自己破産しても残せる財産とは?自由財産の範囲をわかりやすく解説

自己破産でも残せる財産
執筆者:大泉聡

自己破産をすると「財産をすべて失う」と思われがちですが、実際には生活再建のために、手元に残せる財産(自由財産)が法律上・運用上用意されています。

ここでは、自己破産でも残せる財産の範囲と、残せない(処分対象になりやすい)財産、注意点を整理します。

目次

結論:残せるのは「自由財産」。全部は失わない

自己破産をしても、生活再建のために手元に残せる財産(自由財産)があります。自己破産後も残せる財産は、大きく次の4つです。

自己破産後も残せる財産
  • 破産手続開始決定後に得た財産(新得財産)
  • 99万円以下の現金(法定自由財産)
  • 差押禁止財産(生活必需品など)
  • 裁判所が認めた「自由財産の範囲の拡張」(運用・個別判断)

一方で、不動産・高額な預貯金・価値のある車や保険などは、原則として処分(換価)の対象になりやすいです。

根拠:破産法34条(自由財産・拡張)、民事執行法131条(差押禁止動産)など。

自由財産とは(法律で「残してよい」とされる財産)

自由財産とは「破産財団に属さない財産」のことです。つまり、破産管財人が換価して配当に回す対象ではなく、原則として本人が手元に置ける財産です。

このあと、上で挙げた4つがそれぞれ何を意味するかを、順番に説明します。

残せる財産(自由財産)の内訳

破産手続開始決定後に得た財産(新得財産)

破産手続開始決定のあとに得た給与などは、原則として破産財団に入らない扱いになります(手続きの種類や個別事情で確認が必要です)。

99万円以下の現金(法定自由財産)|自己破産で現金はいくら残せる?

自己破産では、手続開始時点で保有している現金のうち、99万円以下は法定自由財産として手元に残せる扱いになります。

注意点

・「現金」と「預貯金」は扱いが異なることがあります。預貯金は金額や裁判所の運用によって、換価対象になりやすいケースがあります。
・手続き直前に現金化して現金だけを増やすような動きは、確認の対象になり得ます。財産の動かし方は自己判断で行わず、事前に専門家へ確認してください。

生活必需品は残せる(差押禁止財産)|家財はどこまで?

生活に欠くことができない衣服・寝具・家具・台所用品などは、差押禁止財産として保護されます。

実務上のイメージ

– 冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、一般的なテレビ、机・椅子、布団などは、生活必需品として処分対象になりにくいです。
– ただし、換価価値が高い高級品(高額ブランド品・美術品など)は別扱いになり得ます。

残せる代表例(差押禁止動産)

  • 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品など
  • 1か月間の生活に必要な食料・燃料
  • 礼拝・祭祀に関する物(位牌など)
  • 職業に必要な器具・用具(生活の基盤に関わる範囲)

裁判所が認めた「自由財産の範囲の拡張」(拡張自由財産)

法律上の自由財産に加えて、裁判所が生活状況などを踏まえて自由財産の範囲を広げる(拡張する)ことがあります。

ここは全国一律ではなく、裁判所の運用や事案で結論が変わります。残したい財産がある場合は、申立て前に専門家へ確認するのが安全です。

運用例としてよく挙がる目安(裁判所・事案で差があります)

  • 預貯金:合計残高が少額なら換価しない扱いになることがある(少額であれば換価しない扱いとなる運用が見られます(目安が示されることもありますが、裁判所・事案で異なります))
  • 生命保険:解約返戻金が少額なら解約を求められないことがある(少額であれば換価しない扱いとなる運用が見られます(目安が示されることもありますが、裁判所・事案で異なります))
  • 車:時価が低い場合、換価しない扱いになることがある(少額であれば換価しない扱いとなる運用が見られます(目安が示されることもありますが、裁判所・事案で異なります))

原則として処分対象になりやすい財産(残しにくいもの)

自己破産では、破産手続開始時に持っている財産が原則として清算の対象になります。残しにくい代表例は次のとおりです。

  • 不動産(持ち家・土地)
  • 高額な預貯金
  • 換価価値のある車(時価が一定以上)
  • 有価証券(株式・投資信託など)、暗号資産
  • 解約返戻金が高い生命保険(貯蓄性の高い保険など)
  • 高額な貴金属、ブランド品、美術品
  • 退職金(すでに受領済みは資産として扱われやすい。将来見込みでも一定割合を財産として扱う運用が紹介されることがあります)

「残せるか」は、基本的に時価(売却した場合の見込み)で判断されます。購入時の価格ではありません。

よくある疑問

スマホやパソコンは残せますか?

生活上必要な範囲の機器は、換価価値が低ければ処分対象にならないことが多いです。

一方で、高額で換価価値がある機器は判断が分かれる可能性があります。

機種・状態・市場価格によって扱いが変わり得るため、申立て前に価格感を含めて確認しておくと安心です。

家族名義の財産は関係ありますか?

名義が家族でも、実質的に本人の財産と判断される事情があると、確認の対象になることがあります。

トラブルを避けるためにも、財産は名義・入出金の経緯を含めて正確に申告するのが前提です。

iDeCoやNISAはどうなりますか?

iDeCoとNISAでは扱いが違います。

iDeCoは法律で「給付を受ける権利は差し押さえできない」とされており、自己破産でもiDeCoの受給権(将来受け取る権利)を取り上げて換価することは原則できません。つまり、老後資金として残る設計です(ただし税の滞納処分など例外あり)。

一方、NISAは「非課税制度」であって「保護制度」ではないため、口座内の株式・投資信託は原則として換価対象になり得ます

預貯金はいくらまで残せますか?

預貯金は「現金99万円」とは別扱いになりやすく、残せるかどうかは金額だけで決まりません。

実務では、預貯金が少額で生活に必要だと整理できる場合に、換価しない(手元に残す)扱いになることがありますが、裁判所の運用や事案(財産の内容・資料の整い方・手続の種類)で結論が変わります。

いずれにせよ、手続き直前に預貯金を動かしたり、現金化したりするのは確認対象になり得るため、残したい事情があるときは申立て前に専門家へ相談し、通帳履歴を含めて整理しておくのが安全です。

車や生命保険は残せますか?

車や生命保険は「価値(時価・解約返戻金)がどれくらいあるか」で扱いが変わります。一般に、換価価値が高い場合は処分(換価)の対象になりやすく、反対に換価価値が低い場合は、結果として手元に残ることがあります(ただし全国一律ではありません)。

目安を断定するよりも、「車の査定額(時価)」「保険の解約返戻金の金額」を先に把握し、生活や仕事に必要な事情がある場合は、その事情も含めて専門家に確認するのが確実です。

自由財産で失敗しないための注意点

  • 財産は必ず正確に申告する(通帳・保険・車・投資など)
  • 「残したい財産」があるなら、申立て前に専門家へ相談して戦略を立てる(運用差が大きいため)
  • 手続き直前の現金化や名義移転など、疑われやすい動きは自己判断でしない(免責の判断に影響する可能性があるため)

まとめ:残せる財産は「自由財産」。迷ったら早めに整理する

自己破産でも、現金99万円までや生活必需品など、最低限の生活を守るために残せる財産があります。

一方で、残せるかどうかは財産の性質・金額・裁判所運用で変わる部分も大きいので、「残したい財産」がある人ほど、早い段階で専門家に相談し、資料と説明を整えることが大切です。

自己破産の全体像(流れ・期間・注意点)は「自己破産とは?」もあわせて確認してください。

根拠(出典・条文)

本記事の「自由財産」「差押禁止財産」に関する説明は、主に以下の法令に基づきます。

出典:e-Gov法令検索
参照日:2026年3月4日

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