
債務整理を考えるときに多い不安が、「銀行口座が凍結されて生活が止まらないか」という点です。
結論から言うと、口座凍結が起きる可能性があるのは、債務整理の対象に含まれる借入先の銀行の口座だけです。借入のない銀行の口座まで一律に凍結されることは通常なく、事前の準備で生活への影響は大きく減らせます。
実際に、自己破産を経験した100人への調査でも、34.0%は「口座は凍結されなかった」と回答しており、凍結された場合も期間を回答した人の約6割が3か月以内に解除されていました。
この記事では、口座凍結が起きる仕組みと理由、任意整理・個人再生・自己破産それぞれの凍結リスク、いつまで続くかの目安、給与口座や引落口座を守る対処法を解説します。
口座凍結が起きるのは「借入先に含まれる銀行」の口座だけ
まず全体像を表で確認しましょう。凍結リスクを分けるのは、手続きの種類よりも「その銀行からの借入が債務整理の対象に入るかどうか」です。
| 口座の状況 | 凍結リスク | 理由 |
|---|---|---|
| 借入のある銀行の口座(カードローン等を整理対象にする) | 高い | 銀行が預金と借金を相殺するため |
| 借入のある銀行の口座(同一銀行の別支店) | 高い | 凍結は支店単位ではなく銀行単位で行われるため |
| 借入のない銀行の口座 | 通常なし | 相殺の対象となる借金が存在しないため |
| 消費者金融・クレジットカードのみを整理する場合の銀行口座 | 通常なし | 銀行が債権者に含まれないため |
口座が凍結されると、預金の引き出し・振込・口座振替が一時的にできなくなり、銀行によっては預金が借入の返済に充当(相殺)されます。
「口座凍結」と「差押え」は別物
このページでいう口座凍結は、銀行が内部手続きとして一時的に入出金や引き落としを止める状態を指します。
一方、預金の差押えは、債権者が訴訟や支払督促などの裁判手続きを経て行う法的な措置で、まったく別のルートで起きるものです。債務整理の手続きを進めたことをきっかけに起きるのは前者の口座凍結であり、「凍結=差押え」ではありません。
督促を放置した場合に差押えへ至る流れは督促状を無視するとどうなる?で解説しています。
なぜ凍結される?銀行が預金と借金を相殺するため
銀行口座が凍結される主な理由は、銀行が預金と借金を相殺するためです。
破産手続きでは、銀行が預金(利用者に返すお金)と貸付金(回収するお金)を相殺できることが法律で定められています(破産法67条1項・e-Gov法令検索で条文全文を確認できます)。
また、各銀行のローン規定にも相殺条項が置かれています。たとえば三菱UFJ銀行のカードローン「バンクイック」のローン規定には、債務の期限のいかんにかかわらず相殺できる旨が定められています(第14条・第15条/参照確認:2026年3月5日)。
凍結が始まるタイミングは、裁判所の決定時ではなく、弁護士や司法書士からの受任通知が銀行に届いたときが一般的です。つまり、専門家に依頼した直後から凍結が起きる可能性があるため、口座の準備は依頼前に済ませておく必要があります。
なお、受任通知が届いた後に口座へ入金されたお金(給与など)は、法律上、借金との相殺が禁止されています(破産法71条1項3号)。凍結中は引き出せないものの、入金分が返済に充てられて消えるわけではありません。
手続き別の凍結リスク|任意整理は「対象から外す」ことで避けられる
凍結リスクの判断基準はどの手続きでも同じで、「その銀行が債権者に含まれるかどうか」です。ただし、手続きによって銀行を対象から外せるかどうかが異なります。
任意整理|整理する借入先を選べるため、口座凍結を避けやすい
任意整理は、交渉する借入先を自分で選べる手続きです。そのため、口座のある銀行のカードローンを対象から外し、消費者金融やクレジットカードだけを整理すれば、口座凍結自体を避けられます。
逆に、銀行カードローンを任意整理の対象に含めると、受任通知が届いた時点でその銀行の口座は凍結される可能性があります。給与振込や公共料金の引き落としに使っている銀行に借入がある場合は、対象に含めるかどうかを依頼前に専門家とよく相談することが重要です。
任意整理の仕組みと費用は任意整理とは?メリット・デメリットと流れ・期間・費用の目安で解説しています。
個人再生・自己破産|すべての借入が対象になるため、銀行借入があれば凍結は避けられない
個人再生と自己破産は、法律上すべての債権者を平等に扱う手続きです。任意整理のように特定の借入先だけを外すことはできないため、銀行からの借入がある場合、その銀行の口座凍結は原則として避けられません。
だからこそ、これらの手続きでは、給与口座や引落口座を借入のない銀行へ事前に移しておく準備がより重要になります。
自己破産で銀行口座がどうなるかは、経験者100人の調査データとあわせて自己破産したら銀行口座はどうなる?凍結期間・新規開設・事前対策を解説で詳しく解説しています。個人再生の仕組みは個人再生とはをご覧ください。
口座凍結はいつまで続く?解除の目安は1〜3か月
口座凍結は、銀行の借金を保証会社が代わりに支払う処理(代位弁済)が終わると解除されるのが一般的です。「凍結=口座が永久に使えなくなる」わけではありません。
実務上の目安は1〜3か月程度です。実際に、自己破産経験者100人への調査でも、凍結期間は「2〜3か月」が最多で、期間を回答した人の約6割(61人中36人・59.0%)が3か月以内に解除されていました。
一方で「6か月以上」続いたケースも9.0%あり、期間には幅があります。調査結果の詳細は自己破産で銀行口座「凍結された」は54%—経験者100人の実態調査で紹介しています。
ただし、凍結が解除された後も、その銀行との新規取引は断られる場合があります。凍結対象になった口座は、生活のメイン口座として使い続けない前提で考えておくと安心です。
生活を止めないための事前対策
凍結対策で最も重要なのは、受任通知が銀行に届く前、つまり専門家への依頼前に生活口座を避難させておくことです。
給与振込口座を借入のない銀行に変更する
給与振込口座が借入先の銀行になっている場合は、借入のない銀行の口座への変更を最優先で進めましょう。
勤務先には「口座を変更したい」と伝えるだけでよく、理由まで説明する必要はありません。勤務先によっては反映まで1〜2か月かかるため、早めの手続きが重要です。
自己破産経験者への調査でも、給与口座を変更した人の大半は「弁護士に依頼してすぐ」または「申立前」に対応しており、変更が遅れてトラブルになった人は2.0%にとどまっていました。
公共料金などの引落口座・支払方法を変更する
電気・ガス・水道、家賃、スマートフォンの通信費など、凍結対象になりうる口座からの引き落としは、借入のない銀行の口座へ変更するか、振込・コンビニ払いへ切り替えましょう。口座振替が止まると滞納扱いになり、生活への影響が広がります。
なお、クレジットカードや借入の返済引き落としについては扱いが変わるため、自分で止めたり変更したりせず、依頼する専門家の指示に従ってください。
特定の借入先にだけ返済を続けると、偏頗弁済(へんぱべんさい)として個人再生や自己破産の手続きで問題になることがあります。
当面の生活費を確保しておく
凍結期間中は預金を引き出せなくなるため、当面の生活費の確保も必要です。
ただし、自己破産や個人再生を検討している場合、預金の引き出しや資金移動はやり方によって裁判所への説明が必要になることがあります。自己判断で動かさず、必ず事前に専門家へ段取りを確認してください。
債務整理と口座凍結に関するよくある質問(FAQ)
債務整理中でも銀行口座は作れますか?
預金口座の開設自体は、原則として可能です。口座開設はローンの審査とは異なり、信用情報が理由で断られることは通常ありません。
ただし、債務整理の対象にした銀行(凍結された銀行)では、その後の新規取引を断られる場合があります。新しい口座は、借入のなかった銀行で開設するのが確実です。
口座凍結はいつから始まりますか?
受任通知が銀行に届いたタイミングで始まるのが一般的です。
弁護士や司法書士に依頼すると、受任通知は数日以内に各債権者へ発送されるため、「依頼したらすぐ凍結が始まる可能性がある」と考えて、口座の避難は依頼前に済ませておきましょう。
銀行に借入があったのに凍結されなかったケースもありますか?
あります。実際の調査でも、自己破産経験者の34.0%は「凍結されなかった」と回答しています。
借入先が消費者金融やクレジットカード中心で銀行が債権者に含まれなかったケースのほか、口座の残高や銀行側の判断によって影響を感じなかったケースも考えられます。
凍結された口座に振り込まれた給与はどうなりますか?
受任通知が届いた後に入金されたお金は、法律上、借金との相殺が禁止されています(破産法71条1項3号)。
返済に充てられて消えることはありませんが、凍結中は引き出せないため、給与の受け取りには実質的な支障が出ます。だからこそ、給与振込口座の変更を最優先で進める必要があります。
まとめ|凍結されるのは借入のある銀行だけ。依頼前の口座避難がすべて
債務整理で口座凍結が起きるのは、手続きの対象に含まれる借入先の銀行の口座だけです。借入のない銀行の口座はこれまで通り使えます。
任意整理なら、銀行を対象から外すことで凍結自体を避けられます。個人再生・自己破産では銀行借入があれば凍結は避けられないため、給与口座・引落口座を借入のない銀行へ移し、生活費を確保しておく事前準備が重要です。凍結された場合も、解除までの目安は1〜3か月で、多くは一時的なものにとどまります。
どの手続きが自分に合うかは債務整理の種類と違いで整理しています。口座凍結への備えも含めて相談先を探したい場合は、債務整理の相談先を比較するもご活用ください。
口座凍結のタイミングや対策は、借入先の構成や口座の使い方によって変わります。依頼前の資金移動には注意点もあるため、自己判断で進めず、弁護士や司法書士へ相談しながら準備することが重要です。
