
| 内容証明郵便の催告書 | 専門家へ相談し、債務整理を検討する |
| 裁判所からの支払督促・訴状 | 2週間以内に異議申立書を提出する/専門家へ相談 |
| 税金の督促状 | すぐに役所の納税窓口へ連絡し、分割納付を相談 |
期日までに支払える場合
記載された期限までに支払えば、それ以上の督促は止まります。滞納の初期であれば遅延損害金もわずかで、支払えば元どおり分割返済を続けられることが多いです。
支払いから入金確認まで数日かかるため、行き違いで次の書面が届くことがありますが、振込の控えを残しておけば問題ありません。
すぐに全額は払えない場合
督促状に記載された連絡先に自分から電話し、「いつまでに・いくらなら払えるか」を具体的に伝えてください。滞納の初期段階であれば、支払日の調整や分割の相談に応じてもらえるケースは少なくありません。
連絡がある債務者と、連絡が取れない債務者とでは、債権者側の対応がまったく変わります。
なお、取り立てには法律上のルールがあります。貸金業者は、正当な理由なく午後9時から午前8時までの間に電話・FAX・自宅訪問をすること、勤務先へ押しかけること、本人以外に返済を要求することなどを禁止されています(貸金業法第21条)。
深夜の電話や職場への執拗な連絡といった取り立てを受けている場合、相手が違法な業者である可能性も含めて、早めに専門家へ相談してください。
何年も放置していた借金の督促状が届いた場合
最後の返済から5年以上経過している借金は、消滅時効が完成している可能性があります(民法第166条)。ただし、時効は「援用」という手続きをして初めて効果が生じ、放置していれば自動的に消えるものではありません。
注意したいのは、督促状や催告書には時効の進行を止める効力がある点です。書面での催告により、その時点から6か月間は時効の完成が猶予されます(民法第150条)。
さらに、慌てて自分から債権者に電話をして「少しずつ払います」などと伝えると、債務を承認したことになり時効を主張できなくなります。
とくに税金の督促状は、民間の督促状と違って確定的に時効を更新させる強い効力を持つため、督促が繰り返される税金を時効で消すことは事実上できません。
古い借金の督促状が届いたときは、支払いや連絡をする前に時効の援用でやりがちな失敗例を確認してください。時効の仕組み全体は時効の援用とはで解説しています。
返済の見通しが立たない場合
収入に対して借金が多く、分割の相談をしても返済の見通しが立たない状態であれば、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理を検討する段階です。
督促状の段階で依頼すれば督促を止められるため、催告書や訴状が届く前に動くほど選択肢は広く残ります。
督促状に関するよくある質問
まとめ:督促状は「まだ間に合う」段階のサイン
督促状そのものに差し押さえの効力はなく、届いた時点では滞納の初期段階です。ただし、税金の督促状は差し押さえの前提となる文書であり、民間の借金も無視を続ければ催告書・一括請求・訴訟・差し押さえへと進みます。
支払えるなら期限内に支払う、難しいなら自分から連絡して相談する、返済の見通しが立たないなら債務整理を検討する。この3つのどれかを、督促状が届いた段階で選ぶことが、差し押さえを避ける最も確実な方法です。
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