自己破産する人の負債額はいくら?平均1,084万円・1,000万円未満が約8割|日弁連データ

自己破産する人の負債額
執筆者:大泉聡

自己破産は「数千万円・億単位の借金が原因」というイメージを持たれがちですが、日弁連の調査データを見ると実態は異なります。

本記事では、自己破産者の平均負債額や負債額帯の分布、男女差までをデータで整理し、誤解を解きほぐします。

目次

はじめに|「自己破産=数千万円・億単位」という誤解

「自己破産する人は、何千万円、あるいは億単位の借金を抱えている」このようなイメージを持っている方は少なくありません。

しかし、日本弁護士連合会が公表した最新の調査結果を見ると、実態は大きく異なります。

実際には、1,000万円未満の負債で自己破産に至る人が大多数を占めており、「借金額の大きさ」よりも家計構造の限界が破産の引き金になっていることが明らかになっています。

自己破産者の平均負債額はいくらか

日弁連「破産・個人再生事件記録調査(2023年)」によると、自己破産申立人の平均負債額は 1,084万2,551円でした。

過去の調査と比較すると、次のような推移が確認できます。

  • 2011年調査:3,000万円超
  • 2014年調査:約2,414万円
  • 2017年調査:約1,975万円
  • 2020年調査:約1,449万円
  • 2023年調査:約1,084万円

10年以上にわたり、平均負債額は大きく減少しています。これは、「借金が膨らみ続けて破産する人が増えている」というイメージとは逆の動きです。

ただ、負債総額が減っているというより、破産に至る「水準」が下がっている点が特徴です。

負債額別に見る自己破産の実態【2023年最新データ】

まずは、日弁連「破産・個人再生の実態調査(2023年)」に基づく自己破産者の負債額分布を確認します。

自己破産者の負債額分布(2023年)

負債額(万円) 23調査 20調査 17調査 14調査 11調査 08調査
100万未満 10.46% 8.39% 7.51% 6.61% 4.54% 1.97%
100〜200未満 16.38% 13.87% 14.86% 14.60% 14.99% 10.74%
200〜300未満 13.46% 14.52% 12.36% 11.53% 16.45% 16.89%
300〜400未満 10.71% 11.13% 11.39% 9.19% 9.89% 15.90%
400〜500未満 8.52% 7.42% 6.62% 6.29% 6.32% 9.10%
500〜600未満 6.33% 5.56% 6.38% 3.31% 5.02% 6.07%
600〜700未満 4.62% 4.76% 4.77% 3.55% 3.00% 3.20%
700〜1000未満 9.16% 8.71% 7.84% 6.37% 5.02% 5.49%
1000〜2000未満 9.73% 11.05% 10.58% 29.60% 25.45% 22.79%
2000〜3000未満 4.14% 5.65% 6.54%
3000〜4000未満 1.62% 2.50% 2.91%
4000〜5000未満 0.81% 1.05% 1.13%
5000〜1億未満 1.62% 1.77% 3.88% 4.27% 4.78% 3.61%
1億以上 1.87% 2.90% 2.75% 4.35% 3.89% 3.61%

出典:日弁連「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査(2023年)」

この表からまず分かること

・自己破産者の約8割が1,000万円未満
・500万円未満での破産が約半数
・特定の「極端な高額層」が中心ではない

割合が多い負債ゾーン

特に割合が高いのは、次のゾーンです。

割合が多い負債ゾーン
  • 100〜200万円未満(16.38%)
  • 200〜300万円未満(13.46%)
  • 300〜400万円未満(10.71%)
  • 100万円未満(10.46%)

負債額分布はどう変わったか(2020年→2023年)

増加率が高い負債額帯

順位 負債額帯 2020年 2023年 前年差(pt) 増加率
1 100万円未満 8.39% 10.46% +2.07 +24.7%
2 100〜200万円未満 13.87% 16.38% +2.51 +18.1%
3 400〜500万円未満 7.42% 8.52% +1.10 +14.8%

※増加率=(2023年−2020年)÷2020年

下落率が高い負債額帯

順位 負債額帯 2020年 2023年 前年差(pt) 下落率
1 1億円以上 2.90% 1.87% -1.03 -35.5%
2 3,000〜4,000万円未満 2.50% 1.62% -0.88 -35.2%
3 2,000〜3,000万円未満 5.65% 4.14% -1.51 -26.7%

ランキングから読み取れる構造変化

上記負債額帯ごとの増減をランキングで見ると、自己破産の構造変化がはっきりと表れています。

まず、増加率が最も高かったのは「100万円未満」「100〜200万円未満」といった低額帯でした。これは、生活費不足や日常支出を補うための少額借入が破産に直結するケースが増えていることを示しています。

一方で、下落率が最も大きかったのは「1億円以上」「3,000万円超」などの高額帯です。不動産投資や事業失敗といった高額債務型の破綻が減少していることが、数値から確認できます。

このランキングが示しているのは、「借金が大きく膨らんでから破産する人が減り、少額の借金でも家計が耐えられず破産に至る人が増えている」という明確な流れです。

自己破産は、金額の大小ではなく、収入・支出・返済比率のバランスが崩れた時点で起きるという実態が、改めて裏付けられたといえるでしょう。

【男女別】負債額分布から見える違い

負債額帯(万円) 男性 女性
100万未満 8.04% 13.75%
100〜200未満 13.59% 20.04%
200〜300未満 12.21% 15.32%
300〜400未満 9.99% 11.79%
400〜500未満 9.02% 7.86%
500〜600未満 7.49% 4.72%
600〜700未満 5.27% 3.73%
700〜1000未満 9.57% 8.64%
1000〜2000未満 11.93% 6.68%
2000〜3000未満 4.99% 2.95%
3000〜4000未満 1.80% 1.38%
4000〜5000未満 0.97% 0.59%
5000〜1億未満 1.80% 1.38%
1億以上 2.50% 0.98%
不明 0.83% 0.20%

※出典:日弁連「破産・個人再生事件の実態調査(2023年)」の集計表に基づく

400万円を境に逆転する男女比

2023年調査の負債額分布を男女別に見ると、はっきりした傾向が確認できます。

100万円未満、200万円未満の低額帯では、女性の比率が男性を大きく上回る一方、400万円以上の負債額帯では、男性の比率が相対的に高くなる傾向があります。

特に、100万円未満、100〜200万円未満では、女性の構成比が男性を大きく上回っており、女性はごく少額の借入でも破産に至りやすい構造が数値として表れています。

一方で、1,000万円以上の高額帯では、男性の比率が女性を上回る状況が続いています。

負債額と収入構造の関係

この男女差は、「自己破産する人の収入はいくら?平均月収・15万円未満の実態を日弁連データで解説」で解説した男女の収入差と強く連動しています。

前回の記事では、「女性は低収入層の割合が高い」「非正規など不安定就労の比率が女性で高い」という結果を確認しました。

そのため、女性の場合は少額の借入であっても返済負担が重くなりやすく、400万円未満でも破産に至るケースが多い
と考えられます。

一方で男性は、「比較的高い借入額まで返済を継続できる」「事業・不動産・多額借入を抱えた状態で破綻する」ケースが多く、高額帯に比率が集中しやすい構造が見えてきます。

「負債額が少ない=破産しない」は誤解

自己破産に至るかどうかを分けるのは、借金の金額そのものではありません

重要なのは、

  • 収入に対する返済比率
  • 毎月の固定費とのバランス
  • 債権者の数

といった、家計全体の構造です。

たとえ数百万円の負債でも、収入が不安定で返済余力がなければ、破産に至ることは十分にあり得ます。

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まとめ|自己破産は「金額」ではなく「構造」で起きる

データで見る自己破産:本当は少額の借金が引き金に?

本記事で紹介した日弁連データをもとに、自己破産の実態を1枚の図にまとめました。

・自己破産の平均負債額は約1,084万円
・1,000万円未満が約8割、100万円未満も過去最大
・高額負債より、生活費補填型の破綻が主流
・破産の本質は「借金額」ではなく「家計構造の限界」

本記事では自己破産データを中心に紹介

なお、この日弁連調査では、破産事件に加えて個人再生事件についても調査が行われていますが、本記事では自己破産に関するデータに絞って紹介しています。

個人再生に関する調査結果については、別記事で詳しく解説します。

より詳しい情報

本記事で使用している日弁連調査について

本記事で紹介したデータは、日本弁護士連合会(日弁連)が実施した全国規模の実態調査に基づいています。

この調査は、全国47都道府県・50の地方裁判所を対象に、無作為抽出された裁判確定記録をもとに分析されたもので、特定の地域や属性に偏らない形で自己破産の実像を捉えることを目的としています。

そのため、すべての破産事件を網羅した「全件調査」ではないものの、当時の自己破産の傾向や構造を把握するうえで、十分に信頼できる資料といえます。

調査の対象範囲や抽出方法、データの位置づけについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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