給料ファクタリングは違法?仕組み・リスク・利用前の確認事項を解説

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執筆:福谷 陽子(元弁護士・京大法学部卒)

「給料ファクタリング」は、まだ受け取っていない給料(賃金債権)を業者に譲渡することで、給料日前に現金を受け取れるとうたうサービスです。

「ブラックOK」「審査なし」「即日入金」などの文言で勧誘されており、給料の前借り感覚で利用する人が一定数います。

しかし最高裁判所は、給料ファクタリングを業として行うことが貸金業法上の貸金業に該当すると判断しています。貸金業登録を受けていない業者が行う給料ファクタリングは、無登録営業の違法行為であり、利用者は法外な手数料の支払い、悪質な取り立て、個人情報の流出といった具体的な不利益を受けます。

本記事では、給料ファクタリングの仕組みと違法性の根拠、利用前に確認すべき事項、すでに利用してしまった場合の対処法を整理します。

【金融庁公式の注意喚起】給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!

目次

給料ファクタリングとは|給与債権の譲渡を装った貸付

給料ファクタリングとは?違法なのか?

給料ファクタリングとは、労働者が勤務先に対して持つ給与(賃金債権)を業者に譲渡し、その代金として現金を受け取るサービスです。給料日前に現金を入手できる一方で、業者には「手数料」と称する高額な金銭を支払うことになります。

形式上は「債権譲渡」の体裁を取っていますが、実態は短期間で現金を借り、利息に相当する手数料を上乗せして返済する貸付と同じ構造です。

給料の前借りとの違い

「給料の前借り」は勤務先から労働者本人へ直接、給料が前倒しで支払われる仕組みです。労働基準法第24条の全額払いの原則により、減額されることはありません。

一方、給料ファクタリングは勤務先と無関係に業者と契約し、業者に手数料を差し引かれた金額しか受け取れません。

給料の支払日に変更はなく、後日その給料を業者へ支払う流れになります。利用者にとっては「手取りが減ったうえで、次の給料日にまとまった支出が発生する」状態になります。

一般的なファクタリングとの違い

事業者向けの売掛債権ファクタリングは、企業間取引で発生した売掛金を期日前に現金化する正規の資金調達手段です。法的には債権の売買契約として認められています。

給料ファクタリングは、このスキームを個人の給与に当てはめたものですが、賃金債権には労働基準法第24条の直接払いの原則があり、譲受人は使用者に対して直接支払いを求めることができません。

このため、業者は最終的に労働者本人を通じて回収せざるを得ず、経済的実態が貸付と同じになります。

給料ファクタリングの仕組み|2つの取引形態

給料ファクタリングには、勤務先を取引に巻き込むかどうかで2つの形態があります。

3者間ファクタリング

労働者・業者・勤務先の3者が合意して進める形態です。

労働者が勤務先に給料ファクタリングの利用を伝え、勤務先が業者に直接給料を支払う流れになります。手数料の相場は3〜5%程度ですが、勤務先の協力が必要なため実際にはほとんど利用されていません。

2者間ファクタリング

労働者と業者の2者だけで完結する形態です。勤務先には知らせず、業者から労働者の口座に手数料を差し引いた金額が振り込まれます。給料日に勤務先から給料を受け取った後、労働者が自分で業者へ全額を送金します。

実際に流通している給料ファクタリングのほとんどがこの2者間取引です。手数料の相場は10〜30%と高く、年率換算では数百%を超える水準になります。

なぜ違法なのか|最高裁判決と関連法違反の根拠

給料ファクタリングが違法とされる理由は、形式上の債権譲渡契約であっても、経済的実態が貸付であると司法・行政の双方が認定しているためです。

最高裁判決による貸金業該当性の確定

令和5年(2023年)2月20日、最高裁判所第三小法廷は、給料ファクタリングが貸金業法第2条第1項および出資法第5条第3項にいう「貸付け」に該当すると判断しました(令和4年(あ)第288号 貸金業法違反、出資法違反被告事件)。

判断の根拠は労働基準法第24条第1項にあります。賃金は使用者が直接労働者に支払わなければならないため、賃金債権を譲り受けた業者は使用者から直接回収できず、結局は労働者を通じて資金を回収するほかありません。

このため経済的実態が貸付と同じであるとされました。本件では、被告人に懲役3年・執行猶予5年・罰金900万円の一審判決が確定しています。

この最高裁決定を踏まえ、金融庁は給与ファクタリングについて「業として行うことは貸金業に該当する」との見解を明示しています。

【金融庁公式の見解】ファクタリングの利用に関する注意喚起

違反① 貸金業法(無登録営業)

貸金業を営むには都道府県または財務局の登録が必要です。

給料ファクタリング業者の多くはこの登録を行っていないため、貸金業法上の無登録営業に該当します。罰則は10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(併科あり)です。

違反② 出資法(高金利規制)

貸金業者の上限金利は出資法で年20%と定められています。

給料ファクタリングの手数料を年率換算すると、ほとんどのケースで上限を大きく超えます。年109.5%を超える場合は10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(併科あり)が科されます。

摘発事例

給料ファクタリング業者は実際に複数回にわたり摘発されています。

2020年7月には大阪府警が「SONマネジメント」関係者を貸金業法違反で逮捕(給料ファクタリングによる全国初の摘発)、2021年1月には警視庁が大手「ZERUTA」関係者を貸金業法違反・出資法違反で逮捕しています。

「現在営業しているから合法」ということにはなりません。

金融庁が注意喚起する類似スキーム

給料ファクタリングと同様の違法スキームについて、金融庁は複数の注意喚起を公表しています。

利用するとどうなるか|実際に発生する5つの不利益

給料ファクタリングを利用した場合、次の5つの不利益が現実に発生しています。

① 年率換算で数百%の手数料負担

手数料10〜30%を1か月単位で支払うことになるため、年率換算では120〜360%、悪質なケースでは数千%に達することもあります。利息制限法・出資法の上限を大きく超える水準です。

② 次の給料日に手取りがなくなる

給料ファクタリングは将来の給料を前借りする構造のため、本来の給料日に受け取れる金額が大幅に減少するか、ゼロになります。

結果として翌月以降の生活が成り立たなくなり、再び給料ファクタリングを利用する悪循環に入りやすくなります。

③ 悪質な取り立て・勤務先への連絡

支払いが滞ると、業者から執拗な督促電話、勤務先への連絡、家族への通知などが行われます。違法業者であるため、貸金業法で定められた取り立て規制は守られません。

④ 個人情報の流出・悪用

申し込み時に提出した身分証明書・勤務先情報・銀行口座情報が、別の違法業者へ流通するケースが報告されています。

一度「闇金リスト」に名前が載ると、複数の業者から勧誘を受けたり、なりすましの被害に遭ったりするリスクが高まります。

⑤ 刑事事件の関係者となる可能性

利用者が処罰されることはありませんが、業者が摘発された際には参考人として警察から事情聴取を受けるケースがあります。

すでに利用してしまった場合の対処法

給料ファクタリングを利用してしまった場合でも、契約自体が違法であるため、原則として返済義務はありません。ただし業者からの督促や脅迫、個人情報の流出といったリスクは残るため、次の手順で対処してください。

① 業者と直接やり取りせず、専門家に相談する

業者と個別に交渉するほど被害が拡大する傾向があります。電話・LINEには応じず、ヤミ金問題や違法貸付に対応している弁護士または司法書士に相談してください。多くの事務所が無料相談を受け付けています。

② やり取りの記録を保存する

LINEのトーク履歴、振込画面のスクリーンショット、業者から送られてきた契約書類などは、すべて削除せず保存しておきます。専門家が対応する際の証拠になります。

③ 勤務先への連絡があった場合の対応

業者から勤務先へ電話や郵便があった場合は、勤務先の担当者に状況を説明し、業者からの連絡には応じないよう依頼します。違法業者からの取り立てであることを明確に伝えれば、多くの場合は理解を得られます。

④ 警察への相談を並行して検討する

脅迫・嫌がらせが発生している場合は、最寄りの警察署または都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に通報できます。違法貸付として刑事事件化する可能性もあります。

なお、給料ファクタリングの利用に至るほどの状況では、他の借入も整理が必要なケースが少なくありません。根本的な解決として、次章で解説する債務整理の検討が有効です。

給料ファクタリングの代替手段

給料ファクタリングを利用せざるを得ないと感じる状況でも、合法的な選択肢が複数あります。

勤務先への給料前借り請求

労働基準法第25条により、出産・疾病・災害などの非常時には、すでに労働した分の賃金を給料日前に請求できます。手数料は発生せず、全額が支給されます。

福祉資金貸付制度の利用

低所得世帯・高齢者世帯・障害者世帯を対象に、社会福祉協議会が運営する生活福祉資金貸付制度があります。連帯保証人がいる場合は無利子、いない場合でも年1.5%と低利率です。

正規のカードローン

審査に通る場合は、貸金業登録を受けた消費者金融や銀行のカードローンを利用できます。利息制限法により金利が年15〜20%以内に保護されており、取り立ても貸金業法の規制下にあります。

借金がかさむ前に|債務整理という選択肢

給料ファクタリングに手を出さざるを得ない状況の背景には、すでに複数の借入が積み重なっているケースが少なくありません。

月々の返済が収入を圧迫している段階であれば、債務整理という法的な解決手段が有効です。

債務整理は、法律に基づいて借金を減額または免除する手続きの総称で、以下の4種類があります。

  • 任意整理:将来利息をカットし、3〜5年で分割返済する手続き
  • 個人再生:借金を最大1/5〜1/10に減額し、原則3年で返済する手続き
  • 自己破産:返済不能を裁判所に認めてもらい、借金を全額免除する手続き
  • 特定調停:簡易裁判所を介して債権者と返済条件を協議する手続き

どの手続きが適しているかは、借金総額・収入・保有資産・家族構成などによって異なります。違法な業者に頼る前に、合法的な選択肢を検討してください。

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給料ファクタリングのよくある質問

個人が利用できる給料ファクタリングはありますか?合法な業者は存在しますか?

合法な給料ファクタリング業者は存在しません。

令和5年(2023年)2月20日の最高裁第三小法廷決定により、給料ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当することが確定しています。

貸金業登録を受けて給料ファクタリングを行っている業者は事実上存在せず、現在「個人向け給料ファクタリング」として営業している業者はすべて無登録の違法業者と考えてください。

給料日前に資金が必要な場合は、勤務先への前借り請求(労働基準法第25条)、社会福祉協議会の生活福祉資金、貸金業登録のあるカードローンといった合法的な選択肢を検討してください。

給料ファクタリングを利用してしまいました。利用者が処罰されることはありますか?

利用者が貸金業法・出資法によって処罰されることはありません。これらの法律で処罰されるのは、無登録で貸金業を営んだ業者側です。

ただし業者が摘発された際に、参考人として警察から事情聴取を受けるケースはあります。

また契約自体が違法であるため、原則として返済義務はありません。業者からの督促には個別に応じず、ヤミ金問題に対応している弁護士または司法書士に相談してください。

給料ファクタリングと事業者向けファクタリングは何が違うのですか?

事業者向けファクタリングは、企業が保有する売掛債権を期日前に現金化する正規の資金調達手段で、合法です。

一方、給料ファクタリングは個人の賃金債権を対象にしますが、賃金には労働基準法第24条第1項の直接払いの原則があり、業者は使用者から直接賃金を受け取れません。

結局は労働者本人を通じて回収するほかなく、経済的実態が貸付と同じになるため貸金業に該当するというのが最高裁の判断です。

事業者向けファクタリングであっても、買戻特約がある、債務者の不払いリスクが業者に移転していないといった場合には貸金業に該当する可能性があるため、契約内容の確認が必要です。

まとめ

給料ファクタリングは、給与債権の譲渡を装った貸付であり、最高裁判決によって貸金業に該当することが確定しています。

貸金業登録を受けていない業者が行う給料ファクタリングは、貸金業法(無登録営業)と出資法(高金利)の両方に違反する違法行為です。

利用すれば年率換算で数百%の手数料、悪質な取り立て、個人情報の流出といった不利益が発生し、次の給料日には手取りがなくなる悪循環に陥ります。

手元の資金が不足している場合は、勤務先への前借り請求、福祉資金貸付制度、正規のカードローンといった合法的な選択肢があります。

すでに借入で行き詰まっているのであれば、違法な業者に頼る前に債務整理の専門家への無料相談を検討してください。

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