免責不許可事由とは?自己破産で該当する11の行為と裁量免責・不許可の確率

免責不許可事由とは
執筆:福谷 陽子(元弁護士・京大法学部卒)

自己破産は、裁判所の「免責許可決定」が確定してはじめて借金の支払義務がなくなる手続です。その免責を認めないことがある事情を、破産法252条1項が11の行為として定めています。これが免責不許可事由です。

ただし、免責不許可事由に当たれば必ず免責されないわけではありません。同条2項には、裁判所が事情を考慮して免責を許可できるという定め(裁量免責)があります。

日本弁護士連合会が全国50地裁の記録を調べた2023年の調査では、破産1,233件のうち免責不許可となったのは1件(0.08%)でした。

この記事では、11の行為の中身を条文に沿って整理したうえで、実務でとくに問題になる行為、裁量免責の仕組み、免責不許可率の実際の数字とその読み方、申立ての前後に避けるべき行動、免責不許可決定が出たときの対処までをまとめます。

目次

免責不許可事由とは何か

免責不許可事由とは?

免責不許可事由とは、破産法252条1項が列挙する、免責を認めないことがある事情のことです。条文はこう定めています。

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

出典:破産法252条1項(e-Gov法令検索)

裁判所の破産手続説明書も、破産手続と免責手続を別のものとして説明しています。破産手続が終わっただけでは支払義務は残り、免責許可決定が確定してはじめて支払義務がなくなります。

出典:破産手続説明書(鹿児島地方裁判所)

ここで押さえておきたいのは、免責不許可事由があること自体は、自己破産の申立てを妨げないという点です。

免責不許可事由があると、破産管財人が選任されて調査が行われたり、免責の判断が慎重になったりしますが、申立てそのものができなくなるわけではありません。手続全体の流れは自己破産とは?借金がゼロになる仕組み・デメリット・流れで確認できます。

免責不許可事由の11の行為(破産法252条1項1号〜11号)

破産法252条1項は、免責不許可事由を1号から11号まで列挙しています。条文の内容と、実際に問題になる場面を対応させると次のとおりです。

号条文が定める行為実際に問題になる場面
1号債権者を害する目的での財産の隠匿・損壊、債権者に不利益な処分など、破産財団の価値を不当に減少させる行為預貯金を家族名義に移す、高価な品物を親族に贈与する
2号破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、または信用取引で買った商品を著しく不利益な条件で処分すること高金利の借入れで穴埋めする、買ったばかりの商品を安値で転売する
3号特定の債権者に特別の利益を与える目的などで、義務のない担保供与や弁済をすること(偏頗弁済)親や知人からの借入れだけ先に返す、保証人の付いた債務だけ返す
4号浪費または賭博その他の射幸行為により、著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担すること競馬・パチンコ、FX、暗号資産の証拠金取引、収入に見合わない買い物
5号申立ての1年前の日から開始決定までの間に、支払不能であることを知りながら、そうでないと信じさせるため詐術を用いて信用取引で財産を取得すること返済できない状態で借入れやカード利用を続ける
6号業務および財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅・偽造・変造すること事業の売上帳や通帳を捨てる、内容を書き換える
7号虚偽の債権者名簿を提出すること一部の借入先をわざと記載しない
8号破産手続で裁判所が行う調査において、説明を拒み、または虚偽の説明をすること裁判官から直接事情を聞かれる場面で質問に答えない、事実と違う説明をする
9号不正の手段により、破産管財人・保全管理人などの職務を妨害すること管財人の調査に応じない、資料を渡さない
10号過去に自己破産で免責を受けている、または個人再生の一部の手続を終えていて、その日から7年以内に免責許可の申立てをすること2回目の自己破産、個人再生の後の自己破産
11号説明義務(40条1項1号)、重要財産開示義務(41条)など、破産法が定める破産者の義務に違反すること財産目録に重要な財産を書かない、連絡を放置する

裁判所の説明書でも、財産隠し、浪費やギャンブル、クレジットカードで買った商品の換金、返済できない状態での借入れ、7年以内の免責、破産者の義務違反、虚偽の債権者名簿や財産状況についての虚偽説明が、免責が許可されない場合として挙げられています。

実務で問題になる5つのケース

11の行為のうち、個人の自己破産で実際に検討されるのは限られています。

浪費・賭博その他の射幸行為(4号)

競馬やパチンコ、FX、暗号資産の証拠金取引などが4号に当たります。日弁連の2023年調査では、破産に至った原因のうちギャンブルが9.89%、浪費・遊興費が12.81%、投資が3.33%を占め、いずれも1997年の調査以降で最も高い値になりました。

条文が問題にしているのは、賭博や浪費をしたこと自体ではありません。「著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」という結果まで求められています。金額、時期、収入との釣り合い、現在も続いているかどうかが判断の材料になります。

偏頗弁済(3号)

一部の債権者にだけ返済する行為です。裁判所の説明書は、一部の債権者にのみ支払をすると支払を受けない債権者を害することになり、免責が許可されない場合があると明記しています。

親や知人への返済、保証人に迷惑をかけたくないという理由での返済は、本人に悪意がなくても3号の検討対象になります。弁護士や司法書士に依頼した後は、自己判断で支払わないことが大切です。

詐術による信用取引(5号)

支払不能であることを知りながら、そうでないと装って借入れやカード利用をする行為です。条文は対象期間を「申立てがあった日の1年前の日から開始決定があった日まで」と区切っています。

裁判所の説明書は、申立て後に新たに借金をしたりクレジットカードや月賦で商品を購入したりすることについて、詐欺罪に当たる可能性があり、免責が許可されない可能性も生じると説明しています。

財産の隠匿・不当な減少(1号)

預貯金口座を申告しない、不動産や自動車の名義を家族に移す、高価な品物を処分して価値を下げるといった行為です。

破産管財人には調査の権限があり、通帳の入出金や名義変更の履歴は追跡されます。何が手元に残せるのかは自己破産で残せる財産・取られる財産で確認してください。

7年以内の免責(10号)

前回の自己破産で免責許可決定が確定した日から7年以内の申立ては、10号に当たります。

過去の自己破産だけが対象ではありません。個人再生のうち、給与所得者等再生(債権者の同意を得ずに進められる手続)で再生計画どおりに返済を終えた場合と、返済の途中で病気や失職などにより返済が続けられなくなり、残りの返済を免除してもらった場合(ハードシップ免責)も、それぞれの決定が確定した日から7年間が対象になります。

免責不許可事由があっても免責されることがある

破産法252条2項は、1項各号に該当する場合でも、裁判所が「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるとき」は免責許可の決定ができると定めています。これが裁量免責です。

判断の材料になるのは、行為の程度と時期、金額、生活再建の見込み、破産管財人や裁判所への協力の姿勢などです。同じ「ギャンブルが原因」でも、数年前に止めて家計を立て直している人と、申立ての直前まで続けている人とでは扱いが変わります。

裁量免責があるため、実務では「免責不許可事由があるかどうか」よりも「その事情のもとで免責を認めるのが相当と評価されるか」が中心の検討事項になります。

免責不許可になる確率は1,233件中1件

日弁連の消費者問題対策委員会は、全国47都道府県50地裁の破産記録を無作為抽出して調べる記録調査を、1992年から11回にわたり実施しています。2023年調査は2022年6月から11月に申立てのあった破産記録が対象で、有効データは1,233件でした。

免責申立ての結果は次のとおりです。

免責申立ての結果2023年調査2020年調査2017年調査2014年調査2011年調査
許可96.84%96.85%96.77%96.44%96.67%
不許可0.08%0.00%0.57%0.00%0.08%
申立却下・棄却0.16%0.16%0.08%0.24%0.24%
取下げ1.22%1.37%2.34%2.75%2.11%
死亡終了0.41%0.32%0.08%0.32%0.24%
不明(記入漏れ含む)1.30%1.29%0.16%0.24%0.65%

出典:日本弁護士連合会「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」(PDF)

同調査は、2000年調査以降「免責不許可」が1%未満で推移していると記しています。2023年調査で不許可となったのは1,233件中1件でした。

「不許可0.08%」を過大に受け取らないための3点

この数字は、誰が申し立てても97%近い確率で免責されるという意味ではありません。理由は3つあります。

第1に、調査対象は裁判所への申立てまで進んだ事件です。免責の見込みが乏しいケースは、申立てに至る前に別の手続へ振り替えられています。

第2に、取下げが1.22%あります。手続の途中で見込みが立たなくなった事件がここに含まれます。

第3に、日弁連自身が同じ調査のなかで、破産と個人再生の負債原因を比べています。ギャンブルは破産9.89%に対して個人再生20.05%、浪費・遊興費は破産12.81%に対して個人再生23.29%と、いずれも個人再生のほうが約2倍の割合です。

同調査はこれについて、破産における免責不許可のリスクを避けるために個人再生手続を利用する傾向がうかがえると分析しています。

つまり、免責不許可率の低さは、申立ての前段階で手続の振り分けが行われた結果でもあります。ギャンブルや浪費の割合が大きい人は、自己破産だけでなく個人再生も選択肢に入れて比べてください。制度ごとの向き不向きは債務整理の種類と違いにまとめています。

免責不許可事由があると手続はどう変わるか

免責不許可事由が疑われる場合、裁判所は破産管財人を選任して事情を調べさせることがあります。日弁連の2023年調査では、破産管財人が選任された事件は30.66%、選任されなかった事件は67.72%でした。

終結内容の内訳は同時廃止66.91%、異時廃止26.85%、配当終結3.33%です。

破産管財人が選任されると、財産の調査と換価に加えて、免責不許可事由の有無についての調査が行われます。

破産者は管財人の面談に応じ、通帳や明細などの資料を提出します。管財人の権限と面談の実際については破産管財人とは?どこまで調べる?で解説しています。経験者100人への調査では、管財人との面談を「思ったより話しやすかった」と答えた人が64%でした(破産管財人との面談に関する実態調査)。

管財事件になると、破産管財人の報酬などに充てる予納金が必要になります。金額は裁判所や事件の内容によって異なります。

また、破産手続開始決定の後には、裁判所が期間を定めて債権者に免責についての意見を求めます(免責意見申述期間)。必要があると判断されれば、破産者に直接事情を尋ねる免責審尋の期日が指定されます。日弁連の2023年調査では、免責意見が申述された事件は2.27%でした。

期間の目安として、同調査による同時廃止事件の平均日数は、申立てから開始決定まで29.4日、開始決定から免責決定まで66.9日、合わせて96.3日です。管財事件はこれより長くなります。

申立ての前後にやってはいけないこと

免責不許可事由の多くは、申立ての前後の行動によって生じます。裁判所の説明書の記載を踏まえると、避けるべき行動は次のとおりです。

  • 新たな借入れやクレジットカード・月賦での購入をする
  • 一部の債権者にだけ返済する
  • 財産の名義を家族に変える、贈与する、安値で処分する
  • 通帳、利用明細、契約書などの資料を捨てる
  • 裁判所、破産管財人、依頼した弁護士・司法書士からの連絡や指示を放置する

すでに該当する行為をしてしまった場合でも、隠さずに申告することが裁量免責の判断では重要です。裁判所は債権者からも事情を聴くため、申立書や審尋での虚偽は明らかになります。虚偽の説明は8号の免責不許可事由にもなり、事態を重くします。

自己破産が生活や仕事、家族にどう影響するかは自己破産したらどうなる?にまとめています。

免責不許可決定が出たときの対処

不服申立て(即時抗告)は1週間以内

免責不許可決定が出た場合、破産者は不服を申し立てることができます。裁判所の説明書は、不服申立ては免責不許可決定の正本が届いてから1週間以内にしなければならないと案内しています。期間が短いため、決定書を受け取ったらすぐに代理人へ連絡してください。

なお、免責許可決定のほうは、官報に掲載されてから2週間以内に債権者から不服申立てがなければ確定します。

個人再生に切り替える

個人再生は、免責不許可事由の定めが適用されない手続です。継続的な収入があり、再生計画に沿った返済ができる見込みがあれば、借金を大幅に減額したうえで分割返済していく方法を選べます。

住宅ローンがある場合は、住宅資金特別条項によって自宅を残せる可能性もあります。詳しくは個人再生とは?仕組み・条件・流れをご覧ください。

任意整理に切り替える

任意整理は裁判所を通さず、債権者と直接交渉して将来利息のカットや返済計画の組み直しを目指す方法です。裁判所の手続ではないため、免責不許可事由の制限はありません。

対象とする債権者を選べる一方、元本は原則として減りません。任意整理とは?メリット・デメリットと流れで条件を確認できます。

免責が認められても残る債務がある

免責許可決定が確定しても、破産法253条1項ただし書が定める債務は残ります。

税金や罰金、悪意の不法行為や故意・重過失で人の生命身体を害した不法行為による損害賠償、養育者・扶養義務者として負担すべき費用、雇っていた人の給料や預り金、知りながら債権者名簿に記載しなかった債権者への支払義務などです。

慰謝料や養育費の扱いは自己破産後の慰謝料・養育費で解説しています。

免責不許可事由に関するよくある質問

免責不許可事由の具体例は何ですか。

財産の隠匿や名義変更、一部の債権者だけへの返済(偏頗弁済)、賭博や浪費による財産の減少、返済できない状態を隠しての借入れ、虚偽の債権者名簿の提出、裁判所や破産管財人の調査での説明拒否、過去7年以内の免責などです。

破産法252条1項が1号から11号まで定めています。

免責不許可になる確率はどれくらいですか。

日弁連の2023年破産事件及び個人再生事件記録調査では、破産1,233件のうち免責不許可は1件(0.08%)でした。2000年調査以降、免責不許可は1%未満で推移しています。

ただしこの数字は申立てまで進んだ事件を対象としたものです。

免責不許可事由があると自己破産できないのですか。

申立て自体ができなくなるわけではありません。破産法252条2項の裁量免責により、事情を考慮して免責が認められることがあります。一方で、破産管財人による調査が行われ、管財事件として扱われる場合があります。

免責不許可事由が悪質と評価されるのはどのようなケースですか。

条文上の区分ではありませんが、裁量免責の判断では「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情」が考慮されます。

財産を隠す、虚偽の説明を重ねる、裁判所や破産管財人の調査に協力しないといった行動は、免責を認めるのが相当かどうかの判断で不利に働きます。

免責不許可になるとどうなりますか。

借金の支払義務は残ります。免責不許可決定に対しては、決定正本が届いてから1週間以内に不服を申し立てることができます。並行して、個人再生や任意整理への切り替えも選択肢になります。

ギャンブルが原因でも自己破産できますか。

賭博その他の射幸行為は破産法252条1項4号の免責不許可事由に当たりますが、裁量免責の対象になります。

金額、時期、現在も続いているか、生活の立て直しの状況などが考慮されます。

日弁連の2023年調査では、破産に至った原因としてギャンブルを挙げた人は9.89%でした。

2回目の自己破産はできますか。

前回の免責許可決定が確定した日から7年を過ぎていれば、10号の免責不許可事由には当たりません。

7年以内であっても申立て自体は可能ですが、裁量免責で認められるかどうかの判断になります。

免責不許可事由があるかどうかは自分で判断できますか。

条文の文言だけで判断するのは難しく、金額や時期、家計の状況によって評価が変わります。家計の記録や通帳を持参して、弁護士または司法書士に事実をそのまま伝えたうえで見通しを確認してください。

まとめ

項目内容
根拠となる条文破産法252条1項(免責不許可事由)、同条2項(裁量免責)
対象となる行為11の行為(1号〜11号)
実務で問題になるケース財産の隠匿(1号)、偏頗弁済(3号)、浪費・賭博(4号)、詐術による信用取引(5号)、7年以内の免責(10号)
免責不許可の割合1,233件中1件・0.08%(日弁連2023年調査)
免責不許可率の読み方申立てまで進んだ事件が対象。見込みの乏しいケースは事前に個人再生などへ振り替えられている
責不許可事由があった場合破産管財人が選任されて調査が行われることがある(管財人選任は30.66%)
不許可になった場合決定正本の到達から1週間以内に不服申立て。個人再生・任意整理への切り替えも選択肢

免責不許可事由があること自体は、自己破産を諦める理由にはなりません。実際に不許可となる件数はごくわずかで、裁量免責によって免責が認められている事件が大半を占めています。

一方で、その数字は、申立ての前に適切な手続が選ばれ、申立ての前後で余計な行動が避けられた結果でもあります。事実を隠さず伝えること、一部の債権者だけに返済しないこと、資料を残しておくこと。この3つが免責の見通しを左右します。

自分の事情が免責不許可事由に当たるのか、裁量免責の見込みがあるのかは、家計と借入れの実態を見ないと判断できません。相談先を選ぶ際の確認点は債務整理の弁護士・司法書士の選び方にまとめています。

事務所ごとの費用や対応範囲を比べたい方は、債務整理の相談先事務所の比較ページもあわせてご覧ください。

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