
「特定調停って、結局なに?自分でできる?どこの裁判所?費用はいくら?」初めて調べると、言葉が難しくて止まりがちです。
特定調停とは、簡易裁判所で債権者と返済条件を話し合い、返済を続けながら生活を立て直すための手続きです。
この記事では、特定調停を簡単に理解できるように、流れ・費用・管轄・必要書類・デメリットを整理し、任意整理との違いと17条決定までつまずきやすい点を先回りして解説します。
債務整理全体の中での位置づけを先に確認したい方は、債務整理4種類の違いを比較するも参考にしてください。
結論
特定調停とは、返済が苦しく「このままだと支払えなくなるおそれ」がある人が、簡易裁判所で債権者と返済条件を話し合い、生活(または事業)の立て直しを目指す手続きです。
手続の全体像は、まず裁判所(公式)の案内を基準に見るのが確実です。参考:裁判所特定調停の案内 また、根拠法(正式名称)は、e-Gov法令で確認できます。参考:特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律
特定調停が向いているのは、次の条件に当てはまりやすいケースです。
- 返済は続ける前提で、毎月いくらなら払えるか(返済原資)がある
- 借入先(債権者)が複数あっても、自分で書類を揃えて裁判所に出頭できる
- 利息制限法に沿った「引き直し計算」などで、債務額が調整される可能性がある
逆に、次の状態だと特定調停はまとまりにくくなります。
- 返済の見込みが立たない/すでに破綻している(返済計画が作れない)
特定調停とは?簡単に
- 申立先:簡易裁判所
- やること:債権者(貸金業者・クレジット会社等)と、今後の返済方法(分割・将来利息の扱い等)を話し合う
- ゴール:合意できれば「調停調書」に残り、合意内容に従って返済を再スタート
特定調停でできること(何が変わる?)
特定調停は「借金をゼロにする」制度ではありません。基本は返済を続ける前提です。ただし、次のような調整が行われることがあります(ケースによります)。
利息の見直し(引き直し計算)
利息制限法の上限(年15〜20%など)を前提に、借入当初からの取引をさかのぼって再計算し、残っている債務額を確定させます。
過去に高い金利で長く返済していた場合、計算し直すことで「元本が思ったより減っている/残高が小さくなる」ことがあります。
ただし、すべての借入で減るわけではなく、取引期間や金利、返済状況によって結果は変わります。まずは「どこから・いつから・いくら借りて、いくら返したか」を整理できると、この部分がスムーズになります。
将来利息の免除・軽減の交渉
特定調停は「借金をゼロにする」制度ではありませんが、調停で合意できれば、調停成立“以降”の将来利息について、免除または軽減する方向で話し合うことがあります。
ここが決まると、返済が「利息を払い続ける」形から、元本を中心に返していく形に変更になる可能性があります。
一方で、債権者の方針や借入状況によって、将来利息の扱いは変わるため、必ず免除されるとは限りません。
「毎月いくらなら無理なく払えるか(返済原資)」を先に決めておくと、現実的な条件を提示しやすくなります。
返済額・返済期間の調整
毎月の返済額を下げたり、返済期間を延ばしたりして、生活を維持しながら払える条件に寄せることを目指します。
「いまの返済額だと生活が回らない」状態でも、家計(収入・固定費・生活費)を整理したうえで、現実的に継続できる返済額に調整できる場合があります。
ただし、返済計画は“払える前提”が必要なので、返済原資が作れないケースではまとまりにくい点に注意が必要です。
調整の説得力を上げるには、家計表のように「なぜこの金額なら払えるのか」を説明できる材料があると強いです。
合意内容が「調停調書」などに残る
条件がまとまると、合意内容は調停調書に記載されます。口約束ではなく「何を、いつまでに、いくら払うか」が明文化されるため、返済の見通しが立てやすくなります。
一方で、合意した内容どおりに払えないと、強制執行につながる可能性があるため、背伸びした条件で合意しないことが重要です。
「続けられる条件」を優先して調整するのが現実的です。
特定調停の流れ(申立て〜成立まで)
裁判所や内容で前後はありますが、全体像はおおむね次の流れです。参考:特定調停の申し立てをされる方のために(最高裁判所)
0.申立て前に整理しておくこと
裁判所に行く前に、最低限ここだけ揃えると手続が進みやすくなります。
1. 簡易裁判所で受付・説明を受ける
まず、簡易裁判所の受付で特定調停の手続について説明を受けます。あわせて、申立書などの定型書式(裁判所で用意されていることが多い)を受け取ります。
この段階で「どの簡易裁判所に申し立てるか(管轄)」も確認します。債権者が複数なら、管轄が多い簡易裁判所にまとめて申し立てる案内がされています。
2. 申立て(書類提出・費用の納付)
申立書や調査表等に、借入先・現在の債務額・資産・収入・支出などを記入して提出します。裁判所は、特定調停の申立てがあったことを相手方(債権者)へ通知します。
あわせて、裁判所に納める費用(例:収入印紙、予納郵便切手)が必要になります。金額や切手内訳は裁判所で指定されることがあるため、提出先の案内に合わせるのが確実です。
3. 事情聴取(あなた側の状況確認)
裁判所から「事情聴取を行う日時」の連絡があり、指定日に出席します。
当日は、収入資料(給与明細・源泉徴収票など)、支払や借入に関する資料(契約書・返済領収書・債権者からの書面等)、筆記用具などを持参するよう案内されています。
事情聴取では、生活状況・収入・今後の返済方針などを確認し、債権者から提出された計算書(取引履歴・借金総額など)も見ながら、「どの程度の期間・毎月いくらなら返済可能か」を検討します。
4. 調停期日(債権者と条件調整)
事情聴取を踏まえて、裁判所が調停期日(調停実施の日)を指定し、債権者にも期日通知がされます。
調停期日では、債権者側が引き直し計算後の債権額を確定し、そのうえで返済方法(返済期間・毎月の返済金額・将来利息の扱いなど)について話し合い、調停委員会が双方の意見を調整していきます。
債権者が出席しない場合は、調停委員が電話で交渉する運用が案内されています。また、債権者が出席した場合でも、あなたが直接交渉する必要はなく、調停委員が間に入って進めるとされています。
5. まとまれば「調停成立」(調停調書に残る)
話し合いが合意に達すると、その内容が「調停調書」に記載され、調停が成立します。調停調書の正本や謄本は、申請により後日交付され、受け取りに行くか郵送を希望することもできます。
注意点として、調停調書は確定判決と同じ効力を持つため、調書どおりの支払いがされない場合、債権者が強制執行の申立てをできると案内されています。
つまり「決まった条件を守れるか」が非常に重要なので、無理のある金額で合意しないことが大切です。
相手方欠席などの場合:17条決定(異議がなければ確定判決と同じ効力)
相手方(債権者)が欠席する場合など、調停委員が電話で調停案を提示して合意を得るよう交渉します。
それを基に、調停委員会が解決のために適切な条項を定め、内容を「決定書」にして双方に交付する運用が案内されています。
この決定書に対して、2週間以内に異議申立てがなければ、確定判決と同一の効力を持つとされています(いわゆる「17条決定」)。
どうしても折り合わない場合:不成立で終了
どうしても合意に至らない場合、調停は不成立となり、解決に至らないまま手続は終了します。
その後に取り得る手続(他の債務整理など)は状況によって変わるため、裁判所の担当書記官や調停委員に尋ねるよう案内されています。
特定調停の管轄(どこの裁判所?)
原則は、債権者(相手方)の住所地を管轄する簡易裁判所です。借入時に取引した支店所在地がポイントになることもあるため、申立前に確認が必要です。
複数の債権者がいる場合は、管轄が多い簡易裁判所にまとめて申し立てるよう案内されています。
参考:特定調停|東京簡易裁判所
特定調停の費用(印紙・切手の目安)
費用は裁判所ごとに運用差がありますが、内訳は基本的に「収入印紙(申立手数料)」と「予納郵便切手(郵送費)」です。まずは申立先の裁判所案内を基準に確認するのが確実です。
申立手数料(収入印紙)
例として、東京簡易裁判所(個人申立て)の案内では、債権者1社につき500円分の収入印紙が必要とされています(社数分)。
また、相手方1社に対する債務額の残元本額によっては、追納が必要になる場合があるとも案内されています。
目安(東京簡易裁判所・個人):1社:500円 5社:2,500円(500円×5)
予納郵便切手(手続費用)
例として、東京簡易裁判所の案内では、債権者1社につき500円分の予納郵便切手が必要とされています(社数分)。
さらに、手続の進行後に追加提出を求められる場合があるとも案内されています。
ポイント:最終的な金額と切手内訳は裁判所ごとに指定されやすいので、申立先の簡易裁判所の案内に合わせるのが確実です。
参考:特定調停|東京簡易裁判所
必要書類(何を準備する?)
必要書類は裁判所ごとに運用差があります。まずは申立先の案内を基準にしてください。
東京簡易裁判所の案内にある「申立てに必要な書類」(大枠)
東京簡易裁判所の案内では、個人が申し立てる場合、次の書類等を作成・提出するとされています(内容により追加提出を求められる場合あり)。
- 特定調停申立書(正本・副本)
- 財産の状況を示すべき明細書その他、特定債務者であることを明らかにする資料
- 関係権利者一覧表
- 資格証明書(※法人が関係する場合は登記事項証明書等。省略できる場合もある)
「特定債務者であることを明らかにする資料」の具体例
上の「資料」は裁判所により中身の求め方が変わりますが、具体例としては次のようなものが挙げられます。
- 収入・支出がわかるもの(家計表、給与明細、通帳の写し等)
- 借入の内容がわかるもの(契約書、請求書、催告書などの写し)
- これまでの返済状況がわかるもの(領収書の写し等)
- 財産に関する資料(不動産登記、車検証などの写し)
特定調停のメリット(特徴)
裁判所(調停委員会)が間に入るので、当事者同士で直接交渉しなくていい
特定調停は、調停委員会のもとで話し合いを進め、基本的に当事者同士が直接交渉しない形で調整します。
「相手と直接やり合うのがしんどい」「言い負かされそうで不安」という人でも、話し合いの場が整った状態で条件調整を進めやすいのが特徴です。
自分で申立てでき、裁判所に納める費用が比較的少ない
裁判所は、ひな型や定型書式を使って本人でも申立て・手続を進められることを案内しています。
費用の目安も、例として「業者(債権者)1社につき500円程度」など、比較的低額で案内されている裁判所があります。
ただし、切手の内訳や合計は裁判所ごとに指定されやすいので、申立先の案内に合わせるのが確実です。
「引き直し計算」などで、債務額の整理・確定が進むことがある
案内資料では、利息制限法に沿って借入当初にさかのぼって再計算し、債務額が減ることがある(引き直し計算)と説明されています。
特に、取引期間が長い・金利が高かったなどの事情がある場合、数字の前提(残高)が整理されやすい局面があります。
ただし、すべてのケースで減額が起きるわけではなく、結果は取引状況で変わります。
合意内容が「調停調書」に残り、返済の見通しが立てやすい
合意が成立して調停調書に記載されると、その記載は確定判決と同一の効力があると案内されています。
債務者側は、調停調書どおりに弁済していれば、それ以上の取立てを受けない旨も説明されています。
「何を、いつまでに、いくら払うか」が明文化されることで、生活再建の計画を立てやすくなります。
非公開で進む(周囲に知られにくい)
裁判所の案内では、調停は当事者が気兼ねなく話し合えるよう、非公開で行う旨が説明されています。
家族・勤務先などに知られたくない事情がある場合でも、公開の法廷とは性質が違います。
ただし、必要書類の準備や出頭は必要になるため、完全に「何もせず進む」わけではありません。
特定調停のデメリット(注意点)
向き不向き・返済原資・不成立の可能性・調停調書の効力などは、裁判所の案内が基準です。
返済原資がないと難しい(返済を続ける前提)
特定調停は「今後も支払をしていくことが前提」で、手取り収入から生活費を控除して得られる返済原資が必要と説明されています。
そのため、返済の見込みが立たない・すでに破綻している状態だと、調停が困難とされています。「毎月いくらなら継続できるか」を現実の数字で出せないと、まとまりづらくなります。
必ずまとまる制度ではない(不成立で終わることがある)
特定調停は話し合いなので、双方の折り合いがつかなければ合意ができないまま終了する旨が案内されています。
民事調停の一般説明でも、合意に至らなければ「調停不成立」で終了することが示されています。「申立て=必ず成功」ではない点は最初に押さえておく方が安全です。
出頭・書類準備の負担がある(平日・複数回になりやすい)
裁判所の案内では、当事者本人が出頭するのが原則で、事情聴取期日・調整期日などを経て進む説明があります。
目安として「申立人は2回程度裁判所に出向く」「申立てからおおよそ2か月程度」などの記載がある裁判所もあります。
仕事の都合がつきにくい人にとっては、ここが負担になりやすいポイントです。
合意内容を守れないと強制執行リスクがある
調停調書に記載された内容は確定判決と同じ効力があり、調書に基づいて強制執行を行えることが説明されています。つまり「無理のある返済条件」で合意すると、後で首が回らなくなる可能性があります。
“払えるライン”を現実的に置くことが重要です。
将来利息・返済条件は「合意次第」で、期待どおりにならないこともある
将来利息について、調停成立以降は免除する方向で話し合う旨が案内されている例があります。ただし、どこまで条件が動くかは相手方の同意が前提で、案件ごとに差が出ます。
「この条件になるはず」と決め打ちせず、複数の選択肢を並行して検討しておくのが安全です。
信用情報(いわゆるブラックリスト)に関する誤解に注意
CICのFAQでは、特定調停を申請した事実そのものが「コメントとして登録される」ことはないと明記されています。
一方で、信用情報に登録されるのは支払状況などの客観的事実であり、延滞などがある場合は別の形で影響が出る可能性があります。
そのため「特定調停=必ずブラック」という単純化ではなく、現状(延滞の有無)も含めて整理するのが現実的です。
参考:裁判所へ特定調停や民事再生を申請した場合、および弁護士・司法書士に債務整理を依頼した場合、自分の信用情報にその事実がコメントとして登録されますか?|CIC
特定調停と任意整理の違い
どちらも「返済条件を調整する」点は似ていますが、決定的に違うのは裁判所を使うかどうかです。
- 特定調停:裁判所を利用して行う手続
- 任意整理:裁判所を利用しない手続
実務の負担感としては、特定調停は「書類準備+期日出頭」が発生しやすく、任意整理は(専門家に依頼する場合)その負担を専門家にお願いする、という違いが出ます(ケースによります)。
特定調停 17条決定とは
話し合いがまとまらない/債権者が出席しない場合などに、裁判所が調停条項を定めて決定書を交付する運用が案内されています。
決定書に対して2週間以内に異議申立てがなければ、確定判決と同一の効力になる旨が説明されています。
・17条決定=「調停に代わる決定」
・異議申立て期限=2週間
・異議がなければ=判決と同じ効力
特定調停はどれくらい使われている?
特定調停の件数は、長期的には大きく減少しています。
裁判所データブック(統計)では、特定調停事件(内数)の新受件数は令和6年:1,779件(既済1,708件、未済508件)
などが掲載されています。
平成15年(新受53.7万件)をピークに、直近の令和6年は新受1,779件まで減っています(ピーク比0.33%)。
| 年次 | 新受 |
|---|---|
| 平成15年 | 537,071 |
| 平成20年 | 102,688 |
| 平成25年 | 3,849 |
| 平成30年 | 3,363 |
| 令和5年 | 2,031 |
| 令和6年 | 1,779 |
出典:裁判所データブック
よくある質問(検索意図の回収)
特定調停以外の選択肢も含めて整理したい方は、債務整理の全体像(最初の一歩)から確認できます。

