
債務整理は「今手元にお金がない」状態でも進められることがあります。
代表的な選択肢は①法テラスの利用(条件あり)②事務所の分割払い・後払いの2つです。
このページでは、あなたの状況がどれに当てはまるかを先に整理し、次に必要な確認ポイントと質問テンプレまでまとめます。
※この記事は一般的な情報です。状況(収入・家族構成・借入先・急ぎ度)で最適解は変わるため、最終判断は弁護士等に確認してください。
結論:お金がないときの進め方は2ルートだけ
「弁護士費用が払えない=債務整理できない」ではありません。現実的な進め方は次の2つです。
- 法テラス(民事法律扶助)が使えるなら、それが最優先
→ 無料相談や、費用の立替(分割返済・無利息など)を使えることがあります。 - 法テラスが難しい/急ぎなら、弁護士に「分割・後払い」を相談する
→ 対応は事務所ごとに異なるため、見積りと条件確認が必須です。
先に30秒セルフチェック:自分はどっち?
ルートA(法テラス)がいい人
- 手取り収入と預貯金が「基準に近い/超えていない気がする」
- 生活保護を受給している/受給に近い状況
- 多少の準備(書類や審査)に時間を使える
ルートB(弁護士の分割・後払い)を先に検討した方がいい人
- 収入や預貯金が基準を明確に超えていそう
- 督促が強く、とにかく早く方針を固めたい
- 法テラスの審査を待つ余裕がない(急ぎで動きたい)
※迷ったら「ルートAを確認 → ダメならルートBに切り替え」の順でOKです。
ルートA|まず法テラスを使えるか確認する(条件・手順)
法テラス(民事法律扶助)でできること

法テラスの支援は大きく2つに分かれます。
民事法律扶助業務とは、経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、必要な場合、弁護士・司法書士の費用等の立替え(「代理援助」、「書類作成援助」)を行う業務です。
1)無料法律相談(条件あり)
- 相談回数や時間に上限があります(制度の範囲内)
- 収入・資産などの条件を満たす必要があります
2)弁護士・司法書士費用等の立替(条件あり)
- 着手金や実費などを立替してもらい、あとで分割で返す仕組みです
- 審査があるため、書類準備が必要になります
法テラスを利用できる条件(収入・資産・返済)

法テラスの支援は、ざっくり言うと「経済的に厳しい人のための制度」なので、主に次の条件で判断されます。
法テラスの資力基準(収入・資産の目安)は、世帯人数や居住地域で異なります。また、立替の返済(償還)の月額目安が示されている場合もありますが、最終的には決定内容に従います。
1)資力基準(収入・資産)の目安(2025年3月現在)
- 生活保護を受けている、無職で収入がない
- 年金のみで生活している(年金が下記の月収表を越える場合は対象外)
- 申込者とその配偶者の賞与を含む手取月収の合計が下記の表の基準内であること
基準は「家族人数」「地域」「家賃・住宅ローン負担の有無」などで変わります。ここでは、例として「東京都特別区・大阪市など」の目安を載せます。
| 家族人数 | 収入基準(手取りの平均月収・賞与込み) | 資産基準(現金・預貯金など) |
|---|---|---|
| 1人 | 200,200円 | 180万円以下 |
| 2人 | 276,100円 | 250万円以下 |
| 3人 | 299,200円 | 270万円以下 |
| 4人 | 328,900円 | 300万円以下 |
・収入・資産は、原則「本人+配偶者」の合計で見ます(ただし、配偶者が相手方になる事件では本人分のみで見る扱いがあります)。
・地域や家賃等の事情で基準が変わるため、最終確認は法テラスの案内に従ってください。
2)「勝訴の見込みがないとはいえない」とは?
難しい言葉ですが、要は「最初から制度の利用が明らかに不相当なケースではないか」を確認するものです。自己破産の場合は免責が受けられそうな場合ということになります。
借金問題でも、状況(借入の経緯、現在の収入、債権者との関係、手続きの必要性など)によって判断されます。
3)「民事法律扶助の趣旨に適する」とは?
制度の目的(経済的に困っていて法的支援が必要な人を支える)に沿うかどうかの確認です。虚偽申告や、制度の趣旨に反する利用は認められません。
手順:法テラスで最短に進めるチェックリスト(ルートA)
STEP1:まず「無料相談」か「立替」かを決める
- まず方針だけ決めたい → 無料相談
- 依頼まで進めたい(費用が不安) → 立替制度(民事法律扶助)も視野
ここでのゴールは「自分は法テラスを使えそうか/必要書類は何か」を明確にすることです。
STEP2:相談前に準備するもの(最低限)
準備しておくと話が早いものは次の3つです。
- 収入を示す資料(給与明細、課税/非課税証明、年金通知など)
- 資産の情報(預貯金残高など)
- 住民票(世帯・続柄などが分かるもの)
- 事件関係書類(借入先一覧、督促状、契約書など)
「全部そろってから」ではなく、揃う範囲でOK。不足分は相談で指示をもらって埋めれば大丈夫です。
STEP3:立替を使う場合に知っておくべきこと(勘違い防止)
立替が決まると、原則として月5,000〜10,000円程度の分割で返済していく形になります(目安)。事件の種類によっては、裁判所に納める費用(例:予納金など)が本人負担になる場合があります。
審査・契約の流れがあるため、急ぎの場合は「ルートB」へ切替も検討します。
よくある誤解:法テラスは「弁護士を推薦してくれる」わけではない
- 法テラスが特定の弁護士を紹介・推薦することはできないとされています。
- 一方で、相談したい弁護士がいる場合は、その弁護士が法テラスと契約しているかを事前確認するよう案内されています。
つまり、“紹介を期待する場所”ではなく、“条件を満たせば相談と費用面を支援してくれる制度”と理解するのが安全です。
ルートB|法テラスが難しい/急ぎなら、弁護士に分割・後払いで依頼する
ここからは ルートB(弁護士に分割・後払いで依頼する場合) の話です。法テラスの基準に当てはまらない/審査を待てない/急ぎで動きたい人は、この先を読んでください。
そもそも「分割・後払い」は可能?
結論として、対応している事務所はあります。ただし、次の点が重要です。
- すべての事務所が対応するわけではない(方針・審査・条件がある)
- 「月額いくらでOK」だけで判断すると危険(総額・追加費用・支払開始時期が重要)
だからこそ、次のチェックリストで確認しながら進めるのが安全です。
手順:弁護士に分割・後払いで進めるチェックリスト(ルートB)
STEP1|最初の連絡で「分割/後払い希望」を明確に伝える
問い合わせ時点で、次を最初に言ってOKです。
- 「弁護士費用を一括で払えないため、分割または後払いの可否を知りたい」
- 「総額の見積りと、支払開始時期(いつから払うか)を先に確認したい」
これを言わないと、話が進んだ後で条件が合わず時間ロスになりやすいです。
STEP2|見積りは「総額」と「条件」で確認する(ここが最重要)
分割・後払いでトラブルになりやすいのは「月額」だけ見てしまうケースです。次の6項目を必ず確認してください。
- 総額(着手金+報酬+実費+追加費用の条件)
- 支払の開始時期(依頼前/依頼直後/和解後など)
- 月額と回数(家計に無理がないか)
- 途中で払えなくなった場合の扱い(一括請求の有無など)
- 連絡手段(電話が無理ならメール/チャット等)
- 方針説明(どの手続きが現実的か、理由が明確か)
「追加費用の条件」が曖昧な事務所は、ここで立ち止まった方が安全です。
STEP3|書面(メールでも可)で条件を残す
口頭だけで進めると、あとで認識違いが起きます。最低限、次の内容が残る形にしてください。
- 総額(内訳)
- 支払開始時期
- 月額・回数
- 追加費用が発生する条件
分割・後払いで相談するなら、これだけ聞けば判断できる(質問テンプレ)
① 最初に状況共有(30秒)
- 借入先:◯社(消費者金融◯、クレカ◯、銀行◯)
- 毎月返済:◯円、延滞:あり/なし、督促:あり/なし
- 収入と家計:手取り◯円、家賃(住宅ローン)◯円、扶養◯人
- 費用:一括は難しい(分割/後払い希望)
② そのまま聞く質問事項
- 私の状況だと、債務整理は4種類のうちどれが現実的ですか?(理由も知りたい)
- 分割・後払いは可能ですか?可能なら条件は?(総額/開始時期/月額/回数)
- 見積りに含まれない費用は何ですか?(追加費用の条件)
- 依頼後、督促対応はどう進みますか?(私がやること/事務所がやること)
- 途中で支払いが厳しくなった場合、どうなりますか?
やってはいけないこと(安全のため)
- 連絡を絶つ(状況が悪化しやすい)
- ネットの断定情報を鵜呑みにしない(収入・資産・督促の状況で最適な手順が変わる)
- 総額が分からないまま契約する(月額だけで判断しない)
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弁護士 安沢 尚志
ガイア総合法律事務所代表。
中央大学法学部・慶應義塾大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録。東京弁護士会所属(登録番号50049)。
東京都内の法律事務所勤務後、ガイア総合法律事務所設立。企業法務、離婚・男女問題、不動産トラブル、債務整理、労働問題、交通事故等幅広い分野で法律相談や訴訟等のご相談を解決。

